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異世界で魔王を倒したら、金髪碧眼の美少女になって日本に帰ってきた件  作者: もも


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おっさん、美少女勇者になる。そして天界のバラエティ番組へ

ドクンッ……!!


「え……?」


それは、あまりにも突然の出来事だった。


大暮陽(おおくれよう)、49歳。しがない高校教師である陽の現実は、ビールを片手にナイター中継を見ている最中に、あっけなく崩壊した。


心臓を、見えない巨大な手で鷲掴みにされたような劇痛。


ガシャンッ!と、手から滑り落ちたグラスが床で砕け散る。


「あなた!? ちょっと、あなたッ!? どうしたの!?」


キッチンから駆けつけてきたのは、愛する妻の祭(まつり)だった。29歳。陽にはもったいないくらい若くて美人で、一途な自慢の妻だ。


「がっ……はっ……、まつ……り……」


息ができない。視界が急速にブラックアウトしていく。


「いやっ! あなた、しっかりして! 今救急車呼ぶから! ねえ、目を開けてよぉッ!!」


祭の悲痛な叫び声が、水底から聞こえるように遠ざかっていく。


(おいおいおい……嘘だろ……。俺、死ぬのか……? 祭を残して……?)


ピーーーーーーーーーーーーーーーーー。


次に気づいた時、陽は病院の天井付近にふわりと浮いていた。


下を見下ろせば、無数の管に繋がれ、ピクリとも動かない『俺の肉体』がベッドに横たわっている。


「先生……主人は……」


「残念ですが……意識が戻る可能性は極めて低いです。いわゆる、植物状態と言わざるを得ません」


「そんな……あぁぁぁっ……あなたぁっ……!!」


ベッドにすがりつき、顔をぐしゃぐしゃにして号泣する祭。


その姿を見て、陽の心(魂?)は激しく乱れた。


(祭! 泣かないでくれ! 俺はここにいる! おい、医者! ふざけんな、俺はまだ生きてるぞ!)


叫んでも、触れようとしても、陽の手は空を切るだけだった。


「悲しい現実ですね、大暮陽さん」


ふと、背後から凛とした、しかしどこか浮世離れした声が響いた。


カアァァァァァッ……!!


病室が眩い光に包まれる。陽が振り返ると、そこには純白のドレスを纏い、後光を放つ絶世の美女――いや、『女神』としか表現しようのない存在が立っていた。


挿絵(By みてみん)



挿絵(By みてみん)



挿絵(By みてみん)



さらにその後ろには、白い翼を生やした派手な出で立ちの上級天使が2人、ヘラヘラと笑いながら控えている。


「な、なんだあんたたちは……!? お迎えってやつか!?」


「いいえ。私は異世界アルカディアを管理する女神。単刀直入に言います。陽さん、私に協力してくれませんか?」


「はぁ!?」


女神は悲しげに目を伏せ、空中に映像を映し出した。


そこには、陽が先ほどまで見ていた『勇者パーティ』の凄惨な敗北の様子が映し出されていた。フタナリの魔王に蹂躙され、魂を吐き出す勇者。


「彼女は勇者クレア。本来ならば魔王アイリーンを打ち倒し、世界に平和をもたらすはずでした。しかし……魔王の想定外の『快楽攻撃』の前に敗北。あろうことか、魂を喰われて消滅してしまったのです」


「魂を、喰われた……?」


「はい。ですが、レベル99に至った彼女の『強靭な肉体』だけは、仲間の聖女の転移魔法によって無事に逃げ延びました。魂という器が空っぽになった無敵のボディ……そこに、今まさに死の淵を彷徨っているあなたの魂を入れることが可能なのです」


「はあ!? いやいやいや、ちょっと待て! 俺は49のおっさんだぞ!? なんで俺がこんな金髪美少女の身体に入らなきゃなんねぇんだよ!」


陽は両手を振って全力で拒否した。しかし、女神は静かに微笑む。


「もしあなたが魔王を討伐してくれたなら……報酬として、あなたの『願いを一つ叶える』と約束しましょう」


「願いを、一つ……」


陽は下を向いた。ベッドで泣き崩れる祭の姿が目に入る。


(……祭の元へ、帰れるのか?)


