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業務連絡です

王城・玉座の間。


「コンラッド王太子殿下、ご入場。」


重厚な扉が開く。


呼び出されたコンラッドは、一歩足を踏み入れた瞬間、その場の空気に息を呑んだ。


玉座には国王ジョン7世と王妃ヴィクトワール。


その左右には第一王女ヴィクトリアを始めとする王子王女たち。


さらに宰相、侍従長、女官長、各省大臣。


そして、アレクサンダー公爵夫妻とゾフィー。


おまけに……。


「ベアトリーチェ……?」


ヨーク侯爵夫妻と、その娘ベアトリーチェまで並んでいた。


誰1人として笑っていない。


「父上……これは。」


ジョン7世は静かに口を開いた。


「まずは結論だけ伝える。」


その一言だけで、玉座の間の空気がさらに張り詰めた。


「ゾフィー・アレクサンダー公爵令嬢との婚約を、本日付で正式に解消する。」


コンラッドは目を見開く。


「それから。」


国王は続けた。


「お前の王太子位を剥奪する。」


沈黙。


「王位継承権も剥奪する。」


誰一人、声を上げない。


「空席となる王太子位には、第一王女ヴィクトリアを立てる。」


ヴィクトリアが静かに一歩前へ出た。


「謹んでお受けいたします。」


背筋を真っ直ぐに伸ばし、国王へ一礼する。


「未来の王国の母として、民たちを……。」


一度言葉を区切る。


「いいえ。」


静かに微笑んだ。


「我が子たちを守れるように、己の責務を全うすることを誓います。」


国王は満足そうに頷いた。


「頼んだぞ。」


「はい。」


「あの、父上。」


コンラッドは小さく挙手をする。


「む?なんだ?」


「王太子位を第一王女のヴィクトリアへ譲られること……聞きたいことは山ほどありますが、一先ず、それは置いておきまして。」


一度、言葉を切る。


「何故、ランスロットではなく、ヴィクトリアなのですか?」


すると、ジョン7世はランスロットへ視線を向けた。


「ランスロットにも打診したのだがな〜。」


「!!」


コンラッドは大きく目を見開く。


「研究の時間が無くなるから嫌だ、と言われてしまった。」


天文学オタクの弟らしいといえば、弟らしいが……。

ヴィクトワール王妃は、ゆらりと扇子を揺らす。


「誰に似たのかしらね〜。」


「さあ?」


ヴィクトワール王妃はジョン7世をじっと見つめる。


「王子教育の一環だと言って、5歳だったランスロットを夜中に叩き起こし、『夏の大三角だ!流星群だ!感性が育つぞ!』と連れ回したのは、どこの誰だったかしら?」


ジョン7世は目を逸らした。


「……余だ。」


咳払いをして、コンラッドへと視線を戻す。


「コンラッド。」


「……はい。」


「本日より、お前には北方王領・ミシャ公爵位を授ける。」


「え……。」


「そこで過ごすが良い。」


コンラッドは思わず一歩前へ出た。


「お、お待ちください!」


誰も止めない。


「何故ですか!?父上!」


ジョン7世は首を傾げた。


「何故?」


「私は……!」


「ゾフィー嬢との婚約は不本意だったのであろう?」


「……。」


「自由を望んでいた。」


「……。」


「王太子としての責務より、自分の感情を優先した。」


「……。」


「だから、あのような発言をしたのであろう?」


何一つ、何も言い返せない。


ヴィクトワール王妃が静かに口を開いた。


「全て……貴方自身の行いの結果よ。」


母の冷たい声に、コンラッドは肩を震わせる。


「王太子とは、この国の父となる者。」


王妃は淡々と言葉を続けた。


「その立場を理解していない者へ、国を託せるわけがないでしょう。」


コンラッドは俯き、そしてゾフィーに頭を下げた。


「……ゾフィー……いや、アレクサンダー公爵令嬢、すまない。」


「その言葉は。」


ゾフィーが静かに立ち上がる。


「婚約者だった私ではなく、この国へ向けるべきです。」


玉座の間は静まり返り、ジョン7世は軽く頷く。


「では、各部署より報告を。」


宰相が一歩前へ出た。


「近隣諸国へは、既に婚約解消ならびに王太子交代を通達済みにございます。」


法務大臣が続く。


「アレクサンダー公爵家への正式な謝罪、ならびに賠償金・慰謝料につきましては、現在法務局と最終調整中です。」


女官長が一礼する。


「ヴィクトリア殿下の立太子の関連儀式、式典等につきましては準備完了しております。」


外務大臣は疲れ切った表情で前へ出た。


「隣国の王国、公国、帝国より、ヴィクトリア殿下との縁談について問い合わせが殺到しております。」


一拍置いて、深々と頭を下げた。


「外務省、現在パンク寸前でございます。」


ジョン7世は苦笑した。


「ご苦労。」


「有り難き幸せ。」


コンラッドは、ようやく一つの疑問を思い出した。


「……あの、ベアトリーチェは、何故ここに?」


ベアトリーチェはコクコクと頷く。

その隣で、ヨーク侯爵夫妻は死んだ目をしていた。


コンラッドとベアトリーチェの疑問に答えたのは、ジョン7世だった。


「余の勅命だ。」


「え……?」


「お前は今後、公爵として北方へ赴く。」


ジョン7世は淡々と続ける。


「王族として最低限の公務、領地経営、礼法は学び直さねばならぬ。」


コンラッドは嫌な予感しかしなかった。


「ベアトリーチェ嬢には、お前の側仕えを命じた。」


「なっ……!」


ベアトリーチェも目を丸くした。


「へ、陛下!?」


ジョン7世は小さく溜め息を吐く。


「結果として騒動の一端を担うことになった以上、責任から切り離すことはできぬ。」


コンラッドとベアトリーチェは何も言えず、俯くのみ。


ヴィクトワール王妃がゆるりと扇子を揺らしながら、微笑む。


「自分たちの行いが招いた結果よ。しっかりと向き合いなさい。

大丈夫よ……時間はたっっぷりあるから……。」


その瞬間、コンラッドとベアトリーチェは同時に青ざめた。

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