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英雄  作者: ゲシンム
第二章 抗えぬ欲
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出てこない言葉

「……」


「……」


 邪魔者がいなくなって二人、空とラキアはじっとお互いを見つめていた。


「……」


「……」


 二人とも、話したいことはたくさんあるだろう。だがその口が開くことはない。


 勝ったよ。


 勝ったな。


 君のおかげだ。


 凄い活躍だった。


 力が湧き出てきたよ。


 優勝おめでとう。


 約束は守る。


 約束は守ってくれるか?


 君たちを絶対に助ける。


 信じている。


「……」


「……」


 伝えたいこと。話したいことはいくつもある。なのに、喉は震えない。口も動かない。眼球さえも、じっと見つめたまま働きを失っていた。


「?」


 周りの者たちも、頭に疑問符を浮かべる。二人はなぜ喋らないのか? 誰しもが同じ疑問を抱いた。


(……どうしよう)


 二人のうち一人、ラキアはこの状況に困っていた。表には出さないが、ものすごく困っていた。


(ミサが変なことを言ったせいで、意識しちゃってなにも言葉が出てこない!)


 思い出す、ミサの発言。「好き」だという言葉。


 自分としてはそのようなつもりはない。彼は信頼できる男だが、この感情が「恋愛感情」かどうかは別の話だ。


 もちろん、人としては好きだ。尊敬に値する。それでも、異性としての好きかどうかを問われると、微妙なところだ。


(彼もなにも言わないし、なにか言った方が良いわよね?)


 このままではなにも進まない。だが、彼には確かめるべきことがある。


 どうやって私たちを助けるのか。


「……」


 彼女は意を決して、質問しようとする。場の空気を振り払い、集まる視線の中、彼女は口を開き始めた。


「……あの……」


――パチッ、パチッ、パチッ。


 拍手音が鳴り響いたのはその時だった。一定のリズムで叩かれる手拍子が、おかしな空気感の中、全員の耳に入った。


 その後すぐに、コツコツと地面を叩く足音が聞こえ、全員が音のした方に顔を向けた。


 するとそこには、すべてを見ていた神様が、笑みを浮かべてこちらに近付いていた。


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