第106話 届かない一点
合同実技は3日目へ入った。
今回の課題は、模擬集落の塔に設置された3つの標的を破壊しながら、地上の負傷者を救出することだった。
標的の高さは約15メートル。
階段は途中で崩れている。
「セイルなら登れるんじゃない?」
ミナが塔を見る。
「行ける。でも、上に2人いる」
グランツ側が先に高所を確保していた。
レオンは左手のゼロスレッドを塔へ伸ばした。
固定先へ届く前に、トーマの風が糸の進路を乱す。
「またそれか」
「有効な対策を捨てる理由がない」
上へ登るには時間がかかる。
地上の救助を放置すれば得点を失う。
レオンは右手へ魔力を集めた。
ゼロピアス。
本来は接触距離で撃ち込む魔法だ。
「飛ばせないのか?」
ガルドが聞く。
「試したことはある」
「結果は?」
「崩れた」
圧縮した魔力は、手から離れた瞬間に広がる。
数メートルも進めば、貫通力はほとんど残らない。
それでも試す。
右手に一点を作り、塔の標的へ向けて放つ。
色のない魔力が飛ぶ。
5メートルほどで輪郭が崩れ、標的へ届く前に消えた。
トーマが上から声を上げる。
「今のは危なそうだった!」
「届いてない」
「届くようになったら困る!」
レオンはもう1度構えかけて、止めた。
今は実験する場面ではない。
「セイル、左側から上がれるか?」
「30秒くれ!」
「ユリアとガルドは救助。俺は下から邪魔する」
ゼロスレッドを複数伸ばし、トーマたちの足場を制限する。
その間にセイルが壁を蹴り、塔へ登った。
結果は僅差で王立側の勝利だった。
実技後。
レオンは右手に魔力を集める。
5メートル。
崩れる。
もう一度。
今度は4メートル。
「悪くなってるじゃねえか」
ガルドが言う。
「同じ失敗じゃない」
レオンは右手を見る。
放つ瞬間、圧縮が解ける。
近距離では問題にならなかった部分だった。
遠くへ届かせるなら、飛ばす力ではなく、形を保つ方法が必要になる。
良ければブックマークしていただけると泣いて喜びます。




