9. 「傷、開いたらなん」
体育祭も残す競技僅かとなり、校舎の壁に取り付けられた得点表は既に隠されている。それぞれの組の得点は拮抗しており楽しい戦況となっていた。
まぁ、それは体育祭としての話であり天満の周りはなかなか拗れやすかった。
「はぁ〜」
手にした二つ折りの紙を開いて包帯の巻かれた手で顔を覆った。
「おぉっと!? 黄団の榊原動きが止まったー!! 一体なにを引いたのか!?!?」
放送部の人間による実況で天満に視線が集まるが、それ自体慣れていることなので特に気にするようなことではない。しかし、but、
「はぁ…」
障害物競走。最後に待つのは借り物競争だ。右手のハンデを持ちながら易々と一位で借り物の書かれた箱を引いた天満だったがその内容に頭が痛くなっている。なう。
というか聞いてほしい。
虎の一件はもう終わったからいいとして、そのあとだ。
右手の手当てをしてもらい、もう絶対無茶をしないと復唱させられ校庭に戻れば仲間たちがいるわけで、私はいつも通り声をかけながら戻った。熊さんは保健室から側にいたし、翼と紫呉はギラギラした目で虎の話を聞きたがったから多分虎と再戦できるとでも思ったのだろう。喧嘩馬鹿の2人らしい。で、私の可愛い弟くんだ、問題は。
応援は大成功だとわかっていたし労いの言葉でも言おうと思ったら冷たくあしらわれてしまった。また拗らせてるのかと思って考えすぎだと指摘したら「わかってる」その一言で片付けられる。
それでも、応援団をやり遂げたことを糧にして欲しかったのだがそれが良くなかったらしい。
「あんたは俺の持ってないものを持ってるからそんなことが言えるんだ。 どうして、どうして姉なんだよ?せめて兄だったら俺だって……!!」
と、そこまで聞いたところで思わず殴っていた。右手で。
ギョッとした周りに羽交い締めにされどうどうと宥められ、月海は苦虫を噛み潰したような顔をして背中を向けてしまった。
一瞬見えたお祖父さまは目を据えて、月海ではなく“私を見ていた”
そして虎の言葉が蘇った。
“アンタが思ってる以上にアンタは周りに慕われてるってこーと。だからおれっちみたいなのはすんごいやりやすいんだ・け・どっ?”
ーー
ーーーーー
ここまでが先程までの話。意外とハードなことになっていたりする。
正直普段の天満ならこんなに荒っぽくなることはないはずなのだが今日は、なぜだか心がざわついていた。それが、少しだけ悪く作用してしまったのだ。なぜかは自覚できていないが。
「そんで、これ」
もう一度紙の内容を見ても中は変わることなどない。
「“オッドアイ”ね。ーーんなのこの学校に1人しかいないだろ!!」
「おおっと榊原選手紙を投げ捨てたーーーッッ!!借り物の変更はできませんよ!!」
「知ってるわボケ!!」
「ヒィッ」
放送部の人間は天武のメンバーだ。気が立ってる総長の睨みに情けない声が校庭中に広がる。会場は若干湧いたが彼女の心情は真逆のものだ。
とはいえここで地団駄を踏んで自分で黄団を窮地に追い込むわけにはいかない。長々と説明したがここまでそう時間は経っていないのでやっと2番目の人間が来たところだ。
自分の運が悪いのか因縁の男の運が強すぎるのか、今日に限っては前者だなと自問自答して踵を返したのだった。
************
生徒会は体育祭運営本部と書かれたテントの下で陣取っているからわかりやすい。自分の前に現れた天満の姿に、オッドアイの生徒会長ーー久邇宮麗一は花も恥じらう美貌で微笑んだ。
「ふ、天満。当ててやろうお前の紙の内容を、ズバリ、意中の異性とでも言ったところか。 ははは! 借り物を指定した人間も粋なことをするじゃないか!!」
対する天満の顔は笑顔を貼り付けたまま微動だにしない。
「(なんでこの人こんなに自信満々なんだ今だけ羨ましいんだけど? 今この男の顔見てると去年の雪辱が…チッ)クソが」
