〝真白ユキ〟
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
5号機のディスプレイから、オペレーターの声が響く。
『セカンド・コネクト異常なし』
『——三十四・一パーセント、誤差は〇・〇三です』
そのあとに、ウーゼがコネクトを接続完了した機械音が、ヒュウウウウンッ、と制動する。
最初、スズの耳に聞こえたのは、オペレーターが報告をする声だった。
『CPO循環器は異常なし。CPO酸素システムの濃度は、七十パーセントを維持』
後方で静かに、フィィィィンと、タービンを回しているCPO循環機の稼働音も聞こえる。
そのあとは、静かな声だった。
「——ズ? スズ?」
続けて、凛とした声も聞こえてくる。
「あなた平気? 大丈夫?」
……あれ? ……久遠さん? 目を瞬きさせたスズが話すと、まだ少しだけ、こぽりと、薄赤い泡が立っていた。
白いものが、スズの目につく。それらは、胸元の細長いリボン、二の腕の膨らんだ袖のデザイン、太ももの辺りを緩慢に揺れるスカートだ。
そんな白いワンピースを着ている人物は、スズの中では、一人しか見当たらない。〝真白ユキ〟だ。
「よかった。平気?」
スズは彼女に問いかけられ、目をぱちくりとさせた。
「な、なんで……ここにいるの? 真白さん? もしかして、幽霊なの?」
先程、0号機が強制停止中だと言う理由で、ユキはそのウーゼに乗れないと話していたはずだ。それに何より、彼女は白いインサートスーツを着用していはずなのに、今の彼女の格好は、白いワンピースだ。
スズの顔は途端に青ざめた。それは、ユキが突然現れただけではなく、スズの両親が亡くなった〝実験〟に現れた少女の格好と、今のユキの格好がまったく同じだからだ。
だが、スズに問われたユキは、緩やかに首を横に振った。
スズが話すと、いくつもの薄赤い小さな泡が彼女の口から吐き出される。
「ああ。違うんだ……」
スズの頬に赤みが戻った。彼女は安堵したのだ。
彼女の顔は無表情だったが、彼女なりに心配をしているように見えた。
「あ、ごめん。真白さん。久遠さんもごめん」
ユキは、ふるふると、首を横に振って否定した。彼女が着ている白いワンピースの胸元も、ふわふわと揺れる。カエデも、ディスプレイ越しのスズを見て、少し安堵する。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




