第119話 保護される才能
異常発生から2日後。
魔力供給は安定を取り戻した。
原因は特定されていない。
複数の供給路で一時的な魔力低下が起きたことだけが確認された。
死者は出なかった。
重傷者は数人。
南地区で救助した母親も治療を受け、一命を取り留めている。
屋敷では、今回の対応について報告会が行われた。
軍側の責任者がリゼットを見る。
「結果として住民救助は成功しました。しかし、重要施設から人員を割いた判断は常に正しいとは限りません」
「分かっています」
「次も同じ判断をするのですか?」
リゼットは少し考えた。
「状況が同じなら」
責任者はそれ以上言わなかった。
報告後、レオンたちは再び個別に呼ばれた。
ガルドには軍から正式な推薦候補への登録。
ノアには水資源部門での特別研修。
ミナには調査機関から、能力測定への参加要請。
「断った」
ミナが部屋へ戻るなり言った。
「大丈夫なの?」
ノアが尋ねる。
「任意だって書いてあったから」
「本当に任意ならな」
ガルドが腕を組む。
ミナは何も言わなかった。
レオンにも書類が渡された。
内容は勧誘ではない。
定期的な能力報告への協力依頼。
無属性魔法。
地下施設事故後の変化。
新しく使用した広域感知魔法。
すでにゼロパルスのことまで把握されている。
「誰が報告したんだ?」
レオンが担任へ尋ねる。
「救助記録には魔法の使用内容を書く。隠すものじゃない」
「分かってます」
問題は、記録されることではない。
その記録がどこまで共有されるのか。
一方で、リゼットのところには書類が来なかった。
「私は最初から登録されているからよ」
「何に?」
レオンが聞く。
リゼットはすぐに答えなかった。
「公爵家の人間として。高位火属性の魔法使いとして。いくつかの名簿に」
対象A。
その言葉を、リゼット自身は口にしなかった。
国家は才能を見つける。
支援する。
育てる。
そして、必要な場所へ置こうとする。
それが人を守る仕組みでもあることを、レオンは今回の事件で知っている。
だからこそ。
どこからが支援で、どこからが選択の剥奪なのか。
簡単には分けられなかった。
良ければブックマークしていただけると泣いて喜びます。




