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潜入する者

「さて、掃除でもする事にしましょうか」


 フィクターとムアはが南区に向かってしまい、残されたシャルサーはホウキ片手にどの辺りを掃除しようかと考えていた。代々東区の管理者が住まうこの屋敷は、1日で掃除しきるには、あまりにも広かった。実際に使われている部屋は一部であり、使われてない部分は放置気味となっている為、少々埃っぽかったりする。


「勿体無い話でもありますが……」


 独り言を吐き出したシャルサーは、今日は使ってない部屋でも掃除しに行こうと移動しようとした。その時、ノックの音が聞こえた為にホウキをしまい、玄関へと向かうこととなった。


「ただいまフィクター様は外出中となっておりますが、何かご用でしょうか?」


 扉を開くと、眼を布で覆った怪しい男が立っている。なんの用で訪ねてきたのかは解らないが、ある可能性が頭に浮かんだシャルサーは心のなかで警戒する。


「それは残念です。ただ、伝えて欲しい事があるのですが。あまり、他の者には聞いてほしくないのです」


「解りました。こちらへどうぞ」


 その怪しい人物を屋敷の中へと受け入れ、客室へと案内する。そして、シャルサーは椅子へ座るように促すが、どうやら座るつもりは無いらしい。


「実は、用があるのは、シャルサーさん。貴方なのです」


「何でしょうか、アルケミスト・コミュニティ創始者、クレイクァール様」


「おや、気がついていましたか」


 シャルサーの予感は的中していた。態々目隠しして出歩く等と、まるで気付かれても良いような態度であり、クレイクァール本人も、だからと言って動じる事もなく、予定調和かのように振る舞っている。


「それで? 私達の国の敵対者様はどの様な御用件でいらっしゃいましたか?」


「中々手厳しいですね。単刀直入に言いますと、シャルサーさん。貴方に私たちの仲間になってほしいのです」


 まさかの勧誘であった。シャルサーは表情を動かさず、その意味をじっくりと考える。何故なら、アルケミスト・コミュニティがただの使用人、それも今まさに敵対している組織からの引き抜き等と、何のメリットがあるというのか。思い当たる節は、一つしかない。


「何故、私なのですか?」


「能力を持っているのでしょう? それだけで、仲間に誘う意味があります。私たち、アルケミスト・コミュニティは変わりゆく世界を肯定し、変わりゆくことを変えることを否定します。能力とは、世界の呼吸に近しいものではないかと、考えているのですよ」


 おそらく、クレイクァールは能力について調べるために、その持ち主を仲間に誘いたいらしい。そこまでは理解できるのだが、そもそも、何故能力を持っていることを知っているのか、シャルサーとしてはそこが一番気になる部分である。何しろ、知っているのは、イニシエン、ディーア、キュルク、ウォーラ、フィクター、ムアの六名だけの筈なのだから。


「私が能力を持っていること、誰に聞きましたか?」


「私は盲目です。他の人が見えるものが見えない代わりに、見えないものが見えるんですよ」


 どこまでが本当なのか、シャルサーにそれを判断することは出来ない。誤魔化すような言い方にあえてしているのか、何か隠したいことがあるのか。もしかしたら、盲目であること、それ自体が嘘という可能性もある。


「やれやれ、面倒な話ですね」


「それでは、本題に戻るとしましょうか。私たちの仲間になってください」


「貴方達の仲間になることに、どんなメリットがあるというのですか?」


 シャルサーは半分突き放すように言葉を投げかける。何しろ、居場所を失うデメリット以上のメリットを、想像することが出来ないのだから。だが、そんな反応に、クレイクァールは嬉しそうにしている。


「ようやく、私の言葉に耳を傾けてくれるみたいですね。私たちの仲間になっていただければ、今までに発見した世界の真実について、開示することにしましょう!」


 まるで断られると思っていないのか、クレイクァールは手を差し出す。そして、その世界の真実という情報に、シャルサーは手を


「なるほど、それは面白そうですね」


 その手を取る、ふりをして、シャルサーは能力で隠していたナイフを突き立てようとする。初めから仲間になる選択肢なんてない、クレイクァールの命を奪うタイミングを探っていただけだった。


「見えてはいましたが、残念です」


 クレイクァールは、見えないはずのナイフをひらりとかわす。その余裕そうな態度に、シャルサーは憎々しげに表情を崩す。今まで、こんなに翻弄されることは多くなかった。


「よく、避けることが出来ましたね?」


「貴方の能力。見えなくする能力は脅威なのかもしれませんが、私には関係がないのです。初めから何も見えていないのですから。故に、貴方は勝つことが出来ません。諦めて、私の仲間になってください」


「……。ようやく作り上げたこの立場。貴方如きに壊させはしませんよ? あなたの首は、イニシエン様への素晴らしい手土産になりそうですね!」

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