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リリムと贖罪  作者: 霧野うみ
第二戦 ステップを合わせて
62/260

ハルトとアオ

 この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。



 ハルトの自室の扉越しに、抑揚(よくよう)のない合成音声が響く。フェイトだ。

 一基だけあるコンピュータは、実は、一基の中に三基の能力を持っている。ディケー(正義)・エウノミア(秩序(ちつじょ))・エイレネ(平和)だ。

『総員戦闘態勢。繰り返す。総員戦闘態勢』

 ハルトは、左腕に上着を挟みながら、自室の扉を開ける。

 眼前には、慌ただしく対応しているオペレーターたちが大勢いる。そこは指令室だ。

 彼は横幅十メートルもある巨大なメインディスプレイを見て、すうっと息を少し吸った。それから、彼は、いつもより声を張る。

「ウーゼは?」

 すると、ウーゼ開発研究主任の女性が、スピーカーからよどみなく答える。

『三〇〇秒で、準備が完了します』

 彼女に応えたハルトは、上着を着て、いつもどおり、背もたれが付いているワーキングチェアに座った。

「了解。(はやし)主任」

 暗灰色(あんかいしょく)のオペレーター服の中でも、指令室の二階デッキで目立つ、桜色のジャンパーを羽織(はお)った、紺色のつなぎ服の女性はうなずく。

 しかし、指令室には、読んでいた文庫本を閉じた少年がいる。一色いっしきアオだ。

「あのさ、僕、パスしていい?」

 ハルトは、その彼の言葉に、がくっと肩を落とす。

「あのな、一色パイロット。総員戦闘態勢なんだ。この総員って、全員って意味なんだからな?」

 灰色の瞳が流れるように、黒と赤色の(ひとみ)を見る。

 アオは鋭い声で言う。

「嘘でしょ、それ」

 そのあとの彼は、とぼけるように肩をすくめた。

「そしたら、なんで、彼女は行けないの?」

 そして、急に、アオは思い出したように声を上げ、左手の手のひらに右手の(にぎ)(こぶし)を重ねた。

「そっか。0号機は現在、強制停止中だったんだっけ。あー、そっかそっか」

 プロトタイプ・ウーゼ0号機担当パイロットは、白髪(はくはつ)真白(ましろ)ユキだ。

 ハルトは、アオが座るワーキングチェアの背もたれをもろ手でつかみ、自分の椅子(いす)の近くまでキャスターを移動させる。そして、ハルトは、アオの前に腰を降ろした。

「あまり茶化すな、アオ。今は緊急事態なんだし、それに、俺だっていつまでも、おまえたちをかばっていられないからな?」

「それもそうだね。ありがとう、室長」

 ハルトは、パーソナルコンピュータに灰色の瞳を向けると、つぶやく。

「調子狂うやつ……」

 それに対して、アオは、小さく首をかしげた。

「ん? なんか言った? 室長?」

「別に」

 ハルトはぶっきらぼうに言うと、首を巡らせた。どうやら、誰かを探しているようだ。

 最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


 スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。

 一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。

 一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。

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