無意識の神業と、ざんぎカレーの夜
九月。秋の気配が少しずつ混じり始めた小樽の風が、教習車の窓から吹き込んでくる。
しかし、運転席でハンドルを握る大暮ヨウの意識は、すでに深い霧の中に沈んでいた。
(……ねむい。マジで、起きてるのが奇跡だ……)
「大暮さん。次はS字クランク、その後に縦列駐車をお願いします」
助手席に座るベテラン教官、佐伯の声が遠く聞こえる。
本来ならば「初めてのフリをして、下手くそに運転しなければならない」という絶対のミッションがあった。教官に怪しまれないように、エンストのフリをしたり、おっかなびっくりハンドルを回したりする計画だったのだ。
しかし、睡眠不足で大脳新皮質がシャットダウンしているヨウに、そんな高度な『演技』をする余裕などミリ単位も残っていなかった。
「……はい」
生返事をしたヨウは、半開きの虚ろな碧眼のまま、ほとんど無意識にクラッチを踏み、ギアを滑らかにローに入れた。
ブォン、とエンジンが静かに唸る。
そこからのヨウの運転は、完全に『四十九歳のベテランドライバー』、あるいは『勇者の超絶な身体感覚に任せた神業』そのものだった。
半クラッチの繋ぎは職人芸のようにスムーズで、車体は一切の揺れもなく発進した。
S字クランクに入ると、ヨウはミラーすらまともに見ず、タイヤの接地感覚と車幅の完璧な把握だけで、右へ左へと流れるようにステアリングを捌いていく。脱輪ギリギリのラインを、一ミリの狂いもなく一定の速度で駆け抜ける。
「な、なんだこの無駄のないステアリングは……!? まるでプロのレーサーか、三十年無事故無違反の熟練ドライバーじゃないか!」
佐伯がクリップボードを落としそうになりながら叫ぶ。
続いての縦列駐車。
ヨウは、教習用のポールの位置など一切確認せず、適当にバックギアに入れると、一回の切り返しすらなく、スパンッ!と完璧な位置に車を収めてみせた。
タイヤと縁石の隙間は、正確に五センチ。
「お、おい大暮さん! 今のバック、後ろを全然見てなかったじゃないか! なんでそんな完璧に停められるんだ!?」
「……んあ? あー、なんか……勘です。勘」
「勘で縦列駐車が一発で決まるかぁぁっ!」
佐伯の嘆きとツッコミが車内に響き渡るが、ヨウの耳には右から左へと抜けていっていた。
(うるせぇなぁ……早く終わんねぇかな、この時間……)
ただただ眠気と戦いながら、ヨウは教習所のコースを我が物顔で爆走(※安全運転で)し続けたのだった。
***
――ガチャリ。
小樽の安アパートの玄関を開けたとき、ヨウの記憶はすでに所々が抜け落ちていた。
「ただいまー……」
泥のように重い身体を引きずって玄関に入ると、奥からパタパタと足音がして、二人の女性が出迎えてくれた。
「ヨウお姉さん! おかえりなさいませ!」
昨夜のドSっぷりが嘘のように、すっかり機嫌を直したアイリーンが、満面の笑みで尻尾を振る大型犬のように駆け寄ってくる。
そしてその後ろには、上品なブラウスを着た葉室珠子の姿があった。
「あ、ヨウ……お帰りなさい」
珠子は少しはにかむように微笑んだ。見れば、居間のちゃぶ台にはノートや呪符が広げられており、どうやらアイリーンから魔法のレッスンを受けていたようだ。
「おう……ただいま。珠子も来てたのか……」
ヨウが靴を脱いで上がると、珠子が少し嬉しそうに小さな箱を持ち上げた。
「これ、ルタオのケーキです。駅前を通ったので、みんなで食べようと思って買ってきました。ヨウも、どうですか?」
甘い匂いと、珠子の気遣い。
