鏡
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
スズは、サクラに、少しうかがうように尋ねた。
「あの、サクラさん。明日って、何時に集合ですか?」
「明日は、ええと……」
サクラは持っていたファイルをパラパラとめくる。
洗面所から蛇口の金属音や続けて、水を流す音が聞こえる。
カエデは洗面台の蛇口を緩めて、早速、歯みがきをしているようだ。
サクラは、ファイルをめくる手をふと止めると、スズとユキの二人を見ながら説明する。カエデも聞いてるはずなので、彼女は時々、洗面台を目で追った。
「七時集合ですね。スズさん、カエデさん、お二人とも時間に遅れないくださいね? 何かあったら、電話をしてください。私、駆けつけますので」
サクラは、電話のところで、と言ったとき、オペレーター服の左ポケットから自分の携帯電話を取り出して二人に見せ、またポケットに携帯電話を戻す。
「多分、道が少し複雑で迷うと思いますが、音源も明日渡します。これから毎日かけてくださいね?」
スズは、はい、と答えた。カエデは歯をみがく手を止めて、返答する。
「わかったわ」
スズは、サクラに挨拶をする。
「わかりました。おやすみなさい、サクラさん」
「はい。おやすみなさい」
サクラが小さく手を振って去って行くと、玄関の自動扉が閉まる。
その途端、部屋は静かになった。
スズに緊張と不安があったのか、急に全身にだるさが襲いかかってきた。靴を脱いでベッドに倒れ込むが、体を起こす。
「くお——」
スズは部屋を見回すが、カエデの姿は、先ほどいた洗面所にもどこにも見当たらなかった。
「あれ? いないのか……」
そのまま、スズは、自身の下に敷かれていた羽毛布団の中に、もぞもぞと潜り込む。それにしても、久遠さんと二人きりって、えーと、何話せばいいのかな? あ、私の名前、なんで知ってたんだろう……?
スズは、羽毛布団から体を起こし、のそのそと洗面所に行くと、蛇口を緩めて水を飲む。
鏡には、不安そうなスズの顔が映る。だが、彼女は、すぐに目線を蛇口に向ける。
それに、あのとき、リリムがいたような気がするけど、どうして、真白さんと同じ白い髪なのかな? 彼女は、ぐるぐると考え事をしていたが、またため息をついた。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




