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第107話 左手で支える

夕方の訓練場。

レオンは、右手に小さな魔力の塊を作っていた。


右手で圧縮。

前方へ射出。


また途中で崩れる。


「18回目」


ミナが数えている。


「数えなくていい」


熟練加速アクセラレートがあるからって、やりすぎないように」


右腕にはすでに熱が溜まっている。

今日はここまでにするべきだった。


レオンは最後に1回だけ、右手へ魔力を集めた。


崩れる理由は、射出した瞬間に圧縮状態を維持できなくなるから。


なら、外から支えればいい。


左手を上げる。


ゼロスレッドを出すのではない。

右手の魔力塊へ、ごく薄く無属性魔力を重ねる。


「何してるの?」


「左手で形を支える」


右手で圧縮。

左手で外側の偏りを修正する。


2つの操作へ意識が分かれる。

魔力塊が震えた。


放つ。


5メートル。


まだ残っている。


8メートルで崩れた。


「伸びた」


ミナが言う。


「左手を使うと、飛んでる間の偏りが少ない」


「でも、照準も左でやってる?」


「まだ無理」


圧縮状態を保つだけで精一杯だった。

狙いは大きく右へ逸れている。


担任が後ろから歩いてくる。


「終わりだ」


「あと少しで――」


「その『あと少し』で腕を壊すのが今のお前だ」


右腕を見れば、指先が僅かに震えていた。


レオンは魔力を消す。


熟練加速アクセラレートで、失敗から修正へ進む速度は上がった。

しかし、身体が使える回数は増えていない。


ミナが片づけながら言う。


「右で作って、左で支えるなら、いつもの逆だね」


「逆?」


「今までは左手が全部やってたでしょ」


言われて気づく。


右手は攻撃を作る。

左手は精密に補助する。


左右を同じように使う必要はない。


その役割分担なら、もっと先へ進めるかもしれなかった。

良ければブックマークしていただけると泣いて喜びます。

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