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英雄  作者: ゲシンム
第二章 抗えぬ欲
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この実況は興奮させるもの

「大波乱! 大波乱‼ 大波乱です‼‼」


 一人の大声が、マイクを通って控室に響き渡る。あまりにもうるさい声量に、それぞれの控室に居るメンバーたちは、無言で音量を下げた(グリンを除く)。


 一方、隣で直接その声を聞いたゼウスは、耳をキーンとさせていた。


「まさかまさかの大番狂わせ! たった一人の少年が、我々の予想を覆しました‼」


 興奮止まない状態でオタガミは声を出し続ける。それを横目に見ていたゼウスも、そんなに興奮することか? と、テンションが低い素振りを見せながらも、内心はドッキドキだった。


「グリンの超戦士シヨク。可憐な女兵士ラキア。清廉な騎士キユ。そして、謎多き科学者ネリム。我々だけでなく、皆さまもこの四名の内の誰かが優勝すると、予想を立てていたことでしょう」


 オタガミの言葉に、全員が共感する。そして、その話を切り出した瞬間、全員がなんの話題かを予想すると同時に、地球のメンバーたちは顔をにやつかせた。


「しかぁぁし! この四人の内、一人を打ち破った存在が現れました! これぞまさしく、『ジャイアントキリング』‼」


 メンバーたち、特にセッキは今か今かと拳を握り、貧乏ゆすりをしながら、画面を食い入るように見ていた。


「その少年の名前はぁぁぁ? 地球出身の少年、『白時空ぁぁぁぁぁ』‼」


「うおおおおおぉぉぉぉぉ!」


 名前が挙げられた瞬間、セッキは思わず声を上げる。ソファから腰を浮かし、自身のことであるかのようにガッツポーズを作って大喜びした。


「……やかましいな」


 視界の端にチラチラ映るセッキを見て、ソーシャに淹れてもらったお茶を飲みながら、カーシェスは小さな文句を垂れた。


「果たして誰が予想できたというのでしょうか⁉ 仕掛けられた無数の罠を掻い潜り、ロボットの大群を相手取り、超ド迫力の攻撃を防いでの逆転勝利! 彼こそ、今催しのダークホースと言っても過言ではないでしょう!」


 オタガミが一旦ここで、言葉を閉める。なにかを察したゼウスは、解説としての衝動に駆られ、自身の思うがままに言葉を紡いだ。


「僕も彼がこれほどできるとは思ってもいなかったね。地球には『男子、三日会わざれば刮目して見よ』って言葉がある。これは、たった三日だけでも人は成長する、って言葉なんだけど、彼の場合はそれをすっ飛ばして、三時間くらいで成長しちゃったね」


 ゼウスの中で、最上級のべた褒めである。それほどまでに、空の活躍は予想外だったし、嬉しすぎる誤算だった。


「少年の成長が早すぎる、ということですね! 確かに、急激な成長がこの結果を生み出したのかもしれません! しかし、彼はなぜ、ここまで成長が早いのでしょうか?」


 オタガミはマイクをゼウスに近付ける。ゼウスの前にもマイクはあるというのに、これで二回目だ。


 だが今度は、先ほどとは違った奇妙な圧を感じた。それは、活躍したのが、先ほども話題に挙がった空だからだろうか?


「……」


 神はそのことに触れず、ただ流れに身を任せた。


「そればっかりは僕にも分からない。人間の成長は、時として早いものだ。神の目にも止まらないほどにね。戦いの中で成長を見出したのかもしれないし、あるいは誰かとの出会いが彼を成長させるきっかけになったのかもしれない。彼の中でどのような変化が起こったのかは分からないけど、少なくとも、戦う前よりは強くなっているよ。遥かにね」


 ゼウスの視線はモニターに移る。空が路上を走っている姿を見た。


 保護者目線で見つめるゼウスを見つめながらも、オタガミは自身の役割を全うする。


「なるほど…… 人間の成長がこのような場面で見られるとは。私も神として嬉しい限りです! ……おっと! 肩入れするのはいけませんね。我々はあくまでも中立の立場ですから。それでも、私たちにこう言わせしめたのは、間違いなく彼の労力あってこそでしょう!」


 若干の変わり種実況を見せつつも、見事に上手くまとめ上げ、オタガミは最後のまとめに入った。


「さて! ここから先はますます戦いに熱が入ることでしょう。既に、最終決戦のような戦いを繰り広げているところもありますが、結果は未だ予測できない場面にあります! 果たして、勝利の栄光を手にするのは絶対王者か⁉ はたまた、突然現れたルーキーか⁉ 舞台は、最終局面に入ろうとしています!」


 マイクのスイッチが切れた。


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