適合者
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
「林主任。林主任はいるか?」
彼女は、はい、と首肯する。
『あの、室長? ひとつだけ、うかがっても?』
「いいが……珍しいな」
サクラははつらつとしている性格だが、大人なので、職務と自分のプライベートの分別をわきまえている。
その分、彼女はプライベートでハルトに質問をしまくり、そのたびに、彼から生返事をされるのは日常茶飯事だ。
『本当に、0号機パイロットを出撃させるんですか』
肩までの茶髪を持つ主任は、ハルトに問う。
「ほかに人員がいるとでも思うのか? 一色パイロットはともかく」
「だから、なんで僕を、いちいち目の敵にするのさ?」
ハルトはアオが横から口出しすると、左手の人差し指を立てて口に当てる。
「ちょっと静かにしてろ」
アオはワーキングチェアの上であぐらをかき、唇を尖らせていた。まるで、年相応の少年のように。
「室長が言ったんです」
ハルトは、そんな彼を横目で見る。
「おまえな……」
主任は、スピーカーを通した声で話を続けると、ハルトはメインディスプレイに顔を向ける。
『諸外国では、ウーゼパイロットをいまだ募集しています。なので、海外からでも……』
確かに、日本は現在、四名のパイロットと同数のウーゼを運用しているので戦力的に十分だと、汐波司令は判断している。
しかし、イギリス(ノヴァ本部が存在する)、アメリカ(現在、二名の少年が在籍中)、ドイツ(エミリアとほか二名が在籍)、日本以外の国——特にアフリカ地域では、ウーゼパイロットやノヴァ・アメリカ支部職員の人員を募集しているのは確かだ。
ハルトは、灰色の瞳を細める。
「しかし、適合者が現れるのはまれだ。パイロットがそろうのだけでも、手放しで喜べるだろう?」
そして、彼は、厚さの薄いひび割れた唇を噛む。疲労のためか、彼の唇は乾燥していた。
「……それに、あの簡易試験では合致しなくても、ウーゼパイロットとして適合していた、という事例も過去にあったらしいな」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




