第101話 違う学院
地方実習から戻って2週間後。
Cクラスの教室で、担任が新しい予定表を黒板へ貼った。
「来週から10日間、グランツ魔法学院との交流実習を行う」
教室がざわつく。
グランツ魔法学院は王都西方にある学院で、王立魔法学院とは異なる教育課程を持つ。毎年一部の生徒を交換し、共同授業や実技を行っているらしい。
「今回は向こうがこちらへ来るんですか?」
ユリアが尋ねる。
「前半はな。後半はお前たちが向こうへ行く」
担任は続けて紙を貼った。
「評価対象は個人戦ではない。共同調査、救助、物資管理、模擬集落防衛。相手学院より多く敵を倒した者が勝つと思うな」
レオンは予定表を見た。
北東森林と地方実習で経験した内容に近い。
違うのは、今度は同じ目的を持ちながら、別の教育を受けた生徒と競うことだった。
交流初日。
学院正門へ、グランツ魔法学院の生徒たちを乗せた幌馬車が到着した。
継続して合同班に入る生徒は2人だった。
1人はトーマ・レイン。風属性で、実技より状況分析を得意とする男子生徒。
もう1人はエステル・ノルン。水属性の成績上位者で、学院の教本と規則を重視する女子生徒だった。
顔合わせを終えると、トーマはレオンの左手を見る。
「君が無属性のレオン?」
「そうだけど」
「ゼロスレッドを使うって聞いた」
「よく知ってるな」
「対抗実技の相手を何も調べずに来る方がおかしい」
トーマは悪びれず答えた。
隣でエステルがため息をつく。
「初対面で戦い方を聞かないで。失礼でしょう」
「どうせ明日には見る」
「そういう問題じゃないわ」
2人のやり取りに、ガルドが小さく笑った。
午後は合同講義だった。
同じ魔法について、両学院の教師が交互に説明する。
最初の違いは、発動手順だった。
王立魔法学院では、属性変換を安定させてから術式を形成することを基本とする。
グランツ魔法学院では、先に魔力の流れと形を作り、その過程で属性を定着させる方法も基礎として教えていた。
「順番が逆だな」
セイルが呟く。
「どちらでも発動できるのよ」
エステルが答える。
「術者によって向き不向きはあるけれど、グランツでは複数の方法を覚えるわ」
「じゃあ、王立の教えが間違ってるってこと?」
ノアが尋ねる。
「そうは言っていないわ。王立の方法は安定しやすいもの」
レオンは両方の説明を書き留めた。
違う。
だが、どちらも魔法は発動している。
地方実習で見つけた違いとは、少し性質が違った。
間違いではなく、別の正しさ。
それを知ることも、今回の交流実習の目的なのかもしれなかった。
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