連絡
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
その中でも、室長の青年は、一人冷静さを保っていた。彼は、彼女の申し出を、言下に退けた。
「むちゃだ」
そして、サクラに再び問う。
「林主任。インサートスーツの麻酔薬は?」
サクラは、彼に顔を向けた。
「投与していません」
だが、その顔は、彼への報告の途中で少し曇った表情になる。
「ですが、投与をすると、パイロットが昏睡する危険性が高まります」
「量を減らして——」
彼はあごに左手を当てた。彼もまた、カエデと同じ左利きなのだ。
本来、このノヴァ日本支部での麻酔薬の投与の意味は、パイロットが危険に陥り、指令室でも行動することができない場合に、投与するものである。
彼は、それは性急すぎると考えたのだ。
「いや、鎮静剤を注入してくれ。麻酔は、カエデが危険域に突入したら投与。頼んだ」
唐突に鳴り響く固定電話を、桜色のジャンパーを羽織る女性がとろうとしたが、青年が代わりにとると、彼は十六歳とは思えない言葉遣いで、よどみなく相手に説明をし始める。
「はい、ノヴァ日本支部・指令室です。私が室長の山田です」
彼は、相手の話を理解したと示すようにうなずく。
「はい、そちらはすでに了承しております。ええ、ですからその件に関しては、現時刻から戦闘指揮形態はわたくしども、ノヴァ日本支部に移行しました」
彼は、横幅が十メートルある、メインディスプレイをちらりと見た。指令室に欠かせない通信連絡用の機器だ。
しかし、それを見ても、こちらの戦況はいまだ劣勢だった。
彼は、電話越しの相手の怒りをなだめにかかる。
「しかし、エンジェル殲滅を遂行せねば、日本国だけではなく、世界中がインフラ等の機能不全に陥ります」
電話の相手は、渋々といった風に、彼に応じた。
彼は、感謝の言葉を述べる。
「ご協力、感謝いたします。概要としては、5号機を起動ののち、エンジェル殲滅を遂行いたします。ええ。では、失礼します」
彼は固定電話を切ったが、その顔は険しい顔のままだった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




