インサートスーツ2
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
ユキが、静かな声で話す。
「私はウーゼには乗るな、って言われているの」
その彼女の横で、カエデは静かに話を聞いている。
無言のままのカエデは、自分から一歩を引くスタイルを今も貫いているのだ。
スズは首をかしげる。
「えっ? どうして? 確かに、ハルトに説明されたけどさ……なんか納得できないよ」
戸惑うスズを彼女が説明をする。彼女のくるんとした毛先は、頬にかかっている。
「私が乗っていた0号機は、まだ強制停止中だから」
スズは、聞き慣れない単語に疑問を持つ。
「強制停止中? その0号機は動かせなかったの?」
「うん。起動実験中に破壊再生したから」
「破壊再生? それって——」
スズはユキを見るが、再び視線をそらす。彼女は頭の奥で嫌なことをまた思い出してしまい、ひとつ浅いため息をついたが、すぐにユキに尋ねた。
「教室で会ったときのけが? 大丈夫なの?」
「それはあなたに会う前だから、もう平気」
今度はカエデが、説明の補足をする。
「彼女のけがは回復してるわ。安心して」
「そうなんだ。よかった」
カエデの影のシルエットが、くるりとスズに背を向ける。
「あ、待って、今行くよ。久遠さん」
カエデの足音が遠ざかって行くと思われたが、突然、彼女は止まった。
「どうしたの?」
カエデが拳を握ると、ギチッと、インサートスーツの衣擦れの小さな音がする。
「いえ。なんでもないわ」
少しかぶりを振ったカエデは、そのまま先を行き、自動扉が、シュコンッと閉まった。
行っちゃった……何か言おうとしてたのかな?
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




