宝石のような瞳
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズは、誰かに少し揺さぶられたような気がして、ハッと目を覚ます。背中に寝汗をかいたスズが、ベッドを見上げると、ワイシャツ姿のカエデが座っていた。
「……久遠、さん?」
両足を左に寄せる格好になっている彼女の黒い瞳は、じっと、こちらを見つめている。
「あなた、泣いてるわ」
「え? あ……ごめん」
スズは謝りながら目をこするが、彼女は、ふと、カエデの黒い瞳を見つめる。スズは、なぜ自分がカエデの瞳を見ているのかわからずに、理由を探そうとする。あれ? なんで久遠さんのこと、見てるんだろう? そんなつもりなかったのに……。
カエデが、不思議そうな表情になる。
「なぜ、私を見つめるの?」
「ごめん。そんなつもりなかったんだけど……」
宝石のような美しいカエデの瞳が、ときおり瞬きながら、スズをまっすぐ見つめる。
「きれいだ」
独り言をつぶやいたスズに対して、カエデは、再び、きょとんとする。先ほど、きょとんとしていたカエデの顔が、ますます、わからない、という顔になるが、彼女と親しい人物以外は、ほとんどわからない顔に変わる。
スズは両手を振りながら、慌てて否定する。
「あ、いや、あの、違うんだ。その——」
「どうして違うの?」
問答のような、カエデの答えられるような、そうでも無いような質問に、スズは、なんだか気恥ずかしくなり、頬を赤くさせる。
「スズ。あなた、熱でもあるの? 顔が赤いけど」
「えっ? ちょっ——」
スズが続きを言う前に、カエデは、スズの額に自分の手をつける。
「あ、熱ないのね。よかったわ」
カエデは安堵すると、まぶたを瞬きさせる。まるで、子の心配をする母のように、そして、大人のような笑んだ。
「あ、あの? えっと、あの」
スズは少しの間、ウロウロと目線を斜め下に向けながら、カエデに対する次の言葉を探していたが、彼女の口からは、謝罪の言葉しか出てこなかった。彼女は、謝る癖があるのだ。
「久遠さん。昨日は、ごめん……」
だが、カエデは、素知らぬ顔だった。
「何が?」
スズは、しどろもどろにつぶやく。
「その……だから、昨日のことなんだけど……ホントにごめん」
彼女はベッドの上で、ぺこりと頭をさげる。スズは、人に嫌われたくないという思いが強くなるときがある。今もそうだ。彼女は昨日の醜態を、カエデに謝罪したのだ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