普段のヨウなら、「おっ、サンキュー! 祭が帰ってきたら食おうぜ」と笑って受け取るところだ。
しかし、睡眠不足と疲労で脳みそが完全にショートしているヨウは、正常な判断能力を失っていた。
「……ケーキ……いや、俺はいい。それより……」
ふらふらと歩み寄ったヨウは、いきなり目の前にいたアイリーンの百八十センチの豊かな身体を、ギュッと抱きしめた。
「ひゃうっ!? ヨ、ヨウお姉さん……!?」
アイリーンが顔を真っ赤にして固まる。
ヨウは、アイリーンの深紅の髪に顔を埋め、ぽつりと呟いた。
「お前は……ホントに、可愛いな。昨日は許さねぇけど……可愛いぞ」
「あぅぅぅっ……! ご、ごしゅじんさまぁっ……!」
アイリーンが感激で涙目になりながらプルプルと震える。
しかし、ヨウの奇行はそれだけでは終わらなかった。
ふらりとアイリーンから離れると、今度は隣でポカンと口を開けていた珠子の方へと向き直り、そのまま腕を伸ばして、珠子の華奢な身体を抱き寄せたのだ。
「えっ……!? よ、ヨウ……ッ!?」
珠子の顔が、ボッ!と音を立てて沸騰したように赤く染まる。
ヨウの豊かな金髪から漂う甘い香りと、女性の身体でありながらどこか包み込むような力強い抱擁。珠子の心臓が、肋骨を突き破りそうなほどの勢いでバクバクと暴れ出した。
「お前も……真面目で、可愛いぞ。いつも、ありがとな……」
ポンポン、と珠子の背中を優しく撫でる。
それは、四十九歳のおっさんとしての純粋な親愛の情……のはずだったが、端から見れば、絶世の美少女が黒髪の美少女を熱烈に抱きしめているという、非常に眼福かつ危険な光景だった。
「あ、あ、ああ……っ」
珠子は声にならない声を上げ、全身の力が抜けてヨウの胸に顔を埋めるしかなかった。
「ふぁぁ……よし、俺は寝る。祭が帰ってきたら起こしてくれ……」
二人に特大の爆弾を落としたことなど全く気づかず、ヨウはそのままフラフラと寝室へ向かい、布団に倒れ込んで一秒で深い眠りへと落ちていった。
玄関に残されたアイリーンと珠子は、お互いに真っ赤な顔を見合わせ、もじもじと指を絡ませながら、しばらくの間一歩も動くことができなかった。
***
「……ハッ!?」
ヨウがバチッと目を覚ましたのは、すっかり日が暮れた夜の二十時だった。
数時間の深い睡眠を経て、脳内のキャッシュが完全にクリアになったヨウの頭に、今日一日の出来事が鮮明なフラッシュバックとなって押し寄せてきた。
(や、やらかしたぁぁぁぁぁっ!!!)
ヨウは布団の上で頭を抱え、ゴロゴロとのたうち回った。
(なんだあの運転! 教官の佐伯さん、申し訳ございません。完全に『こいつ免許持ってるだろ』って顔してたじゃねぇか! 初心者アピールするはずが、一ミリの隙もない模範解答以上の運転しちまった!)
さらに記憶が蘇る。
(そうだ、紬と結衣と翔太、それにチャラ男の南川の四人に囲まれて、一緒にワイワイ写真撮って……俺、肝試しに行くなんて了承しちまった! しかもLINEのグループまで作ってる!)
ヨウはスマホの画面を確認した。
『小樽組・心霊スポット突撃ツアー!』という名前のグループが作られており、南川から「今週末の夜、決行で!」というメッセージが来ている。
(うわぁぁぁ! 目立たなく、ひっそりと生きていきたいのに、なんでこんな若者の青春イベントのど真ん中に巻き込まれてんだよ!)
自己嫌悪で胃が痛くなりそうになっていると、さらに別の記憶が蘇った。
(待てよ。昼飯……俺、昼飯何食ったっけ……?)
