表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/50

後悔する運命

「それで? 私になんの話があるの?」


 フィクターがこの部屋から居なくなるのを確認した後、ムアは話を切り出す事にした。どうせ逃げても意味は無いし、速くこの場から立ち去りたいという思いからだ。この国で起こした騒動を抜きにしても、ギアに対する苦手意識は元々あったのだった。


「ムア、お前はフィクターに、ドラゴンの在り方を押し付けた。解っているのか」


「解ってるよ。でも、どうせ私の下位竜なら、大した力は得られない。何かあっても白羽の矢は私たちの所に来ること無い。それを言うなら、ギアの方が問題じゃないの?」


「ふん。それこそ愚問だ。イニシエン様はそれを許さないだろう。そして、万が一事が起きた場合は、俺は自らを焼き尽くす準備は出来ている」


 全てのドラゴンは、中立の管理者フォルフルゴートの命令に背く事が出来ない。もし〈要塞の帝国〉が危険視され、ギアに命令が下される場合。物理的に行動できなくする。それを聞いたムアは呆れかえる。個人主義のドラゴンからしてみれば、その考えは理解できないのだ。


「バカじゃないの? それで何が変わるっているの?」


「変えられないのではない。変えるのだ。俺は肉体と共に、信念を受け継いだ。あの戦士がこの国を守ろうとしていたように、俺はこの世界の未来を守る」


「誰が何をしようと、世界は終わるのよ。意味の無い事をして何が楽しいのか私には解らない」


 ムアはまるで不審なものを見るような目をするが、それで態度が変わる事は無い。そもそも、このような反応が返ってくるのは想定内でしかなかったのだ。そう簡単に、意識が変わる事はない。それはギアからしては残念なものであったわけだが、この黒竜が気づく事は無いだろう。


「後悔は、しないのか?」


「なにを? だって、意味ないでしょう?」


「俺は、世界を変えられない事を理解している。一歩の前進を欲しているだけだ。それなら見込めるだろう。そして、その一歩は永続的な一歩になる。イニシエン様が諦めない限り、次の世界では、約束された一歩がある」


「何よ。なんだかんだ言っても、ギアも諦めてるじゃん。それにイニシエン様イニシエン様って、イニシエンにもこの世界は変えられない」


 ムアはどうしてこんなにも気に入らないのか理解できないが、それでも明確に気に入らない。ギアがやけに静かに話す事を気にしながらも、それを理解しようとまではしない。もしかしたら、その態度が癇に障るのかもしれない。


「イニシエン様は、俺達の想いを継いでくれている。ならば、俺は前進する一歩を継いでもらいたい」


「でも、変わる事は無いよ」


「解っている。このままでは変わる事は無い。だからこそ、俺は動いている。少しのヒントでも良い、何かを変えようとしている。……ムア、お前は今まで何をしてきた」


「いや、だって。何をしても意味ないし」


 急激な強い口調に、ムアはすこしタジタジになりながらも、意味は無いと答える。それを聞いたギアは失望を滲ませた声で、ぼそりとそうか、とだけ答え。少しの沈黙が流れる。


「フィクターは、俺と同じく、イニシエン様の元に世界を変えるべく動く同志だ。お前如きが後先考えず介入してきたこと、酷く腹立たしい。何かしてみろ、塵も残さず焼き尽くしてやる」


「そんなに言わなくても、私は何もするつもりは無いよ」


 ムアは上ってきた階段を思うとウンザリするが、それ以上にギアと一緒にいる事が我慢できなかった。無我夢中で足を動かしていると、気が付けば、辺りは微妙に暗くなっていて、フィクターの屋敷の前にたどり着いていた。


「思ったよりも早かったな」


 なんと無く、ムアはフィクターの姿を探したが、その惨状は、机に座り込んで束になっている書類と奮闘していた。それでも、何ごとも無いかのような表情をしている。だが、それでも明らかに疲れはあるのだろう。


「早かったって、外は結構暗くなってるけど」


「そうなのか? まぁいい。えーと、4年前の流通の変化についての記録はどこにしまったかな」


「それなら、右から3番目の本棚の、2段目の一番左の紙束だよ」


 これにはフィクターも驚く。いつ読んだのかというものもあるが、それ以上にこれだけある記録の中から、何かを見つけるというのは大変な事。それを、まるで暗記しているかのように、いや、実際に暗記しているのだろう。恐ろしい事であった。


「あ、いや、その。暇だったから、ついね。読んじゃいけないものとか、私知らないし? 仕方ないよね?」


 動きを止めたフィクターを見て、怒られると思ったムアは、一生懸命言い訳をしている。ギアに色々言われたばかりなのに、他にも色々言われるのは勘弁だったのだ。だが、それは有る意味無駄というか、完全に見当違いのものだった。


「ムア、貴方はシャルサーに何かやるべきことを見つけるように言われていたな?」


「あ、うん。確かに言われてたけど、何も見つかってないよ?」


「いや、見つけただろう? 今さっきな」


「えっ?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