「俺の身体を治して、元の生活に戻してくれるんだな?」


「ええ。神の権限において、必ず」


陽は強く拳を握りしめた。ボヤいてばかりの人生だったが、祭を残して死ぬことだけは絶対にできない。


「わかった。やってやるよ! その魔王をぶっ飛ばせばいいんだな!」


「おおーっと! ここで大暮選手、まさかの承諾ゥ!」


「よっ! 待ってましたぁ!」


突然、後ろに控えていた2人の上級天使が、パンパンと手を叩きながら前に出てきた。手にはなぜかマイクとカンペを持っている。


「え? な、なんだお前ら」


「いやぁ、助かりますよ陽さん! 実はね、勇者が負けちゃってから、こっちの『視聴率』がダダ下がりでしてね!」


「し、視聴率ぅ!?」


陽は目を剥いた。天使たちはチャラい口調でペラペラと喋り始める。


「そうなんすよ! 天界と魔界で大人気のリアリティ番組があるんですけどね。勇者が無双するだけの展開に視聴者も飽きてたところに、魔王のエロ攻撃で勇者が堕ちるシーンが流れたら、もう視聴率が爆上がりでして!」


「エロシーンの瞬間最高視聴率、過去最高を記録しましたからね!」


「待て待て待て! お前ら、あんな悲惨な光景をテレビ番組みたいに放送してたってのか!?」


「ええ、その名も大人気長寿番組『天界どうでしょう!』」


「なんだそのパクリ番組みたいなタイトルは!! ふざけんなよぉ!」


陽のボヤキを無視して、天使はぐいっと顔を寄せてくる。


「というわけで、中身がおっさんの美少女勇者という新展開で、さらに数字を稼ごうって寸法です! 視聴率が良ければ、特別ボーナスとして最高で『あと二つ』願いを叶えちゃいますよ!」


「あと二つ!? ……ってことは、合計三つの願いが叶うってことか?」


(祭の元に帰るのに一つ。あとの二つで、まとまった貯金を作って、祭とハワイ旅行に……いや、それなら悪くないか?)


「やる! やってやるよ! でも、どんな風に放送されるんだそれ?」


「簡単っすよ! 勇者の周りにプカプカ浮いてる『光の玉が二つ』あるんすけど、それが神界特製の全方位カメラになってまして、常時休み無く、24時間365日映像が送られてくるシステムっす!」


「はあ!? 常時休みなく!? ちょっと待て、風呂とかトイレとか着替えはどうすんだよ!? プライバシーってもんがあるだろうが!!」


「あー、大丈夫大丈夫! そういうのはこっちの優秀なスタッフが『いい感じに編集』するから!」


「一番信用できない言葉だぞそれ! おい、言いたいことは山ほど出来たぞ! やめだやめ! 俺はプライバシーのない生活なんて絶対にごめ――」


「もうダメだよーん。契約成立〜」


女神がにっこりと笑いながら、陽の足元を指差した。


ズボォォォォンッ!!


「うわあああああああああああっ!?」


突然、足元の空間に巨大な穴が開き、陽はブラックホールのような真っ暗な空間へと真っ逆さまに落ちていった。


「送っちゃうから、がんばってね〜!」


女神と天使たちの呑気な声が、遠く上の方から聞こえ、そして意識は途切れた。



* * *



「……んん……っ」


次に意識が浮上した時、陽はふかふかのベッドの上にいた。


どこかの宿屋か、あるいはセーフティゾーンのような場所だろうか。


挿絵(By みてみん)



