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中立の喪失

 ラギ・イニシエンとレアル・グリードは<無知の国>へと向かっていた。その目的は、世界の壁であり、中立の管理者であるフォルフルゴートを倒し、この世界の核である<零の映写機希構>に介入し<世界転生システム>を止めること。


「世界の都合で、今の世界の人々の未来が失われるのは、許せないからな」


「本当にそう思ってるなら。もっと出来たことあったんじゃないの? いつも思うけどアンタは甘過ぎる」


 レアルの思想は違えど、行き着くところはイニシエンと同じ結果を求めている。だからこそ、ありとあらゆる手段を尽くすのと、出来うる手段を尽くすのでは、大きく違いが出てしまうというものだ、


「ハッハッハ! 俺様は強欲だからな。何かを切り捨てることは出来ないし、その全てが欲しいんだ。それにな、俺にはお前みたいに、仲間を道具扱いすることなんて出来ないんだよ」


「仲間ねぇ、使い潰せる道具と比べて、どっちの方が有能か、少しは考えた方がいいと思うよ。……世界を変えない限り、終わり続けるんだよ、未来を思うなら、今を切り捨てる覚悟をしないと」


 理想を夢見るイニシエンと、現実を見ているレアルの隔たり。望む結果が同じものなのに、今まで足並みが揃わないことが多々あったのは、そういう所である。頑固なエンシェントに、秘密主義な気質のメビウス、 中々管理者同士が連携するのは難しい。


「俺だって解ってる。けどな、そこまで解っていたとしても、何かを捨てることはできない。それに、俺は邪悪の管理者なんだ。一般的に間違っている事だとしても、それを押し通さない道理は無いだろ?」


「まぁ良いけど、アンタはいつか痛い目を見ると思うよ」


「安心しろ。俺は毎回痛い目を見てる。民を守れないのは、俺の絶望だ……、さて、フォルフルゴートは何処だ?」


 イニシエンはこれ以上この話をしたくなかったと言うのもあるが、本当に見当たらないのだ。中立の管理者フォルフルゴートは、ドラゴンであり、中々の巨体だ。色も相まってかなり目立つ筈だが、どうしても見つからない。


「おかしいな。アイツは、お気に入りの人間が死んで、今まで見ないくらい意気消沈してたから、動く気力なんて無いと思ったんだけど」


「お気に入りの人間? なんだそれ」


 イニシエンの知っているフォルフルゴートは、何事にも無関心な管理者である。だからこその、この反応。一体どんな気の迷いがあったのかと、考えさせられるほどの事なのだ。


「フォルフルゴートの目の前で、世界の異常に巻き込まれて死んでったよ」


「どんな奴なのかは知らないが、そりゃショックだろ」


 流石にその境遇には、イニシエンも同情してしまう。こちらの考えを断固として聞き入れてくれず、結局倒しに行く相手だったとしても、それはそれであり、これはこれである。レアルはバカな事をしてるな位にしか考えていないだろうが。


「ステラとか言う人間だったよ」


「ステラ? 要塞の帝国の人間じゃないな」


「無知の国の人間だよ。……というか、アンタ。もしかして自分の所の人間の名前、全員把握してるとか言わないよね?」


「王の役目は民に道を示す事だ。相手の事を知らないのに、どうやって道を示すんだ?」


 そんなイニシエンに、レアルは呆れている。圧倒的に手間が多く、そして利点も殆ど無いようなことを、どうして進んで行うのか。そんな事をしている余力があるのならば、他に違うことを出来た筈だと思ってしまうのだ。


「アンタはそんな様子だし、エンシェントはカチカチの石頭だし、メビウスは不気味だし、どうしてアタイの同僚は一癖も二癖もあるんだか」


 自分の事は棚に上げて、文句を言いながらもフォルフルゴートを探すのだが、やっぱりどうしても見つからない。やっと何かを見つけたと思えば、ただの白竜だったりする。


「よし、あの白竜に聞いてみるか。ドラゴン繋がりでなんか知ってるだろ」


「……その安直な脳みそはどうにかならないの?」


 レアルが何かを言っているが、そんなものは聞こえなかった事にして、イニシエンは白竜、リア・メキアの方へ向かう。何かを知っていればいいのだが。


「アハハハ、まさか、まさかね、最後の、最後に、こんな手段で、私を貶めるとはね……」


 こちらの存在にも気づいていないようで、ぶつぶつ何かを呟いている。先ほどレアルに頭を心配されたイニシエンであったが、そんなことより、こいつの頭を心配するべきだと思ってしまう。


「おい、そこの白竜。俺の言葉は解るか?」


「……。おやぁ? 邪悪の管理者様ではありませんか? 誰かをお探しですかね?」


 声をかけてようやく気づいたらしい白竜は、異様に腹立つ口調で、確信しているかのように答える。もしかしたら、フォルフルゴートの事を知っているのかもしれない。


「そう聞くって事はだ。お前はフォルフルゴートの居場所を知っているんだろ?」


「いえいえ、居場所は知りませんとも、居場所はね?」


「それなら何を知っていると言うんだ」


 話しかける相手を間違えたと、後悔するイニシエンであったが、最早今更である。何かは知っているらしいので、それを聞き出さない事には、割に合わないというものだ。


「私が知っているのは、貴方を拒絶……!?」


 イニシエンは咄嗟に拳を突き出してしまった。突き出された拳は、距離という概念や、防御の権限というものを全て無視して、リアの頭に直撃し、そのまま気絶させた。そして、身体が動いてしまったのには理由がある。


「あの白竜から、フォルフルゴートの力を感じた……。一体、何が起きているんだ……?」

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