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異世界で魔王を倒したら、金髪碧眼の美少女になって日本に帰ってきた件  作者: もも


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若返った妻と、条件付きの公認

八月の上旬。


まだまだ北海道は、厳しい暑さが続いている。


お盆を前にして、朝の強い日差しが小樽の安アパートの薄いカーテンを突き抜けてきた。


「……んっ」


チュンチュンと鳴く雀の声で、大暮ヨウはゆっくりと目を覚ました。


隣には、スヤスヤと穏やかな寝息を立てる愛する妻、祭の姿がある。


ヨウは、ふと自分の下腹部に視線を落とした。


魔法が切れれば、当然のように元の身体へ戻っていた。


昨夜顕現していた立派なアレは消え去り、そこにあるのは絶世の美少女の平坦な股間だけである。


男としての誇りが、朝の光と共に消えてしまったような、妙な喪失感があった。


ヨウは、ほんの少しだけ寂しそうな顔をしてシーツを握る。


「……一晩だけとはいえ、あれはあれで悪くなかったな」


「……いや、俺は何を考えてるんだ」


一人で自嘲し、照れ隠しのように頭を掻く。


その時、隣で寝ていた祭がモゾモゾと動き、ヨウの豊かな胸にギュッと抱きついてきた。


「んんっ……おはよう、陽」


「おう、祭。おはよう。よく寝れたか?」


祭は、ヨウの首筋に顔を埋めながら、甘えるようにすりすりと頬を擦り付けた。


「うん……。ねぇ、旦那様」


「ん?」


「昨日は……気持ちよかったよ。すっごくね。……ありがとう、陽」


祭の顔は、朝の光に照らされてキラキラと輝いていた。


「へへっ、どういたしまして。お前が喜んでくれたなら、何よりだぜ」


ヨウが照れくさそうに笑うと、寝室のドアの隙間から、ひょっこりと赤い頭が覗いた。


『オハヨウゴザイマス、ゴシュジンサマ、オクサマ!』


昨夜一晩中、ドアの隙間から魔法のサポートを続けていた元魔王、アイリーンだ。


祭は、ニコッと笑ってアイリーンを手招きした。


「アイリーン、おはよう。……アイリーンも、陽にあのエッチな魔法かけてくれて、本当にありがとうね」


『!!』


陽が念話で訳してやると、祭から直接お礼を言われたと知ったアイリーンのオッドアイが、カッと見開かれた。


『マ、オクサマから、お礼の言葉……っ! あぁぁっ、もったいないお言葉ですぅぅっ!』


アイリーンは異世界の言葉で歓喜の声を上げ、早口の響きに祭が目を白黒させるのも構わず、犬のようにベッドに飛び乗ると、そのまま祭に勢いよく抱きついた。


『オクサマぁっ! ダイスキ!』


「わっ!? ちょっと、アイリーン!?」


アイリーンは祭の首筋に抱きつき、ペロペロと子犬のように祭の顔を舐め回し始めた。


その手と舌は、昨夜の激しい夜の痕跡が残る祭の身体を、下へ、下へと滑っていく。


「ひゃあっ! こ、こらっ、アイリーン! まだ昨日の気持ちいいのが残ってるの! 舐めたり、おっぱいくっついたりしたら、また気持ち良くなっちゃうから、ダメェっ!」


祭が身をよじるが、アイリーンの舌は止まらない。


「あっ、あんっ! そ、そんなとこ舐めないのっ! 吸っちゃダメぇぇっ!」


ちゅるるっ、ちゅぱっ!