「ハッ……! 俺は、生きて……?」


ガバッと上半身を起こす。


その瞬間、自分の口から出た声に驚愕した。


「え……? な、なんだこの声……? 鈴を転がすような、可愛い声……」


自分の手を見る。ゴツゴツとしたおっさんの手ではない。白魚のように細く、透き通るように白い、美しい指先。


そして何より、胸元には恐ろしいほどの質量を持った『巨大な二つの膨らみ』が存在感を放っていた。


ポルゥンッ。


少し動くだけで、その豊かな双眸が重力に従って揺れる。


「おおっ!? で、でけぇ! なんだこれ、すげぇぞ!」


陽は無意識に、自らの胸を両手で鷲掴みにした。


ムギュゥッ。


「ひやぁぁぁっ!?」


自分で揉んだだけなのに、背筋を強烈な電流が駆け抜けた。


「な、なんだこの異常な感度は……っ!」


ビクゥッ、ビクゥッ!と、身体が勝手に震え上がる。


その時、脳裏に『俺の記憶ではない記憶』がフラッシュバックした。


『あぁっ! いやっ、魔王、やめっ……ひぎぃぃぃぃぃッ!!』


『あはははっ! 勇者サマ、すごい声! もっと、もっと啼きなさい!』


「ハァッ、ハァッ、ハァッ……!!」


心臓が早鐘のように打つ。身体の芯が、信じられないほど熱い。


勇者クレアの肉体には、魔王アイリーンに徹底的に蹂躙され、限界まで快楽を叩き込まれた『敗北の直後の記憶と感覚』が、生々しく刻み込まれていたのだ。


ただ呼吸をするだけで、下腹部が疼く。シーツが肌に擦れるだけで、脳髄が痺れるような快感が押し寄せてくる。


「くそっ……魔王の攻撃の、後遺症かよ……っ。身体が、熱くて……どうにかなりそうだ……」


陽はベッドの上でもだえ苦しんだ。精神は49歳の既婚男性だが、身体は絶世の美女。そしてその肉体は、感度の限界を突破したまま放置されているのだ。


ふと、部屋の隅に目をやると、ふわりと浮かぶ『二つの光の玉』を見つけた。


(あれが……天使が言ってたカメラか。ってことは、今、天界と魔界にこの姿が放送されてるってことか……?)


普通なら羞恥心で死にたくなる状況だ。


しかし、陽の心に芽生えたのは、謎の『おっさん特有の開き直り』だった。


(へっ……見られていたっていいわ。どうせ俺の身体じゃねぇし! むしろ、こんな特上の美女の身体を好き放題できるなんて、男としての夢じゃねぇか!)


陽はカメラに向かって不敵に笑うと、ベッドの上に仰向けになり、自らの衣服を乱暴にはだけさせた。


「おい、カメラ! しっかり見てみろ! これが視聴率稼ぎのエロシーンだ!!」


陽は自暴自棄になりながら、己の、いや、クレアの身体の、いちばん熱を持ったところへ指を伸ばした。


くちゅっ……。


「あァンッ!?」


指先が触れた瞬間、目の前が真っ白になるほどの快感が脳を直撃した。おっさんの口から出たとは思えない、甘く高い声が部屋に響く。


ちゅく、くちゅ、くちゅくちゅっ……!!


「ひ、ひぃぃっ! なんだこれ、すげぇ、すげぇぇぇっ! ちょっと触っただけで、イクッ、ああっ、もう、イッちゃうぅぅぅッ!!」


ビクビクビクビクゥッ!!!


陽の意志とは無関係に、クレアの身体は凄まじい絶頂を迎え、ベッドの上で弓なりに反り返った。シーツがじっとりと湿り、口の端からはだらしなく涎が垂れる。


「はぁ……はぁ……す、すげぇ……女の身体って……こんなに気持ちいいのか……」


ガクガクと震える太ももを押さえながら、陽は荒い息を吐いた。


その時だ。


パァァァァッ!