記憶の糸をたどる。
教習所の昼休み、みんなで外に出て……近くの『なると屋』に行ったはずだ。
(そうだ! 俺、あの店の『若鶏半身揚げ』と『ざんぎ定食』が大好きなんだよ! 外はカリッカリで、中はジューシーで、あの生姜の効いた醤油ダレの匂い……! でも、俺……完全に寝ぼけてて、味の記憶が一切ねぇ!)
ヨウは絶望の表情で天井を仰いだ。
(あんなに美味いざんぎ定食を、無意識のうちに完食しちまったなんて……! 俺のバカ! もったいねぇ! 大好きなのに、記憶がないなんて悔しすぎる!)
そして、最後の最後に、帰宅直後の記憶が蘇る。
(……俺、アイリーンと……珠子を、抱きしめた、よな?)
カァァッ、とヨウの絶世の美貌が赤く染まる。
(アイリーンはまだいい。アイツはペットみたいなもんだし、普段からくっついてくるからな。でも、珠子はダメだろ! あいつは年頃の女の子で、元教え子で……! 昨日の夜、キスしかけて誤魔化したばっかりなのに、俺から抱きしめて『可愛い』とか、完全なセクハラじゃねぇか!)
「あーもう、最悪だ……穴があったら入りたい……」
ヨウが布団を被って現実逃避をしていると。
ギュルルルルル……。
腹の虫が、盛大に鳴った。
無意識にざんぎ定食を完食していたとはいえ、さすがに若くて代謝の良い勇者の肉体である。数時間も寝れば、しっかりとお腹が空くのだ。
「……とにかく、今は腹が減った。アイリーン、飯あるか〜」
ヨウは、気まずさを無理やり腹の底に押し込み、のそのそと寝室を出て居間へと向かった。
***
居間に入ると、そこではアイリーンと珠子が、真剣な顔で向き合っていた。
「珠子、魔力の流れを意識するのです。炎ではなく、熱を帯びた『風』を生み出すイメージで……」
「熱を帯びた風……こう、ですか?」
珠子が、人差し指の先に意識を集中させる。
すると、ポワァン……という微かな音と共に、珠子の指先から、ドライヤーの弱風のような温かい風が吹き出した。
「できました! アイリーンさん、温風が出ました!」
「素晴らしいです、珠子! 一日の特訓で生活魔法を一つマスターするなんて、異世界の魔道士でもなかなかいないセンスですよ!」
「ありがとうございます! これなら、お風呂上がりにすぐ髪が乾かせますね!」
珠子は、普段のクールなエージェントの顔からは想像もつかないような、年相応の無邪気で満面の笑顔を浮かべ、アイリーンと両手を叩き合って喜んでいた。
その光景を見て、ヨウは少しだけホッとした。
(良かった。俺のハグ爆弾のことは、二人とも気にしてないみたいだな……。無かったことにしてくれてるなら、それが一番ありがたい)
ヨウが居間に入ってきたことに気づくと、アイリーンがパッと立ち上がった。
「あ、ヨウお姉さん! お目覚めですか。お腹、空きましたよね?」
「おう。なんか食うもんあるか?」
「ハイ! すぐに用意しますね。珠子、手伝ってくれますか?」
「はい、もちろんです」
二人は台所へ向かい、手際よく準備を始めた。
珠子もすっかりこの家の台所に慣れたようで、アイリーンとおしゃべりをしながら皿を並べていく。その様子は、まるで本当の姉妹のように微笑ましい。
数分後。
ちゃぶ台の上に並べられたのは、食欲をそそるスパイスの香りが漂う『ざんぎカレー』と、彩り鮮やかな新鮮なサラダ、そして氷が浮かんだ冷たいハーブティーだった。
「おおっ! カレーか! しかも、この上に乗ってる唐揚げは……!」
「フフッ。ヨウお姉さんが教習所から帰ってくるとき、『なると屋のざんぎ……食べたかった……』とずっとうわ言のように呟いていたので、私が走って買ってきましたヨ!」
