第113話 リゼットの進路
その夜。
屋敷の庭で、レオンはリゼットを見つけた。
昼間の面談が終わってから、彼女はほとんど話していない。
「ここにいたのか」
「少し静かな場所にいたかっただけよ」
レオンは隣の石柵へ寄りかかる。
「リゼットも面談した?」
「私は必要ないわ」
「どういう意味?」
リゼットは庭の先を見る。
「私の進路は、昔から候補が決まっているもの」
公爵家を継ぐ立場。
国との関係。
強い火属性。
本人が学院へ入るより前から、期待される役割があった。
「決まってるのと、決めるのは違う」
レオンが言う。
リゼットがこちらを見る。
「簡単に言うのね」
「簡単じゃないから言ってる」
少しの沈黙。
「私は、家を嫌っているわけではないの」
「分かってる」
「父も、私を道具にしたいわけじゃない」
「それも」
「だから余計に難しいのよ」
家族が悪なら、拒絶すればいい。
国家が明確な敵なら、戦えばいい。
だが、守ってくれた家も、領地の住民も、リゼットへ役割を求めている。
「選ばないと、誰かに選ばれる」
レオンは言った。
それは自分にも当てはまる。
無属性。
反復作業。
対象B。
自分の知らないところで、何度も呼び方を与えられてきた。
リゼットは小さく息を吐いた。
「あなたに言われると説得力があるのが腹立たしいわね」
「褒めてる?」
「いいえ」
それでも、少しだけ表情が戻った。
屋敷へ戻ろうとした時、リゼットが立ち止まる。
「明日の施設見学。よく見ておいて」
「何を?」
「国が何を守ろうとしているか」
それだけ言って、先に歩いていった。
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