思わず取り繕ったもの全部剥がれて出た言葉だった。
「ははは! 今日の天満は辛辣だなぁ。 たまにはいいなこれも……やっとオレに素をみせたか。 次はその鉄仮面を剥がしてやろう!」
THIS is the positive。ポジティブと前向き、そしてご都合主義と書いて久邇宮麗一だ。ちなみにこのような性格になったのは天満のせいでもあるのだが本人にその自覚は全くない。
「御託はいいので早く行きますよ」
「うむ。実に運命的!」
「……」
借り物競争のルールで仕方なく、本人の意思とは無関係に手を繋いで走る天満はかなり全力疾走で流石の麗一も苦笑いだったが一位でゴールし満足げな天満を見てすぐにいつもの様子に戻っていた。
去り際、
「天満。 先輩として1つ助言をしてやろう」
「えぇ? 結構です」
「遠回しな言い方をすればプラスとマイナスは常に均衡を保とうとするものだ」
「聞いてねー」
「いいことがあれば悪いことも起こる。 ちなみにオレの場合昨年までがマイナスだったからこれからの人生は間違いなくプラスしか起こらないことになる。 流石俺だ。 つまり、色々とあればその分何かしらのリターンがあるということだ」
「それ、今までがよかったらこれからが悪いってことでしょう」
「ふむ。 だが迷信のようなものだ。 そう考えすぎるものではないだろう。 それとも結構本気で信じたか? ふっ。 可愛らしいじゃないか」
「はぁ? 先輩が言ったことじゃないですか」
「いやなに、珍しく取り乱しているようだから面白くてな。 平生あれだけ冷静を装っているからなぁ。 そんなに虎とかいう男が気になるか」
「なっ……!?」
なんで虎のことを知っているのか、と思い切り麗一の顔を見る。その顔は美しいもので、今では見慣れた黒と不思議な色彩のオッドアイがキラリと光った気がした。
「オレは生徒会長だぞ? 校内で起きなことくらい把握しているに決まっているだろう」
「それにしたって耳が早すぎじゃ……」
「オレは久邇宮でもあるからな。 当然だ。 どうだ、惚れただろう。 照れるなよ?」
「はぁ……」
正直去年までの麗一にならこんなことはできなかったので最近まで完全になめてかかってた。鷹を括り過ぎていた自分を少し反省、といったところだ。惚れはしないが。多少、認めはした。
「これはオレが言うことではないのだろうが……まぁ。 いいだろう。 惚れた女に甘いからなオレは!」
「?」
「虎はおそらくああいうものだ。 そこに善性を見ようとしてはいけない。 オレは天満の優しさがなによりも美徳だと思うが虎とか言う男に関していえばそれは弱みだ」
「!」
ハッとさせられた。まさか、こんな男に自分が気づかされるとは思わなかったから尚更。
珍しく天満の顔から笑顔が消えたことに麗一は満足気な笑みを浮かべる。周りからは黄色い歓声が上がった。
「ではな。結果発表が楽しみだ。このオレだけをよく見ておくといい」
ははは!という高笑いとともに麗一は去っていく。少しその後ろ姿を見ていたら、スッと大きな手が肩に置かれてそれを辿ると目つきの悪い男がヌッと立っていた。
「頭がいたい日だよ全く」
ニッと笑いかければ結構強めのデコピンをされてしまう。
「………テン、目………死んでる」
「まじか」
「……………………まじ」
考えるのは今じゃない。やっと少し割り切れたところで全競技が終了したことを告げる花火が鳴った。
***********
「ーーーー二位、赤団」
その言葉は必然的に黄団の一位の宣言でもあり、黄団の雄叫びがあがる。
開会式とは違い、閉会式は結構並び方が雑だ。かろうじて組別に分かれて入るがみんなそれなりに全力を出し切っているため座っている人間が多い。
3位緑、4位青、5位白と発表は終わっていて、なかなか接戦だったらしい。点数の差は少ないものでどこの団が勝ってもおかしくはなかったようだ。
