扉の奥
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
浮かない顔のスズは、ガラリと、脱衣所の扉を開けるが、横開きの扉に手をかけたまま立ち止まる。
「えっ……」
カエデが全裸のまま、その場所に立っていたのだ。
スズは先ほど、カエデが見当たらなかったのは、この脱衣所の扉の奥にいたからだ、と納得したと、同時に体を動かせなくなった。
彼女が、この扉を閉めればいいのは当たり前だ。そうすれば、カエデはタオルで濡れて艶めいている髪を拭くことができるし、スズも、カエデの体の特徴を記憶しなくて済むのだ。
だがしかし、スズはカエデに一声かけてから、扉を閉めるべきなのか、それとも声をかけずに、無言で閉めればよいものか、と今まさに、変な考えごとをしていたからだ。
カエデは、頭をタオルで拭いていたあとなのか、それを首からかけている。そして、無言のまま、タオルから細い手を離す。彼女のふくよかな胸は見えなかったが、彼女の体から伸びる、すらりとした四肢は、自然にだらりとなっている。
カエデはいつものとおり、無表情な顔と、まっすぐな黒い瞳でスズをじっと見つめる。何? という顔で、視線を彼女に向ける。
スズは呆けていたが、すぐに驚き、喉から声を出そうとする。
「ご、ごめん! 私、ホントに、何も見てないからっ‼」
「え、あ——」
カエデは、開き戸に手を伸ばしかけたが、スズは赤面をしながら、自分とカエデを隔てる扉を、慌てて、バタンッと勢いよく閉めた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




