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覚悟する者

「そうか……。被害者が出たのか……」


 椅子に深々と座り、大きくため息を吐く男。かなり粗暴そうな見た目をしているが〈要塞の帝国〉の頂点であり、邪悪の管理者たるラギ・イニシエンなのであった。そして、その前に立っているのは、部下であり、実質的に国を管理しているディーア。


「イニシエン様、葬儀の方は終わりました。ですが、一人だけ。グラレアの遺体だけが未だに見つからないのです」


 亡くなってしまった防衛部隊の者達、東区の使用人達、せめて国で弔ったものの、こんな形で民が命を落とすことを、イニシエンは我慢ならないのだ。直ぐにでも動きたいが、今動いてしまうのは、今までの皆の努力を踏みにじることになってしまう。だからこそ、耐える。


「世界は、いつも俺から大切なものを奪っていく」


「イニシエン様は、大切なものが多すぎるのです」


「解ってる。だがな、俺は強欲なんだ。誰か一人欠けることさえも我慢ならん」


 イニシエンの怒りは、ある意味自分自身に向いている。今は動けないことへの不甲斐なさに。それでも今は目立つわけにはいかない、静かに力を貯め、迅速に動き、世界に強襲を仕掛けるには、世界のシステムである管理者は動くわけにいかないのだ。


「……今度こそ、上手く計画を進めなくてはならないですね。」


「そういうのは、メビウスの奴が得意だ、協力させてやる。オールグローリアに行くと伝えてあるし、向こうに行った俺の民の様子を見に行く必要もあるしな」


 イニシエンの計画の最初の段階として、メビウスを仲間に引き入れること。可能であればエンシェントも仲間に引き入れたいが、難しいかもしれない。レアルは動きを見せれば感づいて向こうから接触してくるだろう。


「イニシエン様、そろそろ時間です。来ると思いますよ」


 それから数分後、イニシエンの居る謁見室に訪ねてくる男が一人、フィクター・グラフは跪こうとするが、ディーアがそれを手で制止する。


「今回のことは、残念であった。だが、俺達は立ち止まる訳にもいかない。今は亡き者達の想いも背負い、先へ進むしかない」


「……理解しています」


「ギアと防衛部隊がこの国の外側を固める者達ならば、内側を守る者達も居る、シャルサーは、その一人だった」


 本人の知らないことであったが、実はシャルサーは自分の力を売り込み、東区の管理者の使用人という立場を手に入れた。ある意味、フィクターの立場はそういった事柄の結果として、得たものであった。


「……知らないところで、戦っていたのか」


「フィクター、お前はシャルサーの意思を継ぎ、この国を守れ。最早お前に力を渡すことは出来ないが、俺自身が戦い方の指南ぐらいはしてやろう」


 イニシエンは椅子から立ち上がり、手を差し出す。フィクターは驚きのあまり固まってしまっている。世界の管理者であり、この国の王たる存在から、シャルサーの想いを継ぐ提示をされているのだ。


「よろしいのですか……?」


「俺はお前の力を貸せと言っている。そして、道を示すのは王の役目だ。民の願いは出来る限り叶えてやりたい、その為の助力は惜しまんぞ」


「お願いします……!」


 そして、フィクターはイニシエンの手を取る。二度と、何かを失わないために


「ならば、覚悟を抱け! 全力前進! 共に進むぞ、誰一人として不幸な者の居ない、楽園の為に!」




 守護竜ギアとは違い、語られることは無いに等しいが、人の姿をした二体の竜が〈要塞の帝国〉の内側を守っている。黒竜ムアと、鋼竜フィクターだ。


「フィクター、あまり言いたくないんだけどね。世界はもう長くは続かないよ」


「なんだ、そんな事か。面倒なことをしてくれたかと思った」


「そんな事って! なんでそんな事言えるの!? それより、知ってたの……?」


「イニシエン様の目的は、そんな世界を変える事だからな。その想いに追従する仲間は、その真実を伝えられている」


「終わるのが解ってて、頑張れるの?」


「俺には、その理想こそが希望だからだ」

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