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第54話 3つの順位戦

ユリアが14位へ挑んだのは、変動地形走の翌日だった。


相手は長い杖を使う風属性の生徒。

ユリアは足元へ氷を広げ、進める道を制限した。

だが、相手はその道を進まなかった。


風で身体を浮かせ、氷の上を越える。

着地先へ氷を作られても、杖から放つ風で表面を削った。


ユリアは止まらずに進み続けた。

それでも、最後まで相手を自分の道へ入れられなかった。


杖の先がユリアの肩へ触れる。


「勝者、14位」


教師が決着を告げた。


ユリアは一度だけ目を閉じ、杖を腰へ戻した。

15位の順位は変わらない。


観客席にいたセイルが立ち上がる。


「残念だったな」

「次は勝つわ」

「俺が先に15位へ行くかもしれないぞ」

「あなたは17位でしょう?」

「すぐ上がる」

「上がってから言って」


ユリアはセイルの横を通り過ぎた。

敗北した直後でも、歩く速度は変わらない。


レオンは、氷が残る実技場を見た。

ユリアは止まらなかった。

だが、進み続けることと、勝てることは同じではない。


相手もまた、用意された道を進む必要はなかった。


3日後。


レオンは18位の生徒へ順位戦を申し込んだ。

相手は片手剣を使い、身体の周囲へ小さな光の盾を浮かべていた。


攻撃を受ける直前に盾を移動させる。

短剣を向ければ胸元へ。

ゼロスレッドを足へ伸ばせば、足首の前へ。


すべてを同時には守れない。

だが、相手はレオンの左手を見てから盾を動かしていた。


レオンは見える糸を相手の足元へ伸ばした。

光の盾が下がる。


その瞬間、糸を引かずに前へ出た。

短剣を胸元へ向ける。


盾が戻る前に、刃先が制服へ触れた。


決着までに使った糸は2本。

試合時間も長くなかった。


レオンは18位になった。


翌日の放課後、セイルが順位表の前で待っていた。


「次は俺だろ」

「ああ」

「訓練で1回触れたからって、同じようにできると思うなよ」

「同じ方法は使わない」

「俺もだ」


2人の順位戦は、その4日後に決まった。


試合開始と同時に、セイルが風を放った。

足元の砂が実技場全体へ広がる。

ゼロスレッドを張れば、砂が触れて位置を浮かび上がらせる。


レオンは糸を使わずに中央へ進んだ。

セイルは正面から来ない。

左右へ細かく位置を変え、木剣の間合いへ入った瞬間だけ踏み込んでくる。


最初の一撃を短剣で受ける。

セイルは止まらず、レオンの横を抜けた。

振り返る前に、木剣が背中へ迫る。


レオンは地面へ糸を固定し、身体を前へ引いた。

木剣を避ける。


だが、砂が糸の位置を示した。

セイルは糸を追わない。

固定されている方向を見て、レオンの移動先へ先回りした。


木剣が右肩へ当たる。


レオンは距離を取り、杭へ糸を張った。

セイルの進める場所を減らす。


以前の訓練で触れた方法だった。


セイルは杭の周囲へ風を流した。

根元の砂が削られ、固定が緩む。

レオンが糸を引いた瞬間、杭が倒れた。


進路は狭まらない。


「同じ方法は使わないんじゃなかったのか?」


セイルが木剣を構える。


「配置は変えた」

「やってることは同じだ」


セイルが踏み込む。


レオンは右側へ2本の糸を張った。

左へ誘導する。

その先へ自分が動く。


セイルは左へ行かなかった。

正面から糸の手前まで進み、急停止する。


レオンも足を止めた。


セイルが何を選ぶかを見る。

右か。

左か。

後ろか。


判断しようとした瞬間、セイルが再び加速した。


糸と糸の間へ身体を沈め、そのまま低い姿勢で抜ける。

レオンが糸を動かすより早い。


木剣が脇腹へ当たった。


「そこまで!」


教師が声を上げる。


勝者はセイル。

レオンの順位は18位のままだった。


試合後、セイルは木剣を肩へ担いだ。


「お前、また止まったな」

「お前の進路を見ていた」

「見終わるまで待つと思ったか?」

「思っていない」

「なら、止まるな」


セイルは観客席のユリアを見る。


「せっかく昨日習ったんだろ」

「昨日ではない」

「細かいな」


セイルは実技場を出ていった。


レオンは、最後に張った2本の糸を見る。

進路を減らすこと自体は間違っていなかった。


だが、減らしたあとで相手の選択を確認している。

相手が動く。

見てから決める。

その間、レオン自身は止まっていた。


変動地形走と同じだった。


次の最善を探すために、今の動きを止めている。


翌日から、レオンは長い訓練をしなかった。


ガルドに正面から近づいてもらい、回避の方向を決める。

ミナには途中で進路を変えてもらう。


相手の動きを最後まで見ない。

最初に選んだ方向が塞がれたら、止まらずに別の一歩を出す。


右へ進めなければ左。

左が塞がれば前。

完全な答えを探さず、次に進める場所を選ぶ。


最初は失敗が続いた。

ガルドの腕へ自分からぶつかり、ミナには簡単に背後へ回られた。


それでも、足を止めなかった。


「雑になってないか?」


ガルドが尋ねる。


「雑になっている」

「直さなくていいのか?」

「止まるよりはいい」

「ずっと雑なままじゃ駄目だろ」

「進みながら直す」


ミナがレオンの足元を見る。


「前より遅い」

「ああ」

「でも、止まらない」

「ああ」


完成した動きではない。

セイルの速さにも届かない。


それでも、次の試合までに直すべき部分は決まった。


さらに5日後。


レオンは16位の生徒へ挑戦した。

相手は長い棍を使い、地属性魔法で小さな石柱を作る。


試合が始まると、棍の長い間合いでレオンを近づけず、左右へ石柱を置いた。

正面には武器。

横には障害物。

進める場所が少しずつ消えていく。


以前なら、配置が完成するまで相手の狙いを観察していた。


今回は止まらない。


最初の石柱が上がる前に、右へ進む。

棍が横から迫る。

短剣で受けず、身体を低くして下を抜けた。


正面に2本目の石柱が伸びる。

完全に立ち上がる前に足を掛け、上へ乗る。


相手が棍を振り上げる。

レオンは石柱から飛び降りた。

着地先は見ていない。

先にゼロスレッドを地面へ伸ばし、身体が倒れないよう支える。


姿勢は低い。

左足も滑った。

それでも、止まらず前へ出る。


相手が後退しながら棍を突く。

レオンは右へ避けた。

そこへ新しい石柱が現れる。


右は塞がれた。


レオンは考え直さない。

石柱へ糸を巻きつけ、引いた。

身体を加速させるためではなく、進行方向だけを変える。


右へ向かっていた身体が、石柱を中心に前方へ回る。

棍の内側へ入った。


相手が棍を引き戻す。

レオンは短剣を伸ばした。


届かない。


もう半歩必要だった。


以前なら、ここで別の糸を伸ばしていた。

だが、左手はまだ最初の石柱へつながっている。


レオンは糸を切った。

自分の足で半歩進む。


棍の柄が肩へ向かう。

短剣が相手の胸元へ向かう。


互いの武器が迫る。


レオンの刃先が、わずかに早く制服へ触れた。


「そこまで!」


教師が間へ入る。


「勝者、レオン・アーヴェル」


レオンは短剣を下ろした。

右肩のすぐ近くで、相手の棍が止まっている。

あと少し遅ければ、結果は逆だった。


完全な勝ち方ではない。

安全な道を選んだわけでもない。


それでも、止まらずに最後まで進んだ。


順位表が更新される。


16位 レオン・アーヴェル


1つ下には、17位のセイル。

1つ上には、15位のユリア。


2週間で3試合。

勝利。

敗北。

そして、修正して勝利。


上位15人まで、あと1つ。


だが、15位にいるユリアも、その場所で待ってはいなかった。

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