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リリムと贖罪  作者: 霧野うみ
第二戦 ステップを合わせて
93/260

宝石のような瞳

 この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。



 スズは、誰かに少し揺さぶられたような気がして、ハッと目を覚ます。背中に寝汗をかいたスズが、ベッドを見上げると、ワイシャツ姿のカエデが座っていた。

「……久遠、さん?」

 両足を左に寄せる格好になっている彼女の黒い瞳は、じっと、こちらを見つめている。

「あなた、泣いてるわ」

「え? あ……ごめん」

 スズは謝りながら目をこするが、彼女は、ふと、カエデの黒い瞳を見つめる。スズは、なぜ自分がカエデの瞳を見ているのかわからずに、理由を探そうとする。あれ? なんで久遠さんのこと、見てるんだろう? そんなつもりなかったのに……。

 カエデが、不思議そうな表情になる。

「なぜ、私を見つめるの?」

「ごめん。そんなつもりなかったんだけど……」

 宝石のような美しいカエデの瞳が、ときおり(またた)きながら、スズをまっすぐ見つめる。

「きれいだ」

 独り言をつぶやいたスズに対して、カエデは、再び、きょとんとする。先ほど、きょとんとしていたカエデの顔が、ますます、わからない、という顔になるが、彼女と親しい人物以外は、ほとんどわからない顔に変わる。

 スズは両手を振りながら、慌てて否定する。

「あ、いや、あの、違うんだ。その——」

「どうして違うの?」

 問答のような、カエデの答えられるような、そうでも無いような質問に、スズは、なんだか気恥ずかしくなり、頬を赤くさせる。

「スズ。あなた、熱でもあるの? 顔が赤いけど」

「えっ? ちょっ——」

 スズが続きを言う前に、カエデは、スズの(ひたい)に自分の手をつける。

「あ、熱ないのね。よかったわ」

 カエデは安堵すると、まぶたを瞬きさせる。まるで、子の心配をする母のように、そして、大人のような()んだ。

「あ、あの? えっと、あの」

 スズは少しの間、ウロウロと目線を斜め下に向けながら、カエデに対する次の言葉を探していたが、彼女の口からは、謝罪の言葉しか出てこなかった。彼女は、謝る癖があるのだ。

「久遠さん。昨日は、ごめん……」

 だが、カエデは、素知らぬ顔だった。

「何が?」

 スズは、しどろもどろにつぶやく。

「その……だから、昨日のことなんだけど……ホントにごめん」

 彼女はベッドの上で、ぺこりと頭をさげる。スズは、人に嫌われたくないという思いが強くなるときがある。今もそうだ。彼女は昨日の醜態(しゅうたい)を、カエデに謝罪したのだ。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


 スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。

 一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。

 一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。

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