第114話 守る順番
翌日。
レオンたちは領地の魔力施設を見学した。
最初は治水施設。
川の水量が増えた際、複数の水門を魔導装置で補助し、下流への流量を調整する。
ノアは装置へ興味を示した。
「全部を魔法で動かすんですか?」
案内役の技師が首を振る。
「普段は人力と水圧だ。魔力を使うのは急な増水や故障時だけだよ」
次に、防壁の魔力供給施設。
領都周辺の防御設備へ魔力を送る場所だった。
その隣には、軍が管理する魔石倉庫がある。
「随分守りが厚いな」
ガルドが兵士を見る。
「当然だ」
案内役の役人が答える。
「有事にここが失われれば、防壁も軍の魔導具も使えなくなる」
一方、都市の外れにある住民地区では、魔力設備は少なかった。
古い水路と井戸が中心だ。
レオンは地図を見る。
「異常が同時に起きたら、どこから守るんですか?」
役人は迷わなかった。
「防壁供給施設、軍用倉庫、治水施設。その後に居住区だ」
ガルドが眉を寄せる。
「人より倉庫が先?」
「倉庫を守れば、結果的により多くの人間を守れる」
理屈は分かる。
防壁が止まれば、都市全体が危険になる。
治水施設が壊れれば、下流へ被害が出る。
「でも、居住区で今すぐ人が死にそうでも?」
ガルドが続ける。
「現場の責任者が判断する。ただし、重要施設を失ってさらに大きな被害が出れば、その責任も負う」
簡単な正解はない。
レオンはリゼットを見る。
彼女は黙って説明を聞いていた。
施設見学の最後。
ミナが防壁供給装置の前で足を止める。
「ここ、魔力の流れが少し変」
技師が振り返る。
「数値は正常だぞ」
北東森林。
地方観測所。
また同じ言葉だった。
ミナは装置の奥を見る。
「正常だけど、時々流れが薄くなる」
次の瞬間。
施設全体の灯りが、一度だけ大きく揺れた。
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