⑴ だらしない時間の始まり
自宅に着いたのは、午前11時を過ぎていた。
私も明里も、昨日寝ていない。
お湯を入れて朝風呂に入った。
風呂から上がると、明里も帰って来た。
昼食用に、パックの寿司を買ってきてくれた。
「お疲れさま」
お互いに挨拶を交わす。
明里も朝風呂に入った。
私の部屋の遮光カーテンを開けて、レースのカーテンだけを閉めた。
明里は、冷酒と買ってきた寿司をワゴンに乗せて、私の部屋をノックした。
私も明里も風呂上りで、バスローブのみをまとった姿。
優しい光が射し込む部屋で、二人でお酒飲みながら今から寝るのだ。
……実に気持ちがいい。
だらしない時間の始まりである。
私と明里は並んでベッドに腰かけ、ワゴンをテーブルにして飲み始めた。
明里に訊ねた。
「社員旅行、どうでした」
「はい……ええ……男性社員に囲まれて……疲れました」
「ああ、宴会の席で、沢山の男性に囲まれていたよね」
「『彼氏いるんですか?』って聞かれて、『はい、現在お付き合いしている方がいます』って答えたら、『それは、まあ、彼氏の1人や2人、自分もその中の1人に加えて下さい』って、訳わかんないでしょう」
「ハハハ、すごいなぁ」
私は冷酒を飲みながら、明里を抱き寄せた。
「私が『その方と婚約しています』って言ったら『では、ここからはアディショナルタイムという事で』等と言い出して、別の方が『試合終了のホイッスルが鳴るまでは』と言い出して……」
「ハハハ」
「碧さんが見かねて、私を連れだしてくれました」
「なるほど」
明里も私と一緒に冷酒を飲んで、ほろ酔い気分になってる様だ。
……明里と、こうして、飲める日が来た。
こんな日が来るのを、待ちわびていた。
「おじさんの席を見たら、沢山の人に囲まれて楽しそうでした」
「ああ、元私のグループのメンバーが集まって来た」
「私も早く、その中に入りたいです」
「……そうですか」
……なんだろう、幸せな時間が、ゆっくりと流れている。
こんなに幸せで良いのだろうか。
小心者の私は、この幸せが不安になってしまう。
いや、明里は神様から愛されている。
この幸せは、神様も応援している。
……等と訳の分からない理屈で不安を消した。
そして何故か『大丈夫だ』といった気持ちになった。
やがて、ふわふわとした気分になってきた。
昨日、寝ていない事と合わせて、良い感じにお酒がまわって来た。
私がベッドで上向きに寝ると、明里は私の右側で横向きに寝た。
私は右手を明里の首から背中にまわし……そしてそのまま眠ってしまった。
次回:どうだろうか




