↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
90/126

第89話 持ち帰った違い

翌朝。

森の外で夜を明かしたレオンたちは、日の出とともに幌馬車へ荷物を積み込んだ。

セイルの傷は出血も止まり、熱もない。ノアが包帯を交換し、担任も問題なく移動できることを確認した。


「帰還までが実習だ。気を抜くな」


担任の言葉で、幌馬車が動き出す。

来た時と同じ街道を王都へ向かうが、レオンたちの記録用紙は行きよりも厚くなっていた。

地中に残っていた境界標らしき石。

測定値には現れなかった魔力の流れ。

地図から消えていた道。

負傷した牙猪。

生息記録にない大型の狼型魔物。


どれか1つだけなら、資料の誤差で説明できるかもしれない。

だが、違いは1つではなかった。


昼を過ぎた頃、ミナが荷台の中で魔物生息表を広げた。


「やっぱりいない」


「狼型?」


ノアが隣から覗き込む。


「うん。大きさだけなら近い種類はいるけど、北東森林には生息してないことになってる」


レオンも資料を確認した。

近い特徴を持つ魔物は、王都からさらに北の山岳地帯に生息すると記されている。


「移動してきた可能性はある」


ユリアが言う。


「環境が変われば、生息域が変わること自体は不自然ではないわ」


「だったら、それを確認するのが調査だな」


ガルドが腕を組む。


「教本にいないから、見なかったことにするわけにもいかねえ」


学院へ戻ったのは夕方だった。

東門を通ると、そのまま実習棟へ向かう。クラリスも報告を受けるために待っていた。


机の上へ、6人分の記録が並べられる。


「最初から順番にお願いします」


クラリスが言った。


レオンたちは、推測を交えずに報告した。

野営地の下で人工的な石を確認したこと。

石の近くで測定器を使用した際、ミナだけが地中へ向かう魔力を見たこと。

1基目の道標に、古い地図の道と一致する溝があったこと。

負傷した魔物が西側から移動していたこと。


最後に、大型の狼型魔物について報告する。


「2体と遭遇。1体を討伐し、1体は西側へ逃走しました。学院の生息表には該当する種類がありません」


クラリスが記録から顔を上げる。


「討伐した個体は?」


「現地に残しました。身体の寸法と特徴は記録してあります」


レオンは用紙を差し出した。

クラリスは長さや傷の位置まで確認し、別の資料を取り出す。


「この特徴なら、灰牙狼グレイファングに近いですね」


「北の山岳地帯にいる魔物ですよね?」


ノアが尋ねる。


「現在の公的な生息域では、そうなっています」


現在の。

その言い方に、レオンは反応した。


「以前は違ったんですか?」


クラリスはすぐには答えなかった。


「過去の調査記録を確認します。生息域が変化した可能性もありますから、今の段階では異常とは断定しません」


担任が横から口を挟む。


「それでいい。こいつらにも、まだ断定させるな」


報告を終えると、クラリスは原本を預かり、レオンたちには写しを作るよう指示した。


「今回の記録は、各自でも保管してください」


「いつもそうするんですか?」


ミナが尋ねる。


「重要な実習では珍しくありません」


クラリスはそこで一度言葉を切った。


「それに、比較できる記録は多い方がいいでしょう」


レオンは自分たちが持ち帰った紙の束を見る。

森で見つけたものが異常なのか。

それとも、学院の資料が古いだけなのか。


答えを出すには、まだ比較するものが足りなかった。

良ければブックマークしていただけると泣いて喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。