『ウーゼ選抜簡易試験』
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
アオは、消し炭色のインサートスーツを着た手のひらで、青年の肩を軽く叩く。
「それって、適合者がイレギュラーだったってこと? 誰なの? そのヒト」
「さあな。俺は知らない」
ハルトも過去に、それを受けたことはあった。
長野県諏訪市の出身者でも県外の出身者でも、場所に関わらず、テストに見事パスした者は、ウーゼに搭乗できる。逆に、テストでよい結果が現れなかった者は、ウーゼに搭乗しなくてもよい、〝普通の人生〟を謳歌できる。
ハルトも過去に、『ウーゼ選抜簡易試験』を受けた。彼が受けた年齢は、十一のときだった。
しかも、その年は、最悪の年だった。なぜなら、その年の二〇十四年・三月二十四日に、『第二次大災害』が起こったからだ。人類のほぼ全てが死に絶えた日でもある。
ハルトの試験の結果は、反応なしだった。つまり、彼は〝普通の人生〟を謳歌できるのだ。
しかし、数年前にウーゼを点検する際、ハルトが乗り込んでいたコックピットの上部ハッチがいきなり閉まった。
そして、ウーゼは起動した。
ハルトがコックピットの中から、操作を行っても、起動したウーゼは、反応しなかった。
これは、突発的な事故だったと言えるだろう。
しかし、本人は、あまりそのときのことを覚えていないらしい。そのとき、彼を診察した女性医師によれば、脳が何かの拍子に、勝手に記憶を思い出さないように、封印したらしかった。
「もしくは、『ウーゼ選抜簡易試験』を受け、パイロットに選出されたものの、〝適合率が低下した〟とか」
ハルトは言い終えると、焦げ茶色の髪を持つスーツ姿の女性に、灰色の瞳を向けた。
今の発言は、アカネの過去に触れるものだ。
アカネは艶のある茶色の瞳でハルトを見たが、彼を見ただけだった。彼女は、腕組をしながら一同を見回して報告する。
「現在、未確認物体の熱エネルギー反応は、関東近海から依然侵攻中。恐らく、エンジェルよ」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