『んくっ……んちゅっ……ぷはぁっ! ご主人様とオクサマの愛の名残、とっても美味しいですぅ! 最高の魔力です!』


アイリーンは、二人の愛の名残を夢中で味わい、恍惚とした表情を浮かべた。


「陽っ、助けて! アイリーンの力、強すぎよぉ……アンっ、アンッ、アンッ!」


祭が、快感に負けて情けない声を上げる。


「おいおいおい……朝っぱらからエッチ過ぎるだろ、お前ら」


ヨウは、半ば呆れながらも、アイリーンの頭を軽くチョップして引き剥がした。


『はひぃっ! ごちそうさまでした! ……オクサマ、綺麗になりましたよ!』


アイリーンが満足げに唇を舐めて離れると、祭はガクッとベッドに崩れ落ちた。


『それにしても……こんな愛に満ちた魔力は初めてです。身体の奥から、魔力がドバドバ溢れてきますぅ!』


アイリーンの身体から、凄まじい魔力のオーラが立ち上る。


「お前……これ以上強くなったら、誰も止められねぇぞ」


「はぁ、はぁ……アイリーンにまで、いかされちゃったよ、もう……」


祭は、涙目で乱れた息を整えながら、自分の身体の匂いを嗅いだ。


「でも、綺麗になったのかな。なんか、良い匂いになってるし……でも、やっぱりシャワー浴びてくるね」


祭はフラフラと立ち上がり、バスルームへと向かっていった。



***



その間、リビングではアイリーンがエプロンを身につけ、キッチンに立っていた。


少しでも祭の役に立ちたい。


そう思ったアイリーンは、祭の調理を見て作り方を一生懸命覚えていたのだ。


彼女はガスコンロを器用に使いこなし、フライパンで目玉焼きとウィンナーを焼き始めた。


チーン!という音と共に、トースターで食パンも温められている。


さらには、キャベツの千切りを器に盛り、冷蔵庫からドレッシングを出して綺麗に並べた。


完璧な日本の朝食セットの完成である。


しかし、その頃には。


「……すぅ……すぅ……」


ヨウは、リビングのソファに横たわったまま、完全に寝落ちしていた。


昨夜一晩中の激しい運動と、全回復魔法による魔力消費のツケが、今になって一気に押し寄せてきたのだ。


「あー、さっぱりした!」


バスルームから、裸のままパタパタと足音を立てて、祭がリビングに出てきた。


「やっぱり若返ってるよ! 肌の張りが全然違うし、白髪も一本もなくなってる!」


祭は、洗面所の鏡で確認してきた自分の身体の劇的な変化に、興奮を隠しきれない様子だった。


「肩も腰も全然痛くないし、身体が羽みたいに軽いよ! 目もすっごくよく見える!」


「歯も白く輝いてるし、鏡見てビックリしたわ。……陽、本当にありがとうね。……って、あれ。寝てる」


祭が振り返ると、ヨウはソファでスヤスヤと無防備な寝顔を晒していた。


『オクサマ、キレイ、キレイ!』


「ふふっ、ありがとうアイリーン。……朝食も作ってくれたの? ありがとうね。食べよう」と、祭はちゃぶ台を指さして、箸で食べるしぐさをしてみせた。


『はい! ……ご主人様は?』


異世界の言葉に一瞬首をかしげた祭だったが、ソファを指さす手を見て察したらしい。唇に人差し指を当てて、「疲れてるみたいだから、寝かせておいてあげよう」と囁いた。


祭は、テーブルに並んだ完璧な朝食を見て、呆れたようにクスッと笑った。


「……アイリーン、本当に元魔王なんだよね?」


祭が人差し指で頭に角を作ってみせると、アイリーンはエプロン姿でビシッと胸を張った。


『はい! 今は家庭魔王です!』


異世界の言葉の意味は分からなくても、その誇らしげな顔つきだけで十分だった。祭は堪えきれずに吹き出した。


二人はちゃぶ台を挟んで向かい合い、朝食を食べ始めた。


「ん、目玉焼き、ちょうどいい半熟だね。美味しいよ」と、祭は親指を立ててみせた。


『やったぁ! オクサマに、褒められました!』


アイリーンは、異世界の言葉ではしゃぎながら、尻尾を振る犬のように大喜びしている。


祭は、トーストをかじりながら、目の前で嬉しそうにしているアイリーンを静かに観察した。


怒るつもりはない。でも、妻として確認しておきたい。


