記憶の中
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズは、なんとなく気まずくなり、話題を変えた。なんか、話題……。
「カエデさん、体調は大丈夫?」
スズは昨日のことを聞くと、カエデは、こくりとうなずいた。
「よかった……」
ホッと安堵したスズは、ふとカエデを見つめる。
健康的な自分の肌よりも、少し白い肌。
鼻筋はユキと同じく通っており、鼻先は少しつんと、上を向いている。黒い瞳がうつむき加減のまま、ぼうっと、前を向いている。黒は黒でも、カエデの瞳は墨のような色に、スズには見えた。それは最初、彼女が思った鷹のような目ではなかった。
ぼんやりと電光に照らされた、胸までの美しい黒髪。それは手入れされ、艶々としている。前髪は、分けられていない。長髪の毛先は、ユキのようにくるんと内側に巻いておらず、さらさらと白砂のように、流れるばかりだ。
カエデの印象は、凛と静かな雰囲気だ。だが、スズには、ユキと同じように、どことなく見覚えがあるカエデの顔が、スズの瞳に映る。
カエデは、なぜスズが見つめるのかわからなかったが、スズはカエデの黒い瞳を見る。
「きれいだね。その目」
カエデは、どことなく嬉しそうなスズの言葉を、繰り返し確認をするように返す。
「きれい?」
カエデは、きょとんとしているらしい。
あれ? また変なこと言ったかな? とスズは、一瞬、間の抜けたなんとも言えない表情をしながら、自信がないように言葉を探して答える。
「うん。そうだと思うけど……」
「そう? 考えたことも——」
そこで、カエデの凛とする声が止まった。
彼女自身、記憶の中にある、男女が優しげに微笑んだときと、目の前のスズが一瞬だけ重なり、驚いた。
スズが、慎重に尋ねる。
「どうしたの? 久遠さん?」
カエデは、ゆっくりと、首を横に振った。
「……いえ」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