アイリーンが得意げに胸を張る。
「マジか! お前、最高だな!」
ヨウは目を輝かせ、さっそくスプーンを手に取った。
アイリーン特製の、スパイスが絶妙に配合されたピリ辛のカレーに、小樽名物『なると屋』の、皮がパリッとして中から肉汁がジュワッと溢れる特大ざんぎ。
「……美味い!!」
ヨウは、涙が出そうなほど感動しながらカレーをかき込んだ。
「やっぱりここのざんぎが一番好きだ! カレーのスパイスとざんぎの醤油ダレが奇跡のマリアージュを果たしてるぜ!」
「ふふっ、ヨウがいっぱい食べてくれると、作った甲斐があります」
珠子も、向かいに座って自分の分のサラダを食べながら、嬉しそうに目を細めていた。
彼女の表情には、以前のような『祭やアイリーンに対する嫉妬』や、刺々しい雰囲気は微塵もなかった。ヨウが美味しそうに食べる姿を見るだけで満足しているような、穏やかな空気が流れている。
「そういえば、このハーブティー。ハーブがもう無いって言ってなかったか?」
ヨウが冷たいグラスを傾けながら尋ねると、アイリーンが頷いた。
「ハイ。でも、昨日の裏のお仕事で、珠子から三十万円の報酬をいただきましたからネ。マツリ様が『美味しいものを食べて、質のいい睡眠をとるのが一番の健康法だよ!』と言って、少し高級なハーブや、新鮮な野菜をたくさん買ってきてくれたのデス」
「三十万……そうか。やっぱり、金は大事だな」
ヨウは、自分たちの生活が少しずつ豊かになっていることを実感し、深く頷いた。
「そうだ、珠子」
食後のハーブティーを飲みながら、ヨウは少し真面目な顔になって珠子に向き直った。
「昼間にさ、教習所の仲間たちに誘われて、今週末に『肝試し』に行くことになっちまったんだよ」
「肝試し、ですか?」
珠子が不思議そうに小首を傾げる。
「ああ。場所はまだはっきり決まってないんだが、札幌か、小樽か、もしかしたら余市の山奥の方になるかもしれないらしい。……でさ、ちょっと相談なんだけど」
ヨウは、声を潜めた。
「もし、その肝試しの場所で、本物の『怪異』が出た場合……どう処理すればいい? 俺が勇者の力で派手にぶっ飛ばしたら、一般人のあいつらに俺の正体がバレちまうし、かといって見過ごすわけにもいかないだろ?」
その言葉を聞き、珠子はスッと『八咫烏のエージェント』としての鋭い表情に切り替わった。
「そうですね……。まず、管轄の問題があります」
珠子は、ノートの端に簡単な地図を描きながら説明を始めた。
「もし、肝試しの場所が『小樽』や『余市』などの後志地区だった場合。ここは完全に私の……いえ、葉室家の管轄内です。ですから、もし怪異が出現した場合は、ヨウの判断で祓って、倒してしまって構いません。もちろん、一般の方々には記憶操作の呪符を使うなどして隠蔽する必要がありますが、討伐自体は問題ありませんし、私から正規の報酬もお支払いします」
「なるほど。小樽や余市なら、倒していいんだな」
「はい。ですが……問題は『札幌』だった場合です」
珠子の表情が、少し曇る。
「札幌は、私たちの管轄外が多いです。札幌には札幌を縄張りとしている別の能力者や、裏の結社の人間がいる可能性が高いんです。私たちが勝手に他所の土地で怪異を派手に討伐してしまうと、彼らのメンツを潰すことになり、縄張り争いや厄介なトラブルに発展しかねません」
「うげっ、裏社会の縄張り争いかよ。面倒くさいな……」
ヨウが顔をしかめる。
