第124話 3つ目の形
十三環騎士団が残した形。
それを探すため、レオンとリゼットは引き続き学院で閲覧できる過去の資料を調べていた。
北方連合《ノルド=ヴァルハイト》へ行く必要はない。
十三環騎士団が他国の災害へ介入したなら、助けられた側にも記録は残る。
探す対象を絞ると、いくつかの報告が見つかった。
大規模な魔物災害。
住民の避難。
危険地域の封鎖。
記録された場所も時期も違う。
それでも、十三環騎士団が現場へ入り、被害の拡大を抑えたという点は共通していた。
リゼットが1つの報告から顔を上げる。
「少なくとも、これだけを見るなら助けに来た側ね」
「ああ」
避難が間に合わなければ、さらに多くの被害が出ていた。
別の記録でも、魔物の進行を止めたあとに危険区域を封鎖し、住民が戻れる範囲を確認している。
世界秩序院とは役割が違う。
あちらが記録と制度を扱うなら、十三環騎士団は実際に危険な場所へ向かう。
「怪しいところを探してたはずなのに、読めば読むほど普通に頼れる組織に見えるわ」
「それはそれでいいだろ」
レオンは次の資料を開く。
「疑うために調べてるわけじゃない」
知りたいのは、何をしてきたか。
そして、何を使ってきたか。
しばらくして、災害発生時の魔力変化を記録した資料が見つかった。
現場で複数回の測定が行われている。
数値の変化と測定位置が並び、その端に使用した測定器を識別するための記号が残っていた。
レオンの目が止まる。
「リゼット」
「見つけた?」
「まだ分からない」
資料を隣へ置く。
先ほどまで確認していた、世界秩序院の認定関係資料。
記号そのものは違う。
だが、数字の置かれる位置。
記号との区切り。
複数の情報を短く並べる順番。
似ていた。
リゼットも身を寄せる。
「……確かに近いわね」
レオンはさらに記憶を辿る。
第0研究室の備品番号。
そこでも、数字と記号が同じような位置関係で並んでいた。
完全には一致しない。
用途も年代も違う。
それでも。
第0研究室。
世界秩序院。
十三環騎士団。
3つ目だった。
「これでも偶然だと思う?」
リゼットが尋ねる。
レオンはすぐには答えなかった。
似たものを探していると、似て見えるものだけを拾ってしまうことがある。
それでは調査ではない。
もう一度、それぞれの違いを見る。
番号は違う。
記号も違う。
資料の目的も違う。
共通しているのは、その組み方だった。
「偶然じゃない、とはまだ言えない」
「やっぱり慎重ね」
「でも」
レオンは3つの資料を見渡した。
「偶然だと考える方が、前より難しくなった」
リゼットが小さく頷く。
誰か1つの組織が、残りを管理している証拠ではない。
むしろ、世界秩序院と十三環騎士団は役割そのものが違う。
第0研究室とも、表向きの目的はまるで異なる。
なのに、同じような形が残る。
「前に言ってたこと、本当にありそうね」
「同じ仕組みを使ってるって話か」
「ええ」
可能性は高くなった。
だが、それでも次の疑問が残る。
共通する仕組みがあるとして。
誰が作った?
レオンは資料の日付を見る。
世界秩序院の認定記録。
十三環騎士団の災害記録。
第0研究室で見た備品。
「今ある資料だけじゃ、どれが先か分からない」
「なら、一番古いものを探す?」
レオンは頷いた。
誰が上にいるのかを考えるより、その方が確かだった。
形が同じなら。
次に調べるべきなのは、その形がいつから存在しているのか。
レオンは3つの記録を並べた。
「作った側を探すなら、まず一番古い記録からだ」
共通する形の先に何があるのか。
次は、その時間を遡る。
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