第94話 夜だけ変わる魔力
地方都市へ戻った夜。
レオンたちは学院が管理する観測所の点検を行っていた。
昼間の魔力測定では、すべて規定範囲内だった。
観測所には、屋外の魔力を一定時間ごとに記録する大型の測定器が設置されている。
ノアが過去1か月分の記録を確認し、ミナが装置周辺の魔力を見る。
「壊れてはいないと思う」
ノアが言う。
「数字も安定してる」
日が沈んでしばらくした頃、ユリアが携帯用の灯りへ魔力を流した。
小さな火が揺れる。
その瞬間だった。
「待って」
ミナが顔を上げる。
「何?」
「周りの魔力が薄くなった」
レオンも感覚を集中する。
自分には、はっきりとは分からない。
ユリアが火を消した。
「今は?」
「戻った」
もう一度、火属性魔法を使う。
今度は炎が普段より小さかった。
「魔力量は変えてないわ」
ユリアが眉を寄せる。
ノアが測定器を見る。
「数値は変わってないよ」
ミナには変化が見える。
測定器には出ない。
北東森林と同じだった。
「時間を記録する」
レオンは用紙を開いた。
数分後。
今度はノアが小さな水球を作った。
水球は問題なく形成されたが、途中で表面が大きく揺れた。
「制御がずれた?」
「違う。いつもと同じにした」
もう一度試す。
今度は正常だった。
変化は一定ではない。
担任は追加の魔法使用を止めた。
「原因不明の環境で、何度も魔法を使うな。記録だけ取れ」
その後、約20分間は何も起きなかった。
レオンは待っている間、右手に少量の無属性魔力を集めた。
ゼロスレッドとして伸ばさず、指先へ留める。
最近続けている右手の訓練だった。
攻撃へ使うつもりはない。ただ、魔力を一点へ集めた状態を維持する。
魔力が僅かに膨らむ。
集中させようとすると、指先ではなく手のひらへ広がった。
「まだ散るな」
レオンが呟く。
ミナが右手を見る。
「線にする方が安定してるね」
「左手で何年もやってきたからな」
再び圧縮する。
今度は先ほどより小さくなったが、数秒で形が崩れた。
その時、観測所の灯りが一斉に弱くなった。
ユリアの火ではない。
ノアの水でもない。
周囲の魔力そのものが、一瞬だけ薄くなった。
ミナが息を呑む。
「今、全部切れた」
測定器の針は、ほとんど動いていなかった。
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