第111話 公爵家からの招待
アルヴァ家領へ向かう幌馬車の中で、ガルドは何度目か分からないため息をついた。
「実習より緊張する」
「魔物は礼儀を気にしないからな」
セイルが言う。
「お前はもう少し気にしろ」
今回は学院代表として招待されている。
レオン、ガルド、セイル、ユリア、ミナ、ノア。
そして、アルヴァ家の令嬢であるリゼット。
到着前、リゼットが全員の服装を確認していた。
「ガルド。襟が曲がっているわ」
「これでいいだろ」
「よくないわ」
リゼットが手を伸ばし、襟を直す。
次にセイルを見る。
「あなたは髪」
「風で崩れる」
「今は馬車の中でしょう」
最後にレオンの前で止まった。
「あなたも」
「どこ?」
「ここ」
リゼットの指が、レオンの首元へ触れる。
留め具を直すため顔が近づき、レオンは一瞬だけ視線の置き場に困った。
リゼットが顔を上げる。
「何?」
「いや」
「変ね」
向かいに座るミナが、何も言わずに笑っていた。
アルヴァ家領の中心都市へ到着すると、王都とは違う景色が広がっていた。
大きな屋敷だけではない。
水路、倉庫、工房、兵士の詰所が計画的に配置されている。
公爵家の屋敷では、リゼットの父が一行を迎えた。
「学院での働きは聞いている。娘が世話になった」
「こちらこそ助けられています」
レオンが答える。
リゼットの父は、レオンたち1人ずつへ視線を向けた。
特に長く見たのは、ガルドとミナ。
そしてレオンだった。
「滞在中、領地の魔力施設も見てもらう予定だ。学院生の視点から意見が欲しい」
表向きは、実習の慰労と見学。
だが、夕食前に配られた予定表には、個別面談という項目があった。
ガルドが紙を見る。
「誰と面談するんだ?」
リゼットは答えず、僅かに眉を寄せた。
彼女だけは、この招待に別の目的が含まれていることを知っているようだった。
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