非常招集
この物語は、十三歳(中学生)の橘スズちゃんが、パイロットとしての存在を自問しながら、平和維持組織のノヴァ日本支部の室長の青年や、パイロットたちと協力する話です。
しばらくして、授業終わりのチャイムが鳴る。
そういえば、さっき、真白さんに言われたな……、そう思ったスズは、クラスメイトたちからの視線を浴びながらも自分の席から立ち上がり、窓際のユキのところへ少しだけ近寄る。
「あの、真白さん」
ユキはスズが呼びかけると、読んでいた本から目を離す。
「あ、ごめん。読書の邪魔しちゃって」
ダメだったかな?
「平気」
「あの、自己紹介のとき、私、全然気づかなくて。真白さんがいてくれてよかった」
ユキから出た言葉は何か抽象的だった。
「心が暖かい。嬉しい」
だが、補われた言葉により、スズにもなんとなく伝わった気がする。不思議な表情をしたが、うなずく。
「あ、うん。それに、あのとき——」
突然、携帯電話の着信が鳴る。
クラスメイトの何人かは、二人を見つめたが、友だちとの会話にまた戻った。
「携帯? なんだろ……」
スズとユキは、各々の携帯電話を取り出し、メーセージのアプリケーションを開く。送り主はハルトだ。
三分前に、未確認物体の侵攻が確認されたことと、おそらくエンジェルだということで、スズを含めた三人に非常招集がかけられた。
「えっ? 行かないと……」
スズは窓ガラスを見た。その奥には、この地下で一番高い建物があり、それは鈍い銀色に光っている。ノヴァ日本支部だ。それが彼女の黒い瞳に映った。
ユキはすぐに席から立ち上がり、廊下へ出て行った。
「待ってよ、真白さん。あの、私も——」
スズは黒のリュックサックを机の横にあるフックから取る。
教室の外から、都市内に警報アナウンスが流れ始めると、生徒たちは指定シェルターに避難をし始めた。
『現在、警告レベル・レッドの非常事態避難勧告を発令中です。住民の方々は、お近くの指定シェルターまで避難をしてください。繰り返します。現在、警告レベル・レッド——』
スズはユキに追いつくため、廊下を走り始めた。彼女は息も切れ切れに先頭を行く白髪の少女に叫んだ。
「待って、真白さん! 迎え……迎え、来てないって!」
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!
スズちゃんは、みんなのことを知りたいと思いながら、ほかのみんなは、他人にあまり話せない秘密を持っていたりするので、新米のスズちゃんに話すべきなのどうなのか、そこの調整が難しいんです……。
一方、スズちゃんも、他人には話せない過去がありますので、本人も悩んでおります。
一見、優秀な登場人物でも、実はとても悩んでいたり……など、人間関係の難しさを表せられたらいいな、と思っております。




