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英雄  作者: ゲシンム
第二章 抗えぬ欲
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サイドストーリー)最強対7人の挑戦者

「おぬしの技は見切った! 今度はこっちの番じゃ!」


 ロリはレイピアを構え、突撃の準備をする。


「……」


 シノブは、次なる一手のために印を結び始めた。


「勝負は、ここからですよ」


 額に汗を、腹には血を流しながらも、ライナは相手を煽る。


「まじ、しんどすぎてウケるー」


 ギャルは現状を嘆きながらも、応戦の構えを取った。


 この場に居る誰しもが、ここからが本格的な戦闘になることを悟った。誰しもが、目の前にいる相手にこそ全力を尽くすべきだと判断した。


――ドカァァン‼


 しかし、それは間違いだったとすぐに考えを改めた。本当に戦うべき相手は、全員が共通して、同じ人物を思い浮かべた。


「ドタバタとしていると思い飛んで来てみれば、随分と面白そうなことになっているな」


 重圧を感じる。戦っている相手も、自身も、小物だと思えてくるほど凄まじい圧だ。


「……すみません。休戦にしませんか?」


 これからが本番だということで意気込んだギャルを、ライナは簡単な提案でいなした。


 「この高まった感情はどうすればいい?」などと言うこともなく、ギャルはすぐに同意した。


「どうやら私たちが戦うべき相手は、」


 二人して煙の上がる方向を見る。そこからのそのそと、圧倒的なオーラを放つ存在が現れた。


「あの方のようですよ?」


 堂々と。そう、堂々と、シヨクは皆の前に姿を現した。その瞬間、全員の敵が彼一人に定まった。なんの合図もなく、なんの掛け声もなしに、全員が共通の敵として認識したのだ。


「ああ、すまない。どうやら戦いを邪魔してしまったようだな」


 言葉だけで重みが違う。放たれた言葉は空気を伝い、全員の皮膚を振動させる。戦う前に全員が集まった時とは異なる、強者としての圧がそこにはあった。


「せめてものお詫びだ。俺一人で全員の相手をしよう」


 その言葉を聞いた瞬間、全員の額に汗が流れると同時に、同じ感想を抱いた。「戦場でこいつの前に立つことが、これほど恐ろしいことだとは」、と。


「……お兄さん。あいつの弱点、分かる?」


 少し震えた口調で、ギャルはライナに希望を聞いた。


「……『傲慢』。『直線的』。『寛容』 ……だね」


 傲慢。己を最強と信じ、力にうぬぼれている。それだけの結果を残しているのだから仕方がない。


 直線的。不意打ちや奇襲を好まない。戦う時は、常に正面突破。真っ向勝負でねじ伏せる。


 寛容。逆に、不意打ちや奇襲を受けることには、なんの疑念も抱かない。卑怯、インチキ、集団戦法、なんでも来いだ。


「OK。よーするに、」


 ギャルの視線がシヨクに移る。見ただけで震えが止まらないほどだ。


「『ない』ってことね」


 弱点と共に、勝算も、希望もないことを悟った彼女は、全て含めてそれだけを述べた。


「へぇ。『寛容』なのか。それじゃあ僕も、戦闘に加えさせてくれないかな?」


 綺麗で透き通った声がそのエリアに響いた。シヨクのように圧がある声ではない。しかし、その声には「芯」があった。


「……できれば、貴殿とは一対一の戦いをしてみたかったものだが、それでも構わない」


 芯のある声に、圧のある声が返答される。比較してみると、こうも雰囲気が出るものなのかと、二人の声を聞いたその場に居た者全員が思った。


「それは申し訳ない。君とサシでやるのはまた今度にしよう」


 圧のある声を聞いても、少しもぶれない美声。足音は迷うことなくこちらに近付く。その姿を見た瞬間、誰しもが安堵の笑みを浮かべ、僅かな勝算を見出した。


「だけど今回は、全力で勝ちにいかせてもらうよ!」


 皆の先導に立ち、凶悪な敵を前にした勇者キユは、高らかに宣言した。


「それも面白そうだ」


 キユの真っ直ぐな瞳を見て、シヨクは不敵に微笑んだ。


 ここに、ほぼ全てのメンバーが集う。シヨク、キユを筆頭に、リープの軍人一名、ギャル兵士、ロリ兵士、ライナ、シノブ、そして、遠くからスコープ越しにシヨクを覗くガンナー、レセント。


 今、一対七の壮絶な戦いが幕を開けようとしていた。



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