出てこない言葉
「……」
「……」
邪魔者がいなくなって二人、空とラキアはじっとお互いを見つめていた。
「……」
「……」
二人とも、話したいことはたくさんあるだろう。だがその口が開くことはない。
勝ったよ。
勝ったな。
君のおかげだ。
凄い活躍だった。
力が湧き出てきたよ。
優勝おめでとう。
約束は守る。
約束は守ってくれるか?
君たちを絶対に助ける。
信じている。
「……」
「……」
伝えたいこと。話したいことはいくつもある。なのに、喉は震えない。口も動かない。眼球さえも、じっと見つめたまま働きを失っていた。
「?」
周りの者たちも、頭に疑問符を浮かべる。二人はなぜ喋らないのか? 誰しもが同じ疑問を抱いた。
(……どうしよう)
二人のうち一人、ラキアはこの状況に困っていた。表には出さないが、ものすごく困っていた。
(ミサが変なことを言ったせいで、意識しちゃってなにも言葉が出てこない!)
思い出す、ミサの発言。「好き」だという言葉。
自分としてはそのようなつもりはない。彼は信頼できる男だが、この感情が「恋愛感情」かどうかは別の話だ。
もちろん、人としては好きだ。尊敬に値する。それでも、異性としての好きかどうかを問われると、微妙なところだ。
(彼もなにも言わないし、なにか言った方が良いわよね?)
このままではなにも進まない。だが、彼には確かめるべきことがある。
どうやって私たちを助けるのか。
「……」
彼女は意を決して、質問しようとする。場の空気を振り払い、集まる視線の中、彼女は口を開き始めた。
「……あの……」
――パチッ、パチッ、パチッ。
拍手音が鳴り響いたのはその時だった。一定のリズムで叩かれる手拍子が、おかしな空気感の中、全員の耳に入った。
その後すぐに、コツコツと地面を叩く足音が聞こえ、全員が音のした方に顔を向けた。
するとそこには、すべてを見ていた神様が、笑みを浮かべてこちらに近付いていた。




