管理者達の対話
イニシエンは〈救済の島〉の結界を突き破り、メビウスの居そうな場所へと移動する。島の中心には神殿のようなものがあり、そこに居るんじゃないかと勘だけで選んだのだが、どちらかというと来ることを予測して待ち構えていたようでもあった。何にしても、話を聞いてみる以外にやることはない。
「おい、メビウス。お前は何か知ってるんじゃないか?」
「貴様は、強引に乗り込んできて、何を問うのかと思えば……。私が何かを知っているとでも思うのか?」
メビウスはあまり表情には出していないが、ただでさえ悪い目付きを更に悪くして相当に怒っているようだ。だからと言ってイニシエンが引き下がる理由にはならない。この場所はあらゆる生命に変調を起こした謎のエネルギーの影響を受けていないようだし、それについて聞き出さなくてはならないのだ。
「こんな所に引きこもって、しかも、ここの人間は死んでない。何か知ってるとしか思えないだろ。こんな強固な結界まで用意してまで、何を企んでいるんだ」
「私は、力の究明をするためにここに留まっていただけだ。言っておくが、ここの人間が生き残っているのは、その過程による偶然とだけ言っておく。そもそも、この結界は私が用意したものではない」
その言葉にイニシエンは信じられないという思いを抱く。メビウスの力であればこれだけ強力で広範囲の結界を用意する事も出来るだろう。しかし、これだけの結界を長時間維持する事の出来る存在は他に知らない。嘘かとも思ってしまうが、天使は偽りを話す事は無い。
「お前の従者が用意したのか? こんなに強力な結界をか?」
「それも間違いだ。この結界は、未知の力を使い、構成している。私達は、その力の道筋を誘導しているに過ぎない。だが、貴様が余計な事をしてくれた為に、たかだか力の誘導如きに、苦労する事になったがな」
どうやらメビウスの怒りは収まらないらしい。天使にしては悪すぎる目付きで睨みつけてくるが、その言葉の中にあった、未知の力と言うものにイニシエンは確信した。この天使、絶対に何かを知っている。
「そりゃ悪かった。でも、それが出来るって事は、何か掴んでるんだろ? 協力してやるから、教えてくれ」
「おそらく、人間の未知の力、世界を襲った未知の力、そして、私が利用している力……の根本は人間の力なのだが、これら全てはおそらく同じものだ、と言えるが、確証はない。情報のすり合わせが必要だろう」
メビウスはこいつに何を言っても意味が無いと諦めたらしい。ウンザリしたかのように情報を吐いてくれた。いつも損な立ち回りなのである。イニシエンも内心は悪いなと思うものの、きっとこの関係は変わらないだろう。
「なるほどな」
「だが、貴様の持ちうる情報では、たかが知れている。別の視点からの情報、エンシェントの力があれば、進展はするだろう。おそらく、この件について一番理解があるのは奴だ。だが、素直に情報を提供するとは思えない」
「よし、俺が無理やりにでも協力させれば良いんだな」
メビウスを仲間にすることに成功した、後は強引にエンシェントを仲間に引き入れ、最後の一人もこちらが動いていれば勝手に接触してくるだろうとイニシエンは考えていたが、その最後の一人であるレアル・グリードがニヤニヤしながらやってきた。
「アタイにも一枚かませてよ。こんなことになったら、悠長にしてる場合じゃないんだろ?」
「よし、レアル。沈黙の森に行くぞ!」
「いえーい!」
イニシエンが空けた穴から既に入り込んでいて、こっそりと話を聞いていたに違いない。それは兎も角として、管理者が半数以上集まったのだから、エンシェントの説得も強引に進めれば何とかなるだろう。
「……。説得は私がやる。貴様らは余計な事を言うな」
そう考えていたイニシエンだが、メビウスが説得役を引き受けてくれるらしい。そうであれば、レアルと共に次のステップへ進めておくのも良いだろう。
……
「なぁ、レアル。フォルフルゴートが何処に居るか知ってるか?」
「それなら知ってるよ。移動してなければ〈無知の国〉に居るはず」
「それなら、倒しに行こうぜ?」
「なーるほど、アタイ達が動き始めたら、メビウスとエンシェントも放っておけなくなるもんね」
「無理やりにでも、この戦いに巻き込んでやる必要があるからな」
「面白そうじゃん。世界に変化を起こせるかもしれないね」




