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変貌していく本質

 銃声が響く、もはや慣れた音でもあり侵入者が倒された音でもあった。<要塞の帝国>の防衛戦力としては、守護竜ばかりに目が行きやすいが、実は内部にも密かに守るもの達が居る、守護竜を出し抜きさえすれば、容易いと考えた侵入者を排除するための部隊、守護竜の影。


「ねぇ、フィクター。あんまり騒がしくすると、ディーアからまた怒られちゃうよ?」


「それは困るな。騒ぎになる前に逃げるとするか」


 ムアは変身能力……正確には姿を誤認させる権限らしいが、それを使って侵入者を路地裏に誘きだし、始末する。防御に優れた鋼化する権限と、殺傷力の高い銃、そして、戦う事への慣れというものが、フィクターを強者としていた。もはや、ドラゴン相手でも、対等に戦えるだろう。相手が飛ばない限りは。


「死体はまた庭に埋めるの? その内幽霊とか出てきそうで怖いんだけど」


「ムア、小説の読みすぎだ。……それなら、胃袋にでも隠すか?」


「私を何だと思ってるの!?」


 そんな会話をしながら、仕留めた侵入者を運び足していく。騒ぎを起こさないように隠さなければいけない。守護竜の影はその存在を知られてはならないのだ。今は亡きシャルサーに代わり、新たな守護竜の影の一員となったフィクターとムアであったが、お互い以外に誰が所属しているのか解らない。それくらい、知られていない。


「それにしても、最近は増えたな」


「やっぱり、アルケミスト・コミュニティなのかな?」


 <要塞の帝国>は最後の準備に入っている。その為なのか、侵入者が多くなった。もう勘弁して欲しいとは思うものの、敵が考慮してくれる訳では無い。結果として、運び出した死体を埋めるために、二人はスコップを手に持ち、屋敷の庭にてせっせと穴を掘っている。


「どうだろうな。面倒なことはしてくれないで欲しいが、これももう少しで終わる」


 準備が終わり次第<要塞の帝国>は、防衛部隊と守護竜の影を残し<無知の国>と<沈黙の森>の制圧に入る。そして、それに紛れるような形で、イニシエンが<救済の島>へ侵入する。


「本当に、そんなことが出来ると思うの?」


「出来る出来ないじゃない。目的があって、それに向かうだけだ」


 全てを制圧し、敵となり得るものが無くなった時。中立の管理者へと戦いを挑む。そんな筋書きになっている。だからこそ、ドラゴンである、ギア、ムア、フィクターは最後の戦いに参加出来ないわけでもある。


「もし、イニシエンが<外部>にアクセス出来るようになっても<零の映写機希構>は」


「それでも、俺は、俺の出来ることをやるだけだ」


 最終的な目的は<世界の転生>を止めること。そして、それはイニシエンの目指す楽園への第一歩であり、大前提でもある。世界が不安定であり、転生し続ける限り、楽園を維持し続ける事は不可能であるからだ。


「なんか、フィクター変わったよね」


「そうか? 戦いに慣れたつもりではいるが」


「んー、そういう事よりも、私が会った頃って、なんか、もっとふわふわしてた感じがする」


「ひどく曖昧だな」


 そんな会話をしつつ、死体を埋める。今のところは騒ぎになっていないらしい、音の出る武器を使っている以上、何度か騒ぎになりかけ、その度にディーアにもみ消してもらっていたりする。そういう意味では、シャルサーはとても優秀だったらしい。


「今は、なんか淡々としてる気がするよ」


「変わったつもりは無いが、人は変わるものだろ?」


「それもそうなんだけどね」


 手に持っていたスコップを放り投げる、この庭は下手に掘り返すと恐ろしいものが出てくるに違いない。一仕事終えたフィクターは、このまま昼寝でもしたい気分になっていたが、どうにもムアが浮かない表情をしているのが気になってしまう。


「何か不安なことでもあるのか?」


「うん。不安っていうか、なんだろう。どうして、フィクターは世界が終わることを知ってても、冷静で居られるの?」


 それは〈要塞の帝国〉において割と知られていることでもある。流石に一般人にまで浸透していないが、少なくともイニシエンの計画を知っている人には、その意味を伝えられ把握している。ある意味フィクターにとっては今更であり、それをどうにかするために動いているとも言える。


「東区の管理を任された時点で、俺は伝えられていたからな。冷静を失うには今更過ぎるだろ?」


「うん、そうなんだけどね。えっと、怖くないの? 世界が終わっちゃったら、みんな死んじゃうんだよ?」


「怖がる時間は終わったんだ。前に進んでいけば、進んだ意味は残ることを知ってるからな」


 イニシエンへ忠誠を誓い、その計画に加担する人達の共通点。何があろうと自分たちの意思を継いでくれる事を知っている、だからこそ、死をも恐れることはない。それはフィクターであっても同じであり、逃れられない滅びを照らす明かりに魅入られているとも言える。滅んだ後も、覚えていてもらえるというのは、人を引き付ける強力な光になっていた。

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