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英雄  作者: ゲシンム
第二章 抗えぬ欲
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人を殺すための罠

「……」


 空は黙々とロボットを倒し続ける。トラップを回避しつつ、敵の攻撃を避け、間合いに入って潰す。これを、永遠と繰り返していた。


「数が多い…… ネリム(彼)は一体どれほどのロボを用意したというのでしょうか⁉」


 倒しても減るように見えていない白の波を見て、ギハンはただ小言を言うことしかできなかった。


「んなこと考えたってしょうがねぇだろ! 黙ってこれを切り抜ける策を考えろ!」


 と、言いつつ、リエガも戸惑いを隠せない様子。尽きることなく押しよせるロボットの数々を前に、文句を垂れることしかできなかった。


 なにもできない、という点においてはギハンと同じだったが、戸惑う気持ちに共感できるギハンはそのことを責め立てたりはしなかった。


「はぁ、はぁ、はぁ、」


 懸命に頭を使うリエガとギハン。しかし、それ以上に働いている者がいた。空ではない。メイである。


「メイ、大丈夫?」


 足りない分のエネルギーを懸命に練り続けるメイを見て、リギラは心配そうに声を掛けた。


「ぜぇ、はぁ。もう! 全然大丈夫じゃないよ! ぜぇ。倒しても倒しても湧いてくるし、いつまでこんなこと続ければいいの!」


 文句を垂れながらも、空のために頑張ってエネルギーを練り続けた。


 だがそれでも、ロボットの数は減らない。むしろ、罠の方が先に尽きそうな勢いだ。


「一気に叩きこむのもダメ。一体一体が個別に動いているから、大本を倒すという選択もできない。やはり、地道に数を減らしていくしかないのでしょうか?」


「最悪、メイのエネルギーが尽きる分にはいい。まだ俺たちのエネルギーが残ってる。だが結局、この数をなんとかしないことには変わらねぇ」


「頑張って、メイ!」


「ふんぬぬぬぬぬ……!」


 それぞれがそれぞれの役割を果たし、ロボットを一体ずつ確実に減らしていく。エリアに放送が流れのはその時だった。


『あーあー。聞こえとるかね?』


 この声は他の誰でもない、ネリムの声だ。空はロボットに攻撃を仕掛けながら、彼の声を耳にした。


『ロボットでおぬしを倒せればよいと思ったんじゃが、やはりそう上手くはいかないようじゃのう』


 モニター越しに、空が躍動する姿を見て、確信を得ながらネリムは語った。


「ったりめぇだ。こんなので空がやられるかよ」


「……まぁ、打開策がないのも事実でしたがね」


 強がるリエガに、状況をきちんと把握しているギハン。どちらもロボットの動きを意識しつつも、突然流れ始めた放送に、警戒心をさらに強めていた。


『そこでじゃ。わしのとっておきをおぬしらで試そうと思っての』


 二人の予想は的中していた。このような放送をするくらいには、きっとなにかとんでもないものが来るに違いない、と。


 ただ、そのとんでもないものがなにかまでは想像が付かなかった。


『「これ」はわしがここに来て一から作り上げたオリジナルでの。ただ、規模がでかすぎるが故に、起動までに時間が掛かってしまうのじゃよ』


「なんだ? ロボットを模して、とんでもなくでかいのでも作ったか?」


 煽り言葉を放つリエガだったが、その額には冷汗が流れ出る。内心は穏やかではない。


『それがようやく起動しての。今からおぬしらにお見舞いしてやろうと思ってアナウンスしたわけじゃ』


「……黙ってやればいいものを。律儀な方ですね」


 言葉ではそう言いつつも、ギハンの心は不安の気持ちで溢れかえっていた。


 人前に決して姿を現さず、トラップやロボットを駆使して敵を倒そうとしたネリムが、ここにきて突然、自身の手の内を明かしたのだ。そうすることで発動するトラップなのか、注目をアナウンスに引き付けるための罠なのか。それとも、先に忠告を入れないほど、やばい代物なのか。


 次の瞬間、通路や通気口からガスが大量に流れ込んできたのだ。


「! 空、火を使うのをやめてください!」


 ギハンが言い終わるよりも前に、空は火を収めて別の属性でロボットを倒していた。


 そんな一同を差し置いて、ネリムは不穏のアナウンスを続けた。


『……できることなら、おぬしが苦しまぬよう即リタイアすることを願う』


 アナウンスはそこで終わった。なにか来ると思ったが、なにもない。しかし実体のある空だけは、このエリアに異変が起こっているのを真っ先に感じ取った。


 温度が上昇しているのだ。


「……なにもこねぇ」


 それを実体のない種族たちは感じ取ることができなかった。


「油断しないで。必ずなにか来ます。必ず……!」


 警戒心を煽るも、その「なにか」が分からず、不安は募るばかり。


 次の瞬間、大量の炎が上空から降ってきた。炎はロボット共々、その場に居たすべてを焼き払う。


 それだけでは終わらない。大量の炎は大量のガスに引火し、大爆発を起こす。


 灼熱×爆発。最大規模の火炎の地獄が完成した。


 その光景を安全な部屋で見ていたネリムは、辛そうな顔をしていた。


「わしが特性で作った、超火炎放射器と、引火しやすいガスじゃ。上空に設置した火炎は、バレることなくすべてを焼き払い、ガス爆発で跡形もなく粉砕する。この惑星の建造物は頑丈じゃからな。逃げ場のない爆風は余波を逃がすことなくターゲットに集中する」


 ネリムはモニターを見た。そこには煙の黒と、炎の赤しか映っていなかった。空の様子など分かるはずもない。


「……本来、この策はシヨクに向けて作ったものじゃった。じゃが、小童わっぱ。おぬしは想像以上に強すぎた。この作戦を他に使わなければならないほどにな」


 モニターを見る。炎はまだ続いている。


「子供に向ける火力ではないのう……」


 モニターを見る。焼野原だ。


「……胸が痛いわい」


 ネリムはただ静かに、炎が尽きる時を待った。敵である空に憐れみと、救いを祈りながら。


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