天満もテントの下でそれを眺めていた。
「やりましたよ天満さん!」
「さすがっす総長!」
「っしゃあああぁぁぁ!!」
キラキラした目でこちらを見てくる仲間たちにニッと笑ってテントから出れば歓声が上がる。そのまま彼らに誘導されるまま朝礼台の前まで連れていかれると、二位のトロフィーを手にした麗一が丁度降りてくるタイミングで目があった。
目尻を下げて甘く微笑むその表情に、その顔を見た何人が赤面したのかはわからないが少なくとも、天満を除いた大半がその微笑にやられただろう。自称するだけあって顔面だけはいいのだ。
無駄にカッコつけてきた生徒会長に辟易しながらもしっかり団の優勝旗を受け取って朝礼台の上で掲げる天満。
仁王立ちで高らかと黄色の装飾旗を掲げる総長の姿に、団問わず天武のメンバーの雄叫びが校庭に、校内に、響き渡る。
ーーーカリスマ性。その言葉に尽きるだろう。それは天性のもので選ばれた人間が持つべくして持って生まれてくるものだ。類は友を呼ぶと言うからか、天満の周りにはそういった類の魅力を持つものが多く集まっているて、その中でも天満のそれは群を抜いて強い輝きを宿しているように思える。
彼女の一喜一憂、一挙手一投足、それら全てが誰かしらに影響を与え、誰かを惹きつける。勿論天武のメンバーのように彼女を慕ってついてきてくれる人間が大半だが、美しい蝶に寄ってくるのは同じ蝶ばかりではない。
強すぎる光には影が付きまとうのも道理。その光が強ければ強いほど、影も濃く深く付いてくる。
天満は自分の光に埋もれることなく、うまくやりくりしている方だが、付きまとうあれこれまでコントロールできるわけではない。そのあれこれの中に、大切な家族がいたとしても影響力を抑えるなんて魔法みたいなものは流石に使えないのだ。
しかして弟との衝突は避けられない。
パフォーマンス部門、応援団。
結果を発表するために朝礼台の前で並ぶ麗一と月海だがその顔は対称的で悠々と腕を組み不敵な笑みを浮かべる麗一と片頬を腫らし難しい顔で口を真一文字に結んだ月海。顔だけで見ればどちらが勝負に勝ったのかわかりそうなものだが……。
壇上にいるのは日差しに焼けたのか赤らんだ顔の我らが校長。手には応援団の勝者に渡される装飾旗を持ち柔和な笑みを浮かべて立っている。朝は固めていたはずの髪の毛も汗をかき、禿頭の輝きが見え始めているが、それはご愛嬌だ。
一大イベントの1つであるため、マイクに息遣いがかかるだけで校庭に集まる全校生徒が息を飲んで勝者を告げる揚言を今か今かと待っている。この時ばかりは全員が立ち上がって。あるものは両手を組み祈るように、あるものは爛々とした瞳で前を見据えて。
どちらの演舞も引けを取らず、素晴らしい公演であった。会場に来た観客と教師たちによる厳正なる審査の結果は如何なるものか。
「パフォーマンス部門、応援団勝者はーーーーーーー雷神!!」
高々と宣言された言葉を皆まで言わずして天武メンバーの雄叫びが轟いた。比べるのは野暮だが天満が優勝旗を掲げた時とも引けを取らない大音量だ。近隣から苦情が来そうだがそこはさすが不良高。不良を恐れてなのか、親切心なのか苦情が来たことは一度もないらしい。
呼応して足を前に進めたのは白い特攻服を翻す月海。観客からは背を向けているためその表情は見えないが、どこか陰鬱な雰囲気にも見える。興奮する生徒たちの大半はそのことに気づかず表彰を、光を受けたビー玉のような目で見つめているが何人かの人間は先刻起きた姉弟喧嘩を知っているので心配気な眼差しを向けていた。
校長が表彰状を読み上げる声が全員の耳を通り、勝者に手渡される白地に雷神と金字の刺繍が施される年季の入った優勝旗が手渡されるとこれでもかと言わんばかりの咆哮や指笛、奇声が雷神メンバーによって歪なハーモニーを奏でる。