祭はふと真面目な顔になって、アイリーンを見つめた。


「ねぇ、アイリーン」


『ハイ?』


「アイリーンは……陽と、エッチしてるの?」と訊きながら、祭はソファで眠る陽とアイリーンを順番に指さし、両手の人差し指をそっとくっつけてみせた。


そのしぐさで質問の意味を察したアイリーンは、ビクッと肩を震わせ、オッドアイを泳がせた。


『い、いえ……こっち(地球)にきてからは、昼間に一回だけですぅ……。ごめんなさい、オクサマ……』


異世界の言葉でそう言いながら、アイリーンは人差し指を一本だけ立て、申し訳なさそうに頭を下げる。


本妻である祭に、隠れて夫と関係を持ったことを怒られると思ったのだ。


しかし。


立てられた指一本と、しょんぼりした顔。言葉は分からなくても、だいたいの事情は伝わった。祭は少しだけ腕を組んで悩んだ後、ポンと手を打って言った。


「ううん、怒ってないよ。……アイリーンは、陽とエッチしてもいいよ」と、祭は笑って首を横に振り、もう一度陽とアイリーンを指さして、指で丸を作ってみせた。


『……エッ!?』


「その代わり! 私と陽がエッチする時は、絶対にさっきの『男根ができる魔法』を使いなさい。……いい?!」と、祭は自分と陽を交互に指さし、昨夜のアイリーンを真似て指をパチンと鳴らしてみせた。


『は、はいぃぃっ!!! 喜んでお引き受けいたしますぅぅっ!!!』


指を鳴らすしぐさで、全部伝わったらしい。異世界の言葉で叫ぶと、アイリーンは、感動のあまり土下座の姿勢でバンザイをした。


祭は、そんなアイリーンの姿をじっと見つめる。


本来なら、夫と関係を持つ女など、鉄のフライパンでフルスイングする対象である。


しかし、この元魔王の大型犬のような素直さと、自分たちに対する真っ直ぐな愛情を見ていると、どうしても憎めなかった。


それに、アイリーンがヨウだけではなく、自分のことまで大切にしてくれているのが分かっていた。


「……何でだろう。アイリーンってなんか可愛いね」


(アイリーンは、戸籍上は私の義理の妹だもんね。300歳の元魔王の妹ね〜、しかも旦那とエッチしているし……デカいし(180センチ)メチャクチャだわ。カオスね。でも。)


祭は立ち上がり、アイリーンのうねるような真紅の髪を優しく撫でて、ギュッと抱きしめた。


挿絵(By みてみん)



「可愛い……」


小声で呟いた祭の言葉の意味は分からなくても、抱きしめる腕の温かさは伝わる。アイリーンは嬉しそうに目を細めた。


「陽が帰ってきてくれた。大きなペットも連れてきたけど、それも含めて……幸せよ」


『ワタシは、ご主人様とオクサマの愛玩動物(ペット)です!』


『私はオクサマ大好きです。ダイダイ大好き。お役に立って、ご主人様とオクサマがずっと幸せであるように、一生精一杯尽くします!』


異世界の言葉で次々に誓いを並べる元魔王に、祭はきょとんと目を瞬かせた。それでも、ペット扱いされて喜んでいることだけは、顔を見れば分かる。


祭は、意味の分からないその誓いの、健気な響きに、心からの笑顔を向けた。


「そんなに好かれるような事をした覚えはないんだけどね。……でも、私もアイリーンのこと、大好きだよ」


祭は、テキパキと服を着替えて、玄関へと向かう。


「さてと! バイト行ってくるわ!」


靴を履き終えた祭は、ふとその場で軽くジャンプしてみた。


ぴょんっ。


「あれ? やっぱり身体がすっごく軽い……!」


階段を駆け下りても、全く息切れしそうにない。


若返った身体の軽さに、祭はウキウキとした気分で扉を開けた。


『オクサマ、イッテラッシャイマセ!』


アイリーンが、元気よく手を振って見送る。


「うん、行ってきます!」


厳しい暑さが待つ外の世界へ、祭は軽やかな足取りで飛び出していった。


静かになったアパートのリビングには、スヤスヤと眠るヨウの寝息と、後片付けをするアイリーンの鼻歌だけが、平和に響いていた。

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