武器に乗せる思/重い
「同士たち…… 救うべき、我が家族……」
小さな言葉で彼らを憂う。過ちに気が付いた気分だった。
「それがお前の助けたい人たちなんだろう? それを忘れていたお前に、俺の刃は防げない」
「! しまっ、」
「遅い」
空の話術によるものか。いいや。これはシヨクの気持ちの問題。これまで、故郷の者たちを蔑ろにした彼への罰だ。
シヨクにできた一瞬の隙を突き、空は体に大きな切り傷を入れる。空が瀕死に追いやられた時の再現のように、同じ形で。
「ガハッ」
血反吐を吐き、その場に倒れ込む。傷口から赤い血を垂れ流し、硬いアスファルトに色を付けた。
そんなシヨクを見つめ、空はさらに言葉を上乗せした。
「俺の剣が重いのは、助けたい人たちの分の思いも乗せているからだ。自分のためだけに振るう刃じゃ、俺の攻撃を防ぐには軽い」
「……」
「これが、俺の『覚悟』だ」
返す言葉もない。空の言う通りである。
自身の思うがままに剣を振るい、戦い、己の誇りを優先してきた。
母国のためだなんだと言っても、結局は強い者を彷徨い求めていただけ。全力を出せる相手が欲しかっただけだった。
「……貴殿の言う通り、俺は誇りを見失うあまり、大事なことを見失っていたのかもしれん」
言葉で負けた。誇りも負けた。覚悟も負けた。勝てる自信があった実力でも負けた。
だが、
「……まだ、間に合うだろうか」
負けられない。倒れてなんかいられない。誇りよりも大事にすべきものを見つけた今、ここで諦めることは許されない。
ボロボロの体に力を入れ、幹のような足で体を支え、ふらつきながらも立ち上がる。
「間に合わない。間に合ったとして、俺がそれを食い止める」
容赦なく、言葉の刃でシヨクを刻む。
「助けたい人がいるから、か?」
「そうだ」
間断なく答える。迷いがない。言葉も、立ち姿も、その目も。
シヨクは静かに笑った。
「……なるほど。これが本当の『強さ』か」
シヨクは体にグッと力を込めて、最後の戦いに挑もうとしていた。
体はボロボロ。気魄もない。オーガ化は辛うじて保てている程度。
それでも、これまで以上の力が出せそうだった。
「貴殿、名はなんと言ったか」
最後の戦いの前、シヨクは彼の名前を聞く。最強の相手、我がライバル。そして、思いの力を知る者の名を。
「空」
名を名乗る。双剣をシヨクに向け、
「白時空だ」
名を名乗る。その名を聞いて、シヨクは口角を上げた。
「そうか。空というのか」
シヨクはガツンと拳を合わせ、ボロボロの体に鞭打った。
「礼を言おう、小さな戦士、空よ。貴殿のおかげで、俺のなすべきことが見えた」
空を睨み、戦う意思を見せる。戦士としてではなく、一人の思いを背負う者として。
「貴殿に勝って、約束された明日を我が部族に」
決意を口に、拳を構える。ボロボロな体に似合わず、晴れやかな顔つきだった。
「させない。俺も助けたい人がいるから」
双剣をグッと構え、口に出す。思い浮かべたのは一人の少女。空が戦うのは、地球を救うためでも、なにものかになるためでもない。ただ、彼女を救いたいがためだった。
「いくぞ」
「……」
二人の思いを掛けた最後の戦いが始まった。