「ええ。ですから、もし札幌の心霊スポットで怪異に遭遇した場合は、可能な限り『倒さずに、結界などでやり過ごす』か、『攻撃を逸らして逃げる』ことを優先してください。そして、後で私に報告だけしていただければ、こちらから札幌の組織に情報を流して恩を売ることができます。……どうしても命の危険がある場合は別ですが、極力、目立った行動は避けてください」
「わかった。札幌なら逃げの一手、小樽・余市なら討伐だな。頭に入れとくよ」
「はい。よろしくお願いしますね、ヨウ」
珠子は、仕事の話が終わると、再び柔らかい、年相応の女の子の笑顔に戻った。
以前なら、「どうせその教習所の若い女の子たちと仲良く行くんでしょ?」と嫌味の一つでも言ってきただろうに、今日の珠子は驚くほど穏やかだ。
(……昨日の夜、色々あったけど。珠子の中で何かが吹っ切れたのか、それとも余裕ができたのか……。まぁ、機嫌が良いに越したことはないな)
ヨウは、ハーブティーを飲み干し、ホッと息をついた。
***
夜の十時過ぎ。
ガチャリ、と玄関のドアが開き、元気な声が飛び込んできた。
「ただいまーっ! 今日もイタリアン、めちゃくちゃ忙しかったよー!」
愛妻の祭が、疲れを微塵も感じさせない、太陽のような明るい笑顔で帰宅した。
「マツリ様っ! おかえりなさいませ!」
「祭さん、おかえりなさい。お疲れ様です」
アイリーンと珠子が出迎える。
「あ、珠子ちゃん! 今日も来てくれてたんだね、ありがとう! アイリーン、お腹ぺこぺこだから、何か残ってる?」
「ハイ! マツリ様のために、特大のざんぎカレーを取り分けてありますヨ!」
「やったー! アイリーンのカレー大好きなんだよね!」
祭が居間に合流すると、部屋の空気はさらに一段と明るく、賑やかなものになった。
祭がバイト先での常連客の面白エピソードを身振り手振りで話し、ヨウがそれにツッコミを入れ、アイリーンと珠子が声を出して笑う。
「でね、そのお客さん、ピザのタバスコとオリーブオイル間違えてドバドバかけちゃってさー!」
「ぶははっ! そりゃ地獄だな!」
「もー、笑いこらえるの必死だったんだから!」
四人で囲む、古びたちゃぶ台。
特別なご馳走が毎日あるわけではない。豪華な家具があるわけでもない。
しかし、この狭い部屋には、間違いなく世界で一番温かくて、幸福な時間が流れていた。
(……もう少しで、俺も免許が取れる)
ヨウは、笑い合う三人の女性たちを見つめながら、心の中でこれからのことを考えていた。
(免許が取れれば、祭の負担も減らせるし、みんなで遠出のドライブにも行ける。それに、高卒認定試験の勉強も順調だ。アイリーンも、珠子のサポートのおかげで日本語の読み書きが上達してるから、秋の試験には十分間に合いそうだ)
自分の人生は、一度は絶望的な状況に陥った。
四十九歳で仕事も家族も失いかけ、異世界に飛ばされ、そして勇者クレアの女の身体になってしまった。
しかし、今はどうだ。
(愛する祭がいて。賑やかなアイリーンがいて。頼りになる珠子がいて……俺自身の未来も、ちゃんと前に進んでる)
「陽? どうしたの、ニヤニヤして」
祭が、ざんぎを頬張りながら不思議そうに顔を覗き込んできた。
「ん? いや、なんでもねぇよ。お前の食いっぷりが見事だなって思ってさ」
「もう、からかわないでよ!」
祭が笑いながらヨウの肩を軽く叩く。
(俺は、大丈夫だ。この家族がいれば、どんな厄介ごとが起きても、絶対に乗り越えていける)
小樽の涼しい夜風が窓から吹き込み、ヨウの黄金の髪を優しく揺らした。
明日からの教習所と、不穏な肝試し。
まだまだ波乱の予感は尽きないが、ヨウの心は、確かな希望と安らぎに満たされていた。




