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変貌する疑心

 フィクターとウォーラは爆発音のあった北とは反対側、南の方へと向かうが、実際にはあてもなく何かを探さなくてはならない。幸いなことに、住人達は家の中に逃げているし、ギア率いる防衛部隊は、北の方に集まっている筈。そうならば、何か怪しいものがあるのであれば見つけやすいだろう。それに、〈要塞の帝国〉は、国と名乗ってはいるがそこまで広くない。


「適当に飛び出して来ちまったが、当てなんてあるのか?」


「ある訳無いだろう? そんなものがあると思っていたのか?」


「だよなぁ、いくらここがそんな広くないって言っても、当てもなくなんて、無理があると思うぜ」


 話しながらも、足は南の方へと向かう。もし、不審な人物が居たら危ない事になりそうだが、この二人は銃を持っている。ドラゴンや悪魔と言った、基本的に次元の違う相手でない限りは、引き金一つで致命傷にまでもっていける最強の武器。相手が刃物を持っていようと、距離と速度で蹂躙さえも出来るだろう。そして、誰も居ない中、南に進み、ようやく人を見つける。


「そこのお前……。こんな時にぶらぶら歩いていると怪しいと思われるだろう? 面倒な事はしてくれて欲しくはないんだが」


「いや、怪しいと思ってるんだよな? っていうか、見えてる?」


 フィクターとウォーラが出会った人物は、ローブを着ていて全身を隠し、顔に包帯を巻いていていまいちよくは解らないが、おそらく男。こんな怪しんでくださいとばかりの姿で、尚且つこんな状態で外を歩いていれば更に怪しい。そして、包帯で眼が完全に隠れているので見えているのか不安になるが、声をかけられてその怪しい人物は二人の方を向く。


「私はこの通り盲目でして、逃げられずにいたのです。どうか外へ案内してくれませんか?」


 怪しい人物はしれっとそんなことをのたまうが、どうしてそこで「外へ」というのか、フィクターは情報を集めようと更に会話を試みようとした。が、銃撃が響き渡り、その対象は地面に倒れてしまう。もちろんだが、それが出来るのはもう一人、ウォーラしかいない。


「おいウォーラ。面倒な事をしてくれたな? 万が一無関係だったらどうしてくれるんだ?」


「フィクター待ってくれよ。こいつが怪しいのは明白だったし、何かされたらヤバいじゃん? それに、一発だったらまだ生きてるかもよ」


 ウォーラは冷や汗をかきながら、へらへらとそんな言い訳を述べている。そんなのでよく南区をまとめているとも思うが、今はそんなことは関係ない。倒れた怪しい人物を見たフィクターは、明らかにおかしい事に気が付く。


「おい、こいつ、出血していない!」


 謎の人物は、血を流していないどころか、怪我の一つもしていない。そして、何ごとも無かったかのように立ち上がる。ローブについた埃をはたいて、まるで転んでしまっただけのようにも見えてしまう。


「私は、視力を失う代わりに、見えないものが見えるようになりました。そして、私にとって見えないものは世界の全てです。つまり、私に見えないものは存在しないのです」


「おいおい、無茶苦茶じゃねぇか。わざと倒れて銃弾をよけたっていうのかよ」


 謎の人物はとんでもない事を言っている、もし、見えたとしても、音の速度にも匹敵するであろう銃弾をよけられるものだろうか、普通ならありえない。それでも、その在りえないことが今ここで起きてしまっている。


「ありえない事を起こす力。お前は、人間ではないんだろう? 化けたドラゴンか、もしくは、天使だったりするのか?」


「いえ、正真正銘、私は人間ですよ。アルケミスト・コミュニティを結成しました、クレイクァールと申します。どうか、世界をあるべき姿に保つため、ここを破壊させてください」


 堂々と、自身がアルケミスト・コミュニティの一員どころか、創始者であると公言した。そして、世界をあるべき姿に保つ。それは、世界を変えようとしているイニシエンに対する、完全な反対意見だ。そうなれば、アルケミスト・コミュニティが〈要塞の帝国〉に攻撃をする理由としては十分。


「つまり、お前を此処で処分してしまえば、面倒は少なくなるんだろう? 抵抗なんてしてくれるなよ? お前が嘘ついてあんな事を言ったんだとしても、それは撃たれない理由にならないからな?」


 フィクターは銃を、クレイクァールへ向ける。だが、凶器を向けられているにも関わらず、表情は見えないが、まるで慌てた様子もなく、その銃に優しく触れる。


「想いは、物に宿ります。そして、想いには重さがあるのです。そんなに重い武器では、私を傷つける前に、潰されてしまいますよ」


「何を言って……うぐっ!?」


 フィクターはまるで何かに圧し潰されるかのように、地面に倒れ込む。そして、視界は暗転し、意識が戻った時にはすっかり日は落ちかけていて、クレイクァールの姿は無く、ウォーラの姿も無い。ただ一人、レイトアだけが何故かその場所に居た。


「おい、意識は戻ったか」


「まだ、頭が痛い。ウォーラはどこだ?」


「奴は、既に屋敷に戻っている。アルケミスト・コミュニティの創始者を追ったが、見失ったと言っていたな」


 フィクターは立ち上がり、ウォーラは無事と知り安心する。なんだかんだ言っても、付き合いが長く、それなりに仲良くしている。だが、その様子を見てレイトアは睨みつける、いや、元々目付きがかなり悪いので、そんな意図は無いのかもしれない。


「じゃあ、俺も帰るか。これ以上は無駄だろう」


「おい、フィクター。常に疑え、誰も信用するな。見えても変わるのが人の心だ。全ての人間が心に武器を隠し持っていると思え」


「どういうことだ?」


「人の根底、奥底の感情。それを引き出すのが悪魔である俺だ。もし、お前が誰かを疑ったとしても、それは俺の言葉である以上、全ての悪意は俺が原因だ。お前が気にする必要は無い」


 どういうことか解らず立ち尽くすフィクターをそのままに、レイトアは去って行った。中断された会議は次の日に再開され、一つ問題は解決したらしい。どうも、クレイクァールが隠していたと思われる銀貨を発見したとのこと。少しずつ、流通に流して、元に戻していくようだ。何故か、違和感がぬぐえなかった。

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