第115話 止まった水門
異変は、その日の夕方に起きた。
治水施設から鐘が鳴る。
続いて、防壁供給施設でも警告の鐘が響いた。
魔力供給が不安定になっている。
レオンたちは屋敷へ戻る途中で、走ってきた伝令とすれ違った。
「第2水門が停止! 予備系統へ切り替えています!」
空には黒い雲が広がっていた。
上流では雨が降り始めている。
屋敷へ戻ると、広間には領地の役人と軍関係者が集まっていた。
地図の上に、異常地点が書き込まれている。
治水施設。
防壁供給施設。
軍用倉庫の一部。
そして、南側の住民地区。
「同時に?」
ノアが地図を見る。
「魔力供給の共通部分に異常がある可能性が高い」
技師が答える。
「現在、原因を調査中だ」
軍側の責任者が命令を出す。
「学院生は防壁供給施設へ回す。ガルド・ベルンは防衛要員。ミナ・クロウは魔力経路の確認。ノアは治水側へ」
「南地区は?」
リゼットが尋ねる。
「現地の衛兵が避難誘導を行っています」
「建物の一部が崩れたという報告が来ています」
別の伝令が言う。
「負傷者もいる模様です」
責任者は地図を見る。
「まず重要施設を安定させる。防壁が落ちれば被害は南地区だけでは済まない」
リゼットは反論しなかった。
「防壁の予備供給は?」
技師へ尋ねる。
「現在の消費なら30分程度は維持できます」
「軍用倉庫は?」
「独立予備がある。こちらも直ちに停止はしない」
リゼットはレオンを見る。
答えを求めているのではない。
確認するような視線だった。
30分。
住民地区では、今この瞬間にも人が瓦礫の下にいる。
「私は南地区へ行きます」
広間が静まった。
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