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後悔する秘密

「ムア、今日の予定は?」


「今日は会議だよ。主に要塞の帝国内での行方不明者についての事がメインで、後は細かい議題が幾つか」


「あー、今日だっけか。目の覚める何かでも無いか?」


 フィクターは読んでいた本を棚に戻すと、欠伸をし、背伸びをする。どうやら、とても眠いようだ。それを聞いたのかシャルサーは、側まで行くと、何も持っていないはずの手に、コーヒーの入ったティーカップが何故か現れる。


「コーヒーの香りがしてたから、もしかしたらと思ってたんだけど、どんな手品なの?」


 ムアからしてみれば、コーヒーの香りがするのに何も持っていないシャルサーが、フィクターに近づいて。急にその手元に、香りの元であろうコーヒーが現れるのだから、意味が解らない。自身と同じく、視界に関わる権限でも持っているのかと考えるものの、人間が権限を持っている訳が無いのだ。


「残念なドラゴンは、その眼も残念なのですか? 私はコーヒーをただ持ってきただけですよ? 腕の良いメガネ職人を紹介致しましょうか?」


「私は残念じゃないし、眼も悪くない筈なんだけど」


 ムアが反論するなか、何者かがバタバタと部屋に入り込んできた。フィクターの友人、ウォーラだ。そして、空気の読めない第一声を放つ


「俺にもコーヒーが出てきたように見えたな!」


「何方でしょうか?」


 急に話に入ってきたその声の主に視線が集まる。ウォーラはそんなの気にしないとばかりに、シャルサーに興味がありますと言いたげな視線を向けるが、問題はそこではない。


「ウォーラ、何処から入ってきたんだ?」


「おっ、フィクターお邪魔してるぜー。今日会議だろ? ちょっと早めに集まっちまったぜー」


「こんな早朝に集まって頂き、お疲れ様です。迷惑という言葉をご存知でしたら、もう少し考えて頂けますか?」


「なんか、物凄い遠回しに嫌み言われてんだけど、それにさ、そんな早朝でも無いだろ?」


 実はこの二人は面識が無い。何しろシャルサーは、会議等の他の人が集まるような事があれば、裏方へとまわってしまう。その為に、もし会ったとしても、使用人の一人としか認識されていない筈である。


「おや、外が暗いのでまだ日が上っていないのかと思っていました」


「そりゃ、今日は1日曇ってるからな」


「さっきまで素晴らしい晴天でしたのに」


「俺、一日曇ってるって言ったよな? それに自分で日が上ってないって思ってたって言ったよな?」


 まるで、仲の良いやり取りをしているように見えるが、この二人は面識が無い。ただ、唐突な乱入者に、とても不機嫌になったシャルサーが嫌みを言っているだけである。なお、表情は相変わらず笑みを絶やさず、ここまでくると胡散臭くも感じてしまう。


「そういう事にしておいても良いですよ」


「おいおい、良いけどさ。それはそうと、さっきのって何だったんだ? お前何も持ってなかった筈なのに、いつの間にか持ってるとか、どういう事なんだよ?」


「さて? なんの事でしょうか?」


 ウォーラの追及に対しても、シャルサーは何も答えるつもりが無いようだ。何かを隠して居ることは明白であるが、それをフィクターが気にしていない以上は、聞き出すのも難しい。


「いつもやってる手品でしょ? 私もきになるんだけど、どうやってるの?」


「それだよ、一体どうやってるんだ?」


 ここぞとばかりにムアも追及する事にした。出会った時に散々やられた事もあり、気にならないわけが無い。もしかしたら、チャンスかも知れないと考え、この流れに乗る事にした。


「貴方達は一体何を言っているんでしょうね。もし、私が手品を使うのだとすれば、そのネタを話すと思いますか? もはや、それは手品では無いでしょう?」


 至極単純な話であった。ムアがシャルサーに勝てないのは、それがどのようなものなのか、解らないからであり、それが解ってしまえば、対策のしようもあるという事なのだ。だからこそ聞き出したいのであり、教えてもらえない理由でもある。


「俺さ、もしかしたら<能力>ってやつなのかなって思ったんだよね。俺は持ってないけど、そういう話は聞いたことがある」


「なんですって?」


「なんだと? ウォーラ、その話は聞いたこと無いが?」


 ムアは能力なにそれ、という状態になっているが、シャルサーとフィクターは何か引っかかるものがあったらしい。その視線を一身に集めたウォーラは、やれやれとばかりに、なんだかムカつかせるような態度で話し始める。


「フィクターは知ってるだろ? 俺は色んなコネがあるんだよ。個人的にミクスミャルムの持っている能力について調べてたんだ。そうそう、俺はこの特別な力についてもっと知りたいんだけど……。俺の情報を知りたいんだよな? ただって訳にはいかねぇんだよなぁー」


 その瞬間。フィクターの視線がシャルサーへと向くことになった。今までは特に利点は無かったので、気にはなるものの聞き出すことはしなかったのだろう。ムアもこれはチャンスだと思い、視線を向ける。珍しく睨み反された。


「解りました。解りました。それで? 何が知りたいのですか?」


「やったぜ! やっぱ話せば解ってくれるもんなんだよなー。どんな事が出来るのかって事と、その条件って感じかな。俺はどんな種類があるのか知りたいんだよ。ミクスミャルムの材料から薬を作る能力とか、無知の国の奴等の眼の能力とか、どれだけ色々あるんだろうってね」


「はぁ、そうですか。話しますが、他言無用ですよ。下手すれば暗殺しなくてはなりません。私の能力は、物を見えなくする事です。そして、その条件は、それを手に持っている事です」

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