月海が勝利の旗を掲げるとタイミングを見計らったように強い風が吹き、いい具合に旗をなびかせ月見の羽織を攫った。持ってる!と言わざるを得ないタイミングだ。
にこり、怜悧な顔が笑顔を見せると歓声とともに会場は拍手に包まれる。月海の人生の中で最も賞賛された日だろう。
そしてそのまま体育祭は終幕を迎える。
途中割りかし危険な侵入者が入り場を乱すだけ乱し、しっちゃかめっちゃかに散らかしていってくれたが概ね、全体評価で見れば素晴らしい結果に終わった。
表彰された月海と天満の視線が一瞬絡んで、冷たく絡まり小さな歪みを生んだことなど、この祭りには瑣末な問題ーーむしろ全く関係のないことだ。
************
随分長く感じた体育祭がひと段落つき、全員でさぁ!かたづけ!という時、勿論天満も張り切って手伝おうと腰を上げたところで天女のような顔の美青年からストップがかかった。ドクターストップならぬ華道家ストップ。意味がわからないけどとりあえず、美人の威圧は怖かった。
あれよあれよという間に病院に連行されて懇意にしている医者からもネチネチ嫌味を言われ、宗二郎に次傷が開いたら軟禁するとまで言われた。今回はちゃんと聞いた。そして、宗二郎はやると言ったらやる男だ。
「別に治ってないわけじゃないのに」
送ってくれる過保護な2人と車の中、大げさに固定された右手を揺らして見せると冷たい視線に射抜かれる天満。……大人しく元の位置に戻した。
静かな音で走る黒い高級車が向かう先は天武の溜まり場のガレージ。
体育祭後はいつもメンバーみんなで打ち上げをするのが恒例となっている。みんなで持ち寄って、さらには他方から差し入れも届き開かれる宴はまさに酒池肉林。 天満は遅れるからと先に始めるよう伝えたので、今頃何人か下戸の奴らは大変なことになっているだろう。
若干心配はあるがある程度の無茶ややんちゃはいつものことで、クマさんから連絡も来ないから大丈夫だ。
そんなことに思いを馳せていると、頭の中で浮かべていた打ち上げの様子とは程遠い涼やかな声が発せられた。そういえば彼も去年はあの中にいたんだ。想像できない。
「そうだテン」
「?」
「いい?打ち上げだからってお酒は絶対飲んじゃダメだからね?」
「ええ? 無理だって、絶対誰か飲ませてくるもん」
「傷、開いたらなん」
「おっけー飲まない!」
ニコッと2人の笑顔が衝突する。運転席からは光流の笑いが飛んでくる。
「傷も治さないといけないし、罰ゲームもしなきゃいけないし、大変だねテン」
「(宗二郎が諦めれば罰ゲームはないんだけど)んー」
「あんまり無理はしないでね」
「じゃあ罰ゲーム無くそう」
「それはだーめ」
いっそ、無駄にいい笑顔で笑いやがる宗二郎の顔写真でも撮って売ってやろうかななどと考えてしまう天満。売ったら後が怖いからやらないけれど、恨めしい視線が何かを語ってしまったのか「楽しみにしててね♡」と追い討ちをかけられた。
他愛のない話で盛り上がり天武の溜まり場に着く頃には空もすっかり帳を下ろし、天には淡い光を放つ三日月が登っていた。
「送ってくれてありがとー。 2人とも」
「おー、またな」
「お酒と右手、ね?」
最後の最後まで念を押されさらにその上から釘まで刺された感じだ。
天満としても軟禁されるのは勿論、流石にそろそろ右手が機能しないのは不便極まりないので治そうという意思はある。
とはいえ、大層なくらいガッチガチに固められた右手を見て、これはどう頑張っても悪化することはないだろうなとも思う。
天満の右手は何重にも固定され、さらにはもう右腕から使えないように首から吊るした布で固定されている。重い。
ガレージを囲う塀の入り口に立ったばかりだというのに、既に天武のみんなは天満の登場に気づき大袈裟なくらい手を振ったり体でアピールしているのが見えた。あれは、相当酒も進んでいるだろう。
