サイドストーリー)最強対7人の挑戦者
「おぬしの技は見切った! 今度はこっちの番じゃ!」
ロリはレイピアを構え、突撃の準備をする。
「……」
シノブは、次なる一手のために印を結び始めた。
「勝負は、ここからですよ」
額に汗を、腹には血を流しながらも、ライナは相手を煽る。
「まじ、しんどすぎてウケるー」
ギャルは現状を嘆きながらも、応戦の構えを取った。
この場に居る誰しもが、ここからが本格的な戦闘になることを悟った。誰しもが、目の前にいる相手にこそ全力を尽くすべきだと判断した。
――ドカァァン‼
しかし、それは間違いだったとすぐに考えを改めた。本当に戦うべき相手は、全員が共通して、同じ人物を思い浮かべた。
「ドタバタとしていると思い飛んで来てみれば、随分と面白そうなことになっているな」
重圧を感じる。戦っている相手も、自身も、小物だと思えてくるほど凄まじい圧だ。
「……すみません。休戦にしませんか?」
これからが本番だということで意気込んだギャルを、ライナは簡単な提案でいなした。
「この高まった感情はどうすればいい?」などと言うこともなく、ギャルはすぐに同意した。
「どうやら私たちが戦うべき相手は、」
二人して煙の上がる方向を見る。そこからのそのそと、圧倒的なオーラを放つ存在が現れた。
「あの方のようですよ?」
堂々と。そう、堂々と、シヨクは皆の前に姿を現した。その瞬間、全員の敵が彼一人に定まった。なんの合図もなく、なんの掛け声もなしに、全員が共通の敵として認識したのだ。
「ああ、すまない。どうやら戦いを邪魔してしまったようだな」
言葉だけで重みが違う。放たれた言葉は空気を伝い、全員の皮膚を振動させる。戦う前に全員が集まった時とは異なる、強者としての圧がそこにはあった。
「せめてものお詫びだ。俺一人で全員の相手をしよう」
その言葉を聞いた瞬間、全員の額に汗が流れると同時に、同じ感想を抱いた。「戦場でこいつの前に立つことが、これほど恐ろしいことだとは」、と。
「……お兄さん。あいつの弱点、分かる?」
少し震えた口調で、ギャルはライナに希望を聞いた。
「……『傲慢』。『直線的』。『寛容』 ……だね」
傲慢。己を最強と信じ、力にうぬぼれている。それだけの結果を残しているのだから仕方がない。
直線的。不意打ちや奇襲を好まない。戦う時は、常に正面突破。真っ向勝負でねじ伏せる。
寛容。逆に、不意打ちや奇襲を受けることには、なんの疑念も抱かない。卑怯、インチキ、集団戦法、なんでも来いだ。
「OK。よーするに、」
ギャルの視線がシヨクに移る。見ただけで震えが止まらないほどだ。
「『ない』ってことね」
弱点と共に、勝算も、希望もないことを悟った彼女は、全て含めてそれだけを述べた。
「へぇ。『寛容』なのか。それじゃあ僕も、戦闘に加えさせてくれないかな?」
綺麗で透き通った声がそのエリアに響いた。シヨクのように圧がある声ではない。しかし、その声には「芯」があった。
「……できれば、貴殿とは一対一の戦いをしてみたかったものだが、それでも構わない」
芯のある声に、圧のある声が返答される。比較してみると、こうも雰囲気が出るものなのかと、二人の声を聞いたその場に居た者全員が思った。
「それは申し訳ない。君とサシでやるのはまた今度にしよう」
圧のある声を聞いても、少しもぶれない美声。足音は迷うことなくこちらに近付く。その姿を見た瞬間、誰しもが安堵の笑みを浮かべ、僅かな勝算を見出した。
「だけど今回は、全力で勝ちにいかせてもらうよ!」
皆の先導に立ち、凶悪な敵を前にした勇者キユは、高らかに宣言した。
「それも面白そうだ」
キユの真っ直ぐな瞳を見て、シヨクは不敵に微笑んだ。
ここに、ほぼ全てのメンバーが集う。シヨク、キユを筆頭に、リープの軍人一名、ギャル兵士、ロリ兵士、ライナ、シノブ、そして、遠くからスコープ越しにシヨクを覗くガンナー、レセント。
今、一対七の壮絶な戦いが幕を開けようとしていた。




