どう捉える?
―惑星セス―
「な、なにやってるんだあいつら⁉」
一部始終を見ていた女兵士は、控室で声を上げた。他の兵士たちを動揺を隠せていない。彼女たちの下には会話の内容も、リタイア宣言も届いていない。
彼女たちの目に映ったのは、仲間たちが敵と握手を交わす姿ただそれのみである。軍人たちのリタイア宣言を聞いたのは同じ所属のリープ人のみで、他の惑星の者はその限りではないのだ。
「おそらく、一時的な協力関係を結んだのだろう」
驚く兵士たちを他所に、その者は分析した自身の意見を語る。彼女こそセス軍の頼れるリーダー、ラキアである。彼女の口調は気を緩めた時に仲間たちの前に見せるそれではなく、女兵士のリーダーとしての毅然としたものだった。
「正気ですか⁉ 私たちの惑星が今までどれほど多くの侵略者に攻め込まれて来たか、先輩たちが一番分かっているはずですよね⁉」
生まれが他よりも遅かったであろう女兵士はラキアに詰め寄る。しかし、ラキアは彼女の言葉を耳にしても、モニターから目を離そうとはしなかった。
「分かった上での選択だろう。表情から察するに脅されたわけではないだろうが、それでも他の惑星に対して強い警戒心を抱く彼女たちがその道を選び抜いたんだ。ならば、彼女たちの意思を尊重しようじゃないか」
「隊長が言うのなら、まぁ……」
ラキアに丸め込まれ、若い女兵士は黙り込んだ。その子の方を見ると、まだ少々不満が残る様子。それでもなんとか納得してくれたことに対して、ラキアは安堵の笑みを浮かべた。
そして、視線は再びモニターへ。
「……」
ラキアは深く考え込んだ。張り巡った思考の末、辿り着いたのは一つの考察。
(……ネリム殿。これは貴殿の入れ知恵か? 彼女たちの心を動かすことなど、私でもそう容易いものではない。彼女たちの心境を知った上でこの作戦に乗り出したというのなら、やはり貴殿は侮れないな)
ラキアはただ一人、ネリムの思慮深さに敬服し、同時に警戒心を強く抱いた。
―惑星リープ―
「……と、言うのがわしの伝えた内容じゃ」
ネリムは作戦の全貌を控室の軍人たちに説明した。それを聞いた軍人たちは度肝を抜かれたような表情を浮かべていた。
「まさか、そこまで考えていたとは。セスの心情を読み解き、最適な言葉選びで篭絡するとは。その心眼、御見それしました」
軍人の一人はラキアとお内容に敬服の意を示した。当然、彼女と違って警戒などは持ち合わせていない。
「なぁに。たまたまじゃよ。偶然わしの作戦が上手いこと嚙み合っただけにすぎんわい」
ネリムは謙遜する。その謙虚な姿勢は、他の軍人たちからの評価をさらに上げた。
「流石です!」
「すごいですネリム殿!」
軍人たちからの熱いエールを軽く流し、
「ほれほれ。誉めるのはそれくらいにして、早く赴く準備をしなさい。あの三人が送還されたらわしらは残すところ四人のみ。つまり、全員出撃する必要があるのじゃぞ」
それを聞いて現実に引き戻された一同は、急いで支度を始めた。
「ふぉふぉふぉ」
慌てる軍人たちを横目にネリムは視線をモニターに戻す。それぞれのモニターには、セスの兵士と談笑する三人の姿があった。
(……この作戦がわしの発案であることを、ラキア殿はおそらく気が付いているだろう。モニターの向こうで仮同盟が結ばれたこともな。やれやれ。話が早いのは助かるが、頭の回る敵を相手取るのは骨が折れるわい)
ネリムはただ嘆いた。これは彼女への最大の敬意であり、警戒の表れでもある。
「コード番号07番」
「呼んだっすか?」
ネリムが番号を呼ぶと、それに合わせて女軍人が近くに駆け寄った。彼女こそ最初に出場した三人目の軍人。セッキに負けた舐め口調の女だった。
「良い場所は見つかったのかのう」
ネリムが確認を促すと、
「ええ。とっておきの場所が」
女軍人は理解したように答えた。
「ならその場所を教えてもらおう。準備が整い次第、わしも出撃する」
ネリムがそう言うと、女軍人は小さく頷いてマップを広げた。
「ここっす」
彼女は細い指でマップ上のある一点を指示した。
「……」
その場所をネリムは黙って見つめ、確認した。
「よし。では、行くとするかのう」
ネリムが一言発すると、
「「「はいっ‼」」」
それに呼応して出撃する三名が返事をした。
元気の良い返事を聞きながら、ネリムは再度モニターを見た。そして一つ、思いを馳せる。また、この時、ラキアも同じことを思っていた。
(お主がどれだけの手練れであろうが関係ない)
(あなたがどれほどの策を弄しようとも関係ない)
((最後に勝つのは))
(わしらじゃ)
(私たちだ!)
それぞれの思惑を胸に、惑星代表争奪戦は中盤戦へと移行する。