一応、お酒禁止右手注意と心で復唱しみんなのいる方に歩み寄っていく。近づけば近づくほど酒やら肉やら魚やらつまみやら、いろんな匂いが鼻腔から空腹中枢を刺激しお腹も空いてきた天満。そういえば、お昼から何も食べていない。
うるさく歓迎してくれる仲間の間を通り、所々で軽く言葉をかわしつつまず見つけたのはクマさん。見つけたというかクマさんの方から近寄ってきたというのが正しい。
「……………お酒……右…手………ダメ」
うん。しかも連絡もバッチリ取られているらしい。確かにクマさんがいれば天満にお酒が行ったとしても止めれらる。クマさんとしても天満が無理をして右手に負担ばかりかけていたのは気にしていたが、そこは天満の気持ちも汲み取って影で支えていた。それが、堂々と気にかけられるのだから安心しただろう。
「大丈夫だいじょーぶ。こんな固定されてたら逆に怪我なんてできないから、ね?」
前科があるのでクマさんの目は冷たい。
「あはは。 というか他のみんなは? 紫呉はいいとして翼と、あと……月海」
紫呉は飲みの席だと早々に退席して寝に行くのできっと上の部屋にいる。だからいいとして、うるさい翼がいないのとちょっと揉めてる月海に会いたいのとでキョロキョロ辺りを見回す天満。
背の高いクマさんは小さな天満が頑張って背伸びしているのを見て内心ほっこりしながら月海がいる方を指した。
「月海? 珍しく酔ってるし……そりゃそーか。 でも、酔ってるなら話せないな。 あー私も飲みたーい」
大事な話は素面の時にしましょう。ということで月海は諦めた。どうせ家で会えるし、むしろ家の方が捕まりやすいだろう。最悪逃げられたら実力行使で縛り付けてでもお話ししましょう。はい。
周りが酔ってるのに自分は素面だなんてつまらないのは道理も道理。天満がそう言うのもしょうがないのだが、本人の自覚なしに天満は酔うと面倒臭いのでクマさんは「ダメ」と言おうとして口を開いた。けれど、それはテンション高めの男の声で遮られた。
「おーテン。 飲んでねェのかー!」
背後から急に現れたのは白金の髪をオールバークにし、白いTシャツを赤で汚した翼。赤い鬼という二つ名を思わせるようだが、服にかかっているのはおそらく赤ワインでオールバックなのも頭からお酒を被ったから。どんな飲み方をしているのか、とりあえず酒臭いし宴会もまだたけなわへ到達していないのに酔いすぎだ。
つまり、翼はいつにも増して馬鹿になっている!
だからこの結果は仕方ないといえば仕方ない。止められなかったクマさんに罪はないし、実は翼は酔っている時の方が強いし、そんなわけで……、
「んぐっ」
「ぬァはははははハ! きょーこそオメェとの決着つける日だわ! 俺の強さ証明してやる!」
天満の口に突っ込まれているのは酒瓶。
翼が手にしているのも酒瓶。
イコール、翼が、天満に、お酒を飲ませていた。
無念、クマさん。でも、飲むなと言われれば逆のことが起こって欲し、じゃなくて起こってしまうのは世界のルールとも言える。いえなくても言い切る。
そんなわけで、呆気なくお酒を飲んだ天満はすーぐ酔っ払い、翼の思惑通り喧嘩を始めた。2人とも酔えば記憶が曖昧になるタイプだが、一応、天満の方は蹴りで殴り合いに応えていたのでセーフだろう。軟禁ルートからは逃れた。
ちなみに、天満は酔うレベルに応じて段階を踏む。今は第1段階ーー暴れまくる。目についたやつを片っ端からはっ倒していく。しかも、普段と違って加減しないので一撃が重い。
それを知っているのに何度も何度も飲ませる翼は何度も何度も倒されているはずなのだが、その記憶は大抵が酔ってるときで記憶にないためもうこれが宴会でイベントと化している。
今日は無礼講ということで下っ端たちも貴重な総長との手合わせに盛り上がり、宴会はどんちゃん騒ぎに拍車がかかる。
夜も更け、宴もたけなわ。長い長い宴はみんなが酔いつぶれ、朝日が昇りきるまで続いたという。




