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第17話 見える少女

描き溜めないなったから更新遅くなります。

「色がないだけ」


ミナの黒い瞳が、レオンの指先を見つめている。


「糸みたいな魔力が見える」


レオンは左手を下ろした。


「他の人には見えていません」


「私は見える」


「どうやって?」


ミナが答える前に。


森の奥から、石が飛んできた。


「話はあとだ!」


ガルドが盾を構える。


石がぶつかり、重い音が響いた。


先ほどの石人形が、木々の間から近づいてくる。


残り2体。


1体は両腕が太く、拳を地面へつけながら進んでいる。


もう1体は、背中へ石の塊を背負っていた。


遠距離から石を投げている個体だ。


「先に、投げてくる方を止めます」


レオンが言う。


「どうやって近づく?」


ガルドが尋ねる。


「俺が道を作ります」


「俺じゃなくて?」


「ガルドには、もう1体を引きつけてほしい」


正面の石人形が、両腕を振り上げる。


ガルドは笑い、盾を構え直した。


「任せろ!」


石の拳と盾が衝突する。


ガルドの身体が押し戻された。


だが、倒れない。


両足を地面へ食い込ませ、石人形を正面から受け止めている。


「ミナ」


レオンは木々の間を見る。


「右側から回れますか」


「できる」


「合図をしたら、背中の石を落としてください」


ミナの身体が黒い靄に包まれる。


次の瞬間。


木の影へ溶けるように消えた。


投石型の石人形が、新しい石を持ち上げる。


狙いはガルド。


このままでは、正面の攻撃と同時に受けることになる。


レオンは左手を上げた。


「ゼロスレッド」


透明な糸を、頭上の枝へ伸ばす。


引く。


乾いた枝が折れ、石人形の前へ落ちた。


視界が一瞬だけ塞がれる。


石人形は構わず、腕を振り抜いた。


投げられた石が、枝を砕く。


狙いがずれた。


石はガルドの横を通り過ぎ、地面へ突き刺さる。


「今です!」


石人形の背後へ、黒い影が現れた。


ミナが背中の石を固定する革帯へ短剣を入れる。


1本。


切れない。


2本目を同じ場所へ突き立てる。


革帯が裂けた。


背負っていた石が落下する。


石人形の身体が後ろへ引かれ、体勢を崩した。


レオンは地面へ糸を伸ばす。


落ちた石へ巻きつける。


石そのものを動かす力はない。


だが。


転がる方向を、わずかに変えることはできる。


引く。


大きな石が、石人形の右脚へぶつかった。


石の膝へ亀裂が入る。


「ミナ!」


「分かってる」


ミナの短剣が、亀裂へ差し込まれる。


金具を探す。


石人形が腕を振り回した。


ミナは身体を低くし、攻撃を避ける。


「見つけた」


短剣をひねる。


胸の装甲が外れた。


青い魔石が姿を見せる。


レオンがゼロスレッドを伸ばし、魔石を引き抜いた。


2個目。


石人形の動きが止まる。


その直後。


「レオン!」


ガルドの声が響いた。


正面の石人形が、盾ごとガルドを持ち上げていた。


「こいつ、力が強すぎる!」


石人形が腕を振る。


ガルドの身体が、盾ごと投げ飛ばされた。


地面を転がる。


石人形は倒れたガルドへ向かって歩き出した。


レオンは石人形の足元を見る。


左右の脚に異常はない。


重心も安定している。


先ほどと同じ方法は使えない。


「ミナ。魔石の位置は見えますか」


「胸の奥」


「外から取れますか」


ミナが首を横へ振る。


「隙間がない」


正面から装甲を壊すしかない。


だが、レオンとミナの力では難しい。


ガルドが起き上がる。


口元から血が流れていた。


それでも、盾を拾う。


「俺が壊す」


「できますか」


「分からん」


ガルドは盾の縁を見る。


先ほどの攻撃で、一部が欠けている。


「でも、もう1回なら耐えられる」


レオンは石人形の動きを観察した。


右腕を上げる。


左脚を踏み込む。


拳を振り下ろす。


同じ動き。


「3秒だけ止めてください」


「3秒でいいのか?」


「それ以上は必要ありません」


ガルドが盾を構える。


「なら、絶対に止める!」


石人形が拳を振り上げる。


ガルドが正面から突進した。


盾と拳がぶつかる。


激しい音。


盾へ亀裂が広がる。


ガルドの膝が沈む。


それでも。


石人形の腕は止まっていた。


「今だ!」


レオンはゼロスレッドを伸ばす。


石人形ではない。


ガルドの盾。


欠けた縁へ糸を巻きつける。


「ガルド。右へ!」


ガルドが盾を傾ける。


レオンも同じ方向へ糸を引いた。


石人形の拳が、盾の表面を滑る。


腕が外側へ流れた。


胸が開く。


そこへ。


ミナが飛び込んだ。


2本の短剣を、石人形の胸へ突き立てる。


「まだ硬い」


「同じ場所です!」


ガルドが盾を手放し、体当たりする。


石人形の身体が揺れる。


ミナは短剣を抜かなかった。


1本目。


2本目。


同じ傷へ、何度も力を加える。


石の装甲に亀裂が走った。


レオンが糸を、その亀裂へ滑り込ませる。


内側から引く。


装甲が剥がれ落ちた。


青い魔石が現れる。


ミナが手を伸ばし、魔石を引き抜いた。


3個目。


最後の石人形が動きを止めた。


森の中へ、試験終了を告げる鐘が響く。


ガルドが、その場へ仰向けに倒れた。


「終わった……」


「生きてますか」


「最初に聞くことが、それか?」


レオンは魔石を3個並べた。


1人1個。


これで、全員が合格条件を満たした。


ミナがレオンの隣へ立つ。


「あなたの魔法」


「誰にも話さないでください」


「なぜ?」


「目立ちたくないので」


ミナは少し考えたあと。


黒い瞳を細めた。


「もう遅い」


「どういう意味ですか」


ミナが、森の上にある監視塔を見た。


試験官が、遠見用の魔導器をこちらへ向けている。


その隣には。


見覚えのない、白い仮面の人物が立っていた。


仮面の人物は。


レオンの左手だけを、じっと見つめていた。


仮面の人物、いったい誰なんだ!!

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