第112話 卒業後の席
個別面談は翌朝から始まった。
最初に呼ばれたのはガルドだった。
戻ってきた時には、普段より口数が少ない。
「何を聞かれた?」
セイルが尋ねる。
「卒業したら王国軍に来ないかって」
「もう?」
「まだ2年生だぞ」
ガルドは手にしていた書類を机へ置いた。
住居。
給与。
家族への支援。
身分上の保証。
条件だけを見れば悪くない。
「俺みたいな平民でも、正式な地位を用意するって」
「断ったの?」
ノアが尋ねる。
「考えさせてくれって言った」
次はノア。
水資源管理を担当する部署への推薦を説明された。
ミナには、国の調査機関。
「魔力の流れを普通の人より細かく見られる人は貴重なんだって」
ミナは戻るなり、机へ紙を置いた。
「支援って書いてあるけど、定期報告とか、移動する時の許可とかも書いてある」
レオンが書類を見る。
能力研究への協力。
居住地変更時の届け出。
任務招集への優先参加。
「断れるのか?」
「書いてない」
リゼットが横から答えた。
「契約する前なら断れるわ。けれど、支援を受ければ条件が付く」
「保護と交換ってことか」
「そういう制度は珍しくないわ」
リゼットの声は落ち着いていた。
だが、表情は硬い。
午後。
レオンも面談へ呼ばれた。
向かいに座った役人は、レオンの学院成績より先に別のことを聞いた。
「地下施設での事故について、体調に変化は?」
「ありません」
「無属性魔法の発達は?」
「訓練の範囲です」
「左腕の負傷は回復したと聞いている」
そこまで知っている。
レオンは表情を変えなかった。
「学院から聞いたんですか?」
「必要な情報は共有される」
役人は穏やかに笑う。
「君を疑っているわけではない。危険な事件を生き残った生徒を、国として把握しておく必要があるだけだ」
監視ではない。
把握。
拘束ではない。
保護。
言葉は柔らかい。
それでも、レオンには同じものに聞こえ始めていた。
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