第105話 見えない糸の見つけ方
実技後。
トーマは訓練場へ残り、レオンのゼロスレッド対策を説明していた。
「最初は糸を見ようとした。でも無理だった」
「ミナ以外にはほとんど見えないからな」
「だから君を見ることにした」
トーマはレオンの左手を指す。
「遠くへ伸ばす時、指先が固定先を追う。引く前に肩が少し止まる。あと、糸を張った場所だけ草や小石の動きが変わることがある」
自分では気づいていなかった癖だった。
「全部直すの?」
ノアが尋ねる。
「全部は無理だ」
レオンは答えた。
癖を消すことに集中すれば、今度は魔法そのものが遅くなる。
「なら、読まれても困らない使い方を増やす」
トーマが笑う。
「それは俺としては困るな」
翌日の実技。
レオンは最初からゼロスレッドを主力にしなかった。
セイルに先行させ、ユリアが進路を確保する。
ガルドが防衛へ入り、ミナとノアが負傷者役を回収した。
トーマはレオンの左手を警戒していた。
その分、別の場所を見る時間が減る。
「今!」
ユリアの氷が物資箱まで細い道を作る。
セイルが一気に駆け抜け、箱を確保した。
レオンは糸を使っていない。
トーマが気づいた時には遅かった。
「俺を見すぎたな」
「昨日の仕返しか」
実技後半。
今度はグランツ側が、王立側の救助を妨害する。
レオンは右手から短いゼロスレッドを伸ばし、自分の足元へ固定した。
左手では倒れかけた柱を支える。
複雑な操作を2つするのではない。
右手には、自分の身体を支えるだけの単純な役割を与える。
右手の糸は切れなかった。
左手で柱を持ち上げ、ガルドが負傷者役を引き抜く。
「昨日より安定してる」
ミナが言う。
「右手にやらせることを減らした」
熟練加速は、右手の習熟を早めている。
だが、左右へ同じ精度を求める必要はない。
それぞれに役割を与える。
左手は精密制御。
右手は単純な形成と固定。
その考え方は、次の魔法にも使える気がした。
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