部屋の床に描かれていた魔法陣がまばゆい光を放ち、三つの影が転がり込んできた。


「はぁっ、はぁっ……! やった、緊急転移、間に合った……!」


「ぐっ……鎧が重い……だめだ、まだ魔王の媚薬の匂いが鼻の奥に……」


「くそっ、私の莫大な知識が、あんな快楽に負けるなんて……屈辱だわ……っ!」


現れたのは、ライラ、シンディ、ピリカの三人だった。


玉座の間から命からがら逃げ出してきた彼女たちは、一様に息を乱し、顔を紅潮させている。


「クレア! 無事だったのね!」


ライラが、ベッドでだらしなく服をはだけさせている陽(クレア)を見て、泣きそうな顔で抱きついてきた。


「ああ、無事だが……」


陽は低い声(といってもクレアの可愛い声だが、ドスの利いたおっさん口調)で答えた。


「え……?」


ライラが目を丸くする。シンディとピリカも、怪訝な顔で陽を見た。


「クレア? 口調が……それに、なんだか雰囲気が……」


陽は深くため息をつき、ベッドの上であぐらをかいた。


「驚かないで聞いてくれ。俺は勇者クレアじゃない。……俺の名前は大暮陽。異世界の日本ってとこから来た、49歳のしがない高校教師だ」


シーン……。


部屋の中に、重苦しい沈黙が落ちた。


「は……? 49歳の、おっさん……?」


シンディがポカンと口を開ける。


「女神に頼まれてな。魂を抜かれたこの身体に、俺の魂が入れられたんだ。魔王を倒せば元の世界に帰れるらしい」


陽は、これまでの経緯をざっくりと三人に説明した。


魔王に魂を喰われたこと。陽が代わりに選ばれたこと。そして、このふざけたバラエティ番組のカメラが回っていること。


「そんな……クレアの魂が、消滅……」


ライラはショックのあまりその場にへたり込んだ。


だが、数秒後。


三人の目に、明らかな『異様な光』が宿り始めた。


「待って……」


最初に反応したのは、シンディだった。彼女は紫色の瞳をギラギラと輝かせ、陽に詰め寄ってきた。


「中身が、49歳の、人生経験豊富なおじさま……ってこと?」


「あ、ああ、そうだが……」


「最高じゃないの……ッ!!」


ガシィッ!と、シンディが陽の両手を強く握りしめた。


「私、実はおじさまが大好きなの! 渋くて、頼りがいがあって、ちょっと疲れた感じの背中とかもうたまらないわ! 陽さん……私、あなたのこと好きになっちゃいそう……っ!」


「はあああ!? お前、俺の中身はおっさんだぞ!?」


「それがいいのよ!!」


鼻息荒く迫るシンディを押し退けるように、今度はピリカが進み出てきた。


「ふふっ……ふふふふっ! 面白いわ。魂の入れ替わりなんて、私の300年の知識にもない未知の事象よ! ねえ陽、あなたの中身、徹底的に解剖……もとい、研究させてもらうわよ? 知的好奇心が刺激されて、なんだか下半身まで熱くなってきたわ……っ」


「おいおい、ツンデレのエルフが変態発言してんじゃねぇよ!」


「なるほど……そういうことでしたか」


最後に立ち上がったライラは、妖艶な笑みを浮かべて自らの唇を舐めた。


「私はずっと、クレアを愛していました。でも、女同士は気持ち悪いって言われて、思いを封印していたんです。……でも、今のあなたの魂は『男』。ということは……」


ライラは陽の耳元に顔を寄せ、甘い声で囁いた。


「もう、愛し合うのに何の障害も無くなったってことですよね? 愛してます、陽さん……!!」


「ひぃぃっ!?」


陽はドン引きして後ずさった。


(なんだこのパーティ!? レベル99の最強集団じゃなかったのかよ! ただの変態女の集まりじゃねぇか!)


陽のツッコミをよそに、三人の目は完全に肉食獣のそれになっていた。


「陽さん。魔王アイリーンは、強大かつ淫靡な攻撃を仕掛けてきます。今のままのあなたでは、また同じように屈してしまうでしょう」


ライラがもっともらしい顔をして言う。


「だ、だからどうするってんだよ」


「決まっています。魔王の快楽攻撃に耐性をつけるため……私たち三人で、あなたを徹底的に『特訓』します!」


「特訓って……お前ら、目が完全にイッてるぞ!?」


「合気武道や喧嘩が強いそうね? でも、ベッドの上の戦いはどうかしら? 長年の夫婦生活で培ったテクニックとやら、見せてもらうわよ!」


ピリカが杖を放り投げ、陽のベッドに乗り上がってきた。


「さあ陽さん、魔王へのリベンジのために……まずは私たちを満足させてみなさい!」


「ぎゃああああああああっ!! 祭ぃぃぃぃぃっ、助けてくれぇぇぇぇッ!!」


かくして。


天界と魔界で高視聴率を叩き出している『天界どうでしょう!』のカメラの前で、中身がおっさんの美少女勇者と、レベル99の欲求不満パーティによる、打倒魔王のための狂気の「乱交特訓」の幕が上がったのであった。


陽の貞操とプライバシーは、すでに風前の灯火である。

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