第102話 約200年と約170年
交流2日目は、魔法史の合同講義だった。
教師が黒板へ、大陸中央部で発生した大規模魔力災害について書く。
王立魔法学院で使われている教本では、発生は約200年前。
原因は地下の魔力流が急激に乱れ、複数地域で魔力災害が連鎖したためと説明されている。
レオンも1年生で習った内容だった。
講義が終わると、エステルが不思議そうに手を上げた。
「年代が違います」
教室の視線が集まる。
「グランツでは、約170年前と習いました」
教師の手が止まった。
「版による差ではないのか?」
「いいえ。入学前から同じ年代です。それに、原因も違います」
エステルは自分たちの教本を開く。
グランツ魔法学院では、複数国家による大規模な魔法戦闘の末、魔力環境が崩壊したと説明されていた。
30年近い年代差。
自然災害と、戦争。
同じ出来事とは思えないほど内容が違う。
「どちらかが別の災害を指しているんじゃない?」
ノアが言う。
トーマが2冊の教本を並べる。
「被害地域はほぼ同じだ」
指で地図を追う。
3つの地方名と、消失した2つの都市。
そこまで一致していた。
「じゃあ、どっちが正しいんだ?」
ガルドが尋ねる。
エステルは迷わず答えた。
「調査すれば分かるでしょう」
王立魔法学院の教えを疑うわけでも、グランツを正しいと決めるわけでもない。
その態度に、レオンは少し意外さを感じた。
「教本を信じてるんじゃないのか?」
「信頼しているわ。でも、2つの記録が違うなら確認する必要があるでしょう」
「それなら同じだな」
レオンは言った。
授業後、両学院の生徒には課題が出された。
それぞれの学院で保管されている古い教本や年表を調べ、違いの原因を考える。
リゼットもSクラス代表として調査へ加わった。
「家の資料にも同じ災害の記録があるか確認してみるわ」
「持ち出せるのか?」
「内容によるわね」
資料室へ向かいながら、トーマがレオンに聞く。
「最近、こういう食い違いをよく見つけるのか?」
レオンは少し考えてから答えた。
「学院の外では、何度か」
「やっぱりか」
「やっぱり?」
トーマは歩きながら肩をすくめた。
「うちでもある。古い地図と今の資料が合わない場所が」
エステルが振り返る。
「トーマ。確認できていない話まで広げないで」
「だから確認するんだろ」
2人の学院だけの問題ではない。
そう考えるには、まだ早い。
だが、比較する材料はまた1つ増えた。
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