第108話 2つの学院の実技
交流実習最後の対抗実技。
模擬集落には、これまでより多くの課題が置かれていた。
負傷者役5人。
物資箱3つ。
防衛拠点2か所。
さらに一定時間後、集落内の魔力供給が停止する。
開始から10分。
王立側とグランツ側の点差はほとんどなかった。
突然、中央塔の上で警告灯が点いた。
模擬の魔力障害だ。
魔導式の扉が停止し、建物の中に負傷者役が閉じ込められる。
「扉が開かない!」
ノアが叫ぶ。
手動解除装置は、建物の2階外壁。
地上から約12メートルの位置にある。
セイルは別の救助へ出ている。
ユリアも防衛拠点を離れられない。
「ゼロスレッドは?」
ガルドが聞く。
「解除装置が小さすぎる。引く場所を間違えたら壊す」
レオンは右手を上げた。
距離は約14メートル。
昨日は8メートル。
右手で、ゼロピアスと同じ一点を形成する。
左手を添える。
圧縮を支える。
射出角を修正する。
標的は、解除装置の中央にある金属部品。
「レオン」
ミナが装置を見上げる。
「少し左。今の角度だと縁に当たる」
左手で微調整する。
呼吸を止める。
右手から魔力を射出した。
色のない一点が空間を走る。
10メートル。
12メートル。
形を保っている。
金属部品へ命中した。
甲高い音が響き、解除装置が回転する。
停止していた扉が僅かに開いた。
「開いた!」
ガルドが隙間へ指を入れ、扉を持ち上げる。
ノアが中へ入り、負傷者役を引き出した。
レオンは右手を下ろす。
肘まで痺れていた。
トーマが別の通路から走ってきて、解除装置を見る。
「今の、ゼロピアスじゃないだろ」
「元は同じだ」
「14メートル飛んでたぞ」
レオンは左右の手を見る。
右手で弾丸を作る。
左手で照準と形を支える。
近距離のゼロピアスとは、もう使い方が違う。
「無属性魔法」
口にすると、トーマが顔をしかめる。
「面倒なもの覚えたな」
「まだ1発だけだ」
「1発当たれば十分な場所もある」
その通りだった。
新しい無属性魔法。
遠くの敵を倒すためではない。
今はまだ、遠くの一点へ必要な力を届けられるようになっただけだった。
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