↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/126

第38話 戻った先で

実は今日休みなので、朝から投稿予約作りまくってます。

鉄扉の向こうから、ガルドの大型盾が床へ倒れる音が聞こえた。


「取りに戻れないのか?」


ガルドが扉を睨む。


「今は無理です」


レオンは扉の中央を確認した。金属板を差し込む窪みはあるが、鍵は内側に残っている。ゼロスレッドを通せる隙間もなかった。


「あとで必ず回収します」


「壊されてなきゃいいけどな」


「壊れても直せる」


ミナが言う。


「お前が直すわけじゃねえだろ」


ガルドは不満そうだったが、鉄扉から離れた。


3人は来た道を引き返す。だが、分かれ道へ戻ると、落下した石板が通路を塞いでいた。


ガルドは石板へ手を当てる。


「盾があれば叩けたんだが」


「素手では?」


「俺を何だと思ってる」


鉱人種ドワーフ


「種族だけで石壁を壊せると思うな」


レオンは石板へゼロスレッドを伸ばした。端から裏側へ糸を通そうとするが、隙間がほとんどない。動かすための装置も、反対側にあるらしい。


「別の道を探すしかありません」


「右の通路」


ミナが分かれ道の反対側を見る。


先ほどは足音を作る魔導器が置かれていた道だ。


「罠では?」


「罠でも、通路はある」


ほかに選択肢はない。


3人は右の通路へ進んだ。少し先には、箱型の魔導器が置かれている。内部の部品が動き、誰かが走るような音を繰り返していた。


レオンがゼロスレッドを内部へ入れ、魔石との接続を外す。偽の足音が止まり、通路に静寂が戻った。


「こんな物まで用意してたのか」


ガルドが魔導器を見下ろす。


「追われることを想定していたんでしょう」


「俺たちが来る前から?」


「対象Bの行動を記録していたなら、その可能性があります」


その言葉に、3人とも黙った。


通路の先は緩やかな上り坂になっていた。壁の魔導灯は消えていたが、奥から僅かに空気が流れてくる。


「風がある」


ミナが言う。


「地上につながっています」


しばらく進むと、行き止まりに見える壁へたどり着いた。だが、下側から外の光が細く差し込んでいる。


レオンは壁へ手を触れた。


木だ。


石に見えるよう表面だけが加工されている。


「扉になっています」


「鍵は?」


ガルドが尋ねる。


「ありません。押せば開きます」


3人で力を込めると、壁がゆっくりと外側へ倒れた。


眩しい夕方の光が差し込む。


出た場所は、施設管理棟から少し離れた資材置き場だった。積み上げられた古い石材の陰に、地下への出口が隠されていたらしい。


「戻れたな」


ガルドが大きく息を吐く。


「時間は?」


ミナが空を見る。


日はまだ沈んでいない。地下へ入ってから、それほど長い時間は経っていないようだった。


「倉庫を確認します」


レオンたちは資材置き場を離れ、廃棄書類保管庫へ戻った。


壊した扉は倒れたままだった。


しかし、倉庫の中が変わっている。


床へ落ちていたはずの台帳がない。作業台の刃物も、切られた綴じ糸も、紙片も消えていた。


地下への入口だった床板も閉じられている。


「片づけられた」


ミナが呟く。


「俺たちが地下にいる間にか?」


ガルドが倉庫を見回す。


「白い仮面とは別に、仲間がいたんでしょう」


レオンは作業台へ触れる。埃の上に、新しい指の跡が残っている。


こちらが地下を調べている間に、地上の証拠を消した。


最初から、3人を地下へ誘導することが目的だった可能性もある。


「紙は持ってる?」


ミナが尋ねる。


レオンは鞄を確認した。


観測記録は残っている。


『対象Bの同行者、2名を確認』


『以後、観測対象へ追加する』


少なくとも、何も得られなかったわけではない。


「ここから離れましょう」


レオンが言った。


「正面から出るのか?」


「ほかに道はありません」


3人が壊れた扉を越えた、そのとき。


「ずいぶん派手に壊したな」


聞き覚えのある声がした。


廃棄書類保管庫の前に、Dクラスの担任が立っていた。


腕を組み、壊れた扉と3人を順番に見る。


「放課後の自主訓練にしては、場所が妙だ」


ガルドが僅かに盾を探すような動きをした。だが、大型盾は地下に残っている。


ミナは無言で影の位置を確認している。


レオンは2人の前へ出た。


「倉庫の中に人がいたので追いました」


「その人間は?」


「逃げられました」


「地下へか?」


3人の動きが止まる。


教師は壊れた扉の奥を見ていない。床板もすでに閉じられている。


それでも、地下と断定した。


「地下があることを知っているんですか?」


レオンが尋ねる。


教師はすぐには答えなかった。


「お前たちは、何を見た?」


今度はレオンが黙る。


対象B。


第2観測区画。


観測段階2。


教師が第0研究室と関係していない保証はない。


「答えられません」


レオンが言う。


「そうか」


教師は怒ることも、問い詰めることもしなかった。


壊れた扉の前へ歩き、内側を確認する。


「なら、俺も聞かなかったことにする」


「いいんですか?」


「よくはない。学院の設備を壊し、許可なく立入禁止区画へ入り、危険な人物を追った」


教師は3人を見る。


「本来なら停学でもおかしくない」


ガルドの顔が引きつる。


「だが、報告すれば記録が残る」


レオンは教師を見つめた。


「記録を残さない方がいいと?」


「俺はそう言っていない」


教師は壊れた扉から手を離す。


「明日の朝までに、この扉を直せ。費用は3人で負担しろ」


「それだけですか?」


ミナが尋ねる。


「それだけだ」


教師は立ち去ろうとして、足を止めた。


「1つだけ忠告しておく」


振り返らないまま、低い声で続ける。


「第0研究室は、存在しないから危険なのではない」


レオンの手が、鞄の中の観測記録へ触れた。


「存在していたことを、誰かが消そうとしているから危険なんだ」


教師はそれ以上何も言わず、施設管理棟の方角へ歩いていった。


残された3人は、しばらくその背中を見つめていた。


「知ってたな」


ガルドが言う。


「少なくとも、第0研究室のことは」


ミナは教師が去った道を見る。


「追う?」


「今日はやめましょう」


レオンは鞄の中の紙を握る。


地下では、正体不明の誰かに観測されている。


そして地上には、その存在を知りながら黙っている教師がいる。


誰が敵で、誰が味方なのか。


分からない者が、また1人増えた。

良ければブックマークしていただけると泣いて喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。