↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
26/126

第25話 二つの色を持つ者

こう言う設定に、めちゃくちゃワクワクします。

次の属性基礎学は、1年生5クラスの合同授業だった。


レオンたちDクラスが大講義室へ入ると、すでに前方の席は埋まっていた。


最前列がSクラス。


その後ろにA、B、Cと続き、Dクラスの席は最も後ろに用意されている。


「授業を受ける位置まで順位順かよ」


ガルドが小さく呟いた。


「黒板は見えます」


「そういう問題じゃねえんだけどな」


レオンは最後方の席へ座り、帳面を開いた。


前方には、赤い髪が見える。


リゼットはSクラスの中央付近に座っていた。


少し離れたAクラスの席には、黒い外套を着たミナもいる。


やがて、教壇へ属性基礎学の教師が現れた。


その隣には、昨日Dクラスで見たものと同じ透明な水晶が置かれている。


内部では、赤、青、黄、緑の4色が静かに渦巻いていた。


「今日は、魔法属性と保有属性数について説明する」


教師が水晶へ触れる。


赤い光だけが強くなった。


「人が生まれながらに持つ魔法属性は、基本的に鑑定によって確認される」


黒板に、4つの属性が書かれる。


火。


水。


土。


風。


その下に、光と闇。


少し離れた位置に、無。


「火、水、土、風を基本4属性と呼ぶ。光と闇は特殊属性。無属性は、そのどちらにも属さない」


教師は基本4属性の間へ矢印を引いた。


風から土。


土から水。


水から火。


火から風。


「一般的な属性相性は、この循環で示される」


風は土へ優位。


土は水へ優位。


水は火へ優位。


火は風へ優位。


レオンは矢印を帳面へ書き写した。


「ただし、相性が有利なら必ず勝てるという意味ではない」


教師が教壇に置かれた赤い魔石を持ち上げる。


魔石から、小さな炎が生まれた。


続いて青い魔石が光り、少量の水が炎へ落ちる。


火はすぐに消えた。


「同程度の威力と技量なら、水は火に有利だ」


次に、炎が先ほどの倍以上の大きさへ変わる。


同じ量の水が落ちた。


水は一瞬で蒸発し、炎は消えなかった。


「だが、威力、制御、魔力量、地形、距離が変われば結果も変わる」


教師は2つの魔石を置いた。


「属性相性は、勝敗を決める答えではない。戦いが始まる時点での条件の1つだ」


レオンはその言葉を記録する。


街道で戦った盗賊頭は、水属性だった。


火属性のリゼットに対して有利な属性を持っていたが、それだけで勝敗は決まらなかった。


魔石。


濡れた地面。


逃げ道。


周囲の物。


使い方次第で、有利も不利も変化する。


「次に、保有する属性数について説明する」


教師が水晶へ再び触れた。


赤い光だけが残る。


単属性ユニア


黒板へ名称が書かれる。


「1つの属性を扱う者。世界人口のほとんどが、単属性ユニアに該当する」


今度は赤と青が同時に輝いた。


双属性者デュアル。2つの属性を扱える希少な存在だ」


講義室から感嘆の声が上がる。


「2属性を持っているなら、単属性より強いんですか?」


Bクラスの生徒が手を上げた。


「選択肢は増える」


教師は答えた。


「だが、単純に強さが2倍になるわけではない」


水晶の中で、赤と青の光が互いに押し合う。


「異なる属性を同じ魔力回路で扱うには、それぞれの性質を理解し、切り替え、制御する必要がある。片方の訓練だけに集中できる単属性ユニアより、習得に時間がかかる場合も多い」


「両方を同時に使えばいいのでは?」


別の生徒が尋ねる。


「相性の悪い属性を無理に同時使用すれば、自分の魔力回路を傷つける」


教師の指が動く。


赤と青の光が衝突した。


水晶が激しく揺れ、光が消える。


「持っていることと、使いこなせることは別だ」


講義室が静かになる。


リゼットが前方で帳面へ何かを書き込んでいた。


レオンが記録を取るようになってから、彼女も失敗や気づきを書くようになっている。


教師は水晶を立て直した。


次に、赤、青、黄の3色が輝く。


三属性者トライア


教室の空気が変わった。


「3つの属性を扱う、極めて珍しい存在だ。確認されれば、幼少期から国家や大組織に注目されることになる」


昨日のスキル講義と同じだった。


高く評価される能力は、称賛だけをもたらすわけではない。


保護。


勧誘。


監視。


能力が希少になるほど、本人だけのものではなくなっていく。


三属性者トライアは、国家戦力級とも呼ばれる。だが、保有しているだけで国家戦力になるわけではない。3属性すべてを鍛え上げた者が、それだけ少ないということだ」


教師が水晶へ多くの魔力を流す。


赤。


青。


黄。


緑。


4色すべてが輝き、互いに絡み合った。


四精者エレメンタラー


誰かが息を呑んだ。


「火、水、土、風。基本4属性すべてを扱う者にだけ与えられる呼称だ」


「光と闇を持っていても、四精者には数えないのですか?」


今度はSクラスの生徒が質問した。


「数えない」


教師は黒板の光と闇を指した。


四精者エレメンタラーの四精とは、火、水、土、風を指す。光と闇は特殊属性であり、基本4属性には含まれない」


水晶から4色が消える。


代わりに、白い光が生まれた。


続いて、その内側へ黒い光が混ざっていく。


ミナの目が細くなった。


「光と闇を同時に保有する者は、双極保有者デュアルアークと呼ばれる」


講義室の空気が張り詰める。


「相反する2属性を持つ、極端に希少な存在だ。両属性の衝突は魔力回路へ強い負荷をかけるため、強力であると同時に危険でもある」


白と黒が、互いを押し潰すように揺れる。


教師はすぐに魔力を止めた。


「希少な属性を持つことは、祝福だけではない」


その声は、先ほどまでより低かった。


「制御できなければ、自分自身を傷つける。制御できたとしても、その力を求める者が現れる」


前方のリゼットが、わずかに顔を上げた。


ミナは水晶を見つめたまま動かない。


レオンは教師の言葉を帳面へ書く。


――高く評価されることも、自由を失う理由になる。


「先生」


ガルドが手を上げた。


「無属性は、単属性ユニアに入るのか?」


講義室の視線が、最後方へ集まった。


多くの生徒がレオンを見ている。


教師は黒板の端に書かれた「無」の文字へ目を向けた。


「分類上は、1つの属性のみを持つという意味で単属性に近い」


一度言葉を切る。


「だが、一般的に無属性保有者を単属性ユニアと呼ぶことは少ない」


「なぜです?」


「無属性は、基本4属性や特殊属性とは性質が異なるからだ」


教師はレオンを見る。


「レオン・アーヴェル。無属性は、すべての属性に有利か?」


「いいえ」


レオンは答えた。


「では、すべての属性を使えるのか?」


「使えません」


「属性相性の影響を受けない?」


「分かりません。ただ、火や水になった後の現象には、普通に影響を受けます」


炎へ触れれば火傷する。


水へ沈めば呼吸できない。


岩が飛んでくれば、当たった場所を負傷する。


無属性だからといって、ほかの属性が無効になるわけではない。


教師は小さく頷いた。


「正解だ」


黒板の「無」の下へ線が引かれる。


「無属性は、属性循環の外側にある。決まった有利属性も不利属性も確認されていない」


講義室がざわつく。


「それなら、やっぱり全部に有利なんじゃないですか?」


Cクラスの生徒が言った。


「違う」


教師は即座に否定した。


「有利が決まっていないことと、すべてに有利であることは同じではない」


教師は赤い魔石から炎を出す。


「この炎へ、無属性魔法を当てれば必ず消せるか?」


答えられる者はいなかった。


教師の視線がレオンへ向く。


「どう思う」


「魔法へ干渉するなら、構造を理解する必要があります」


「理解できなければ?」


「失敗します」


「相手の魔法が、自分の扱える魔力より強ければ?」


「完全には止められません」


教師は炎を消した。


「無属性は万能ではない。基本属性を自由に扱える属性でもなければ、あらゆる魔法を無効化する力でもない」


レオンはその説明を記録する。


ゼロスレッドで魔法へ触れられたとしても、その仕組みを理解できなければ崩せない。


干渉する時間がなければ間に合わない。


一度物理現象へ変化した攻撃には、魔力だけを動かす方法が通じないこともある。


これまで感覚で理解していたことが、言葉になっていく。


「本日の講義はここまでだ」


教師が水晶から手を離す。


「次回は、属性を含め、世界中のスキル保有者数を記録している古代遺物について説明する」


黒板へ、新しい名前が書かれた。


天数碑アカシック・ステラ


レオンは、その名称を帳面へ写した。


「十大国に1基ずつ存在し、世界中の国家が変化を見張り続けている石碑だ」


神話級ミソロジークラス


三属性者トライア


四精者エレメンタラー


高く評価された者ほど、国家から注目される。


ならば、天数碑は何のために人数を数えているのか。


レオンは帳面の端へ、小さく疑問を書き残した。


――能力を数えるのは、誰のためだ。

おもしろかったらブックマークしていただけると泣いて喜